現代日本のビジネス環境では、繰り返しの業務やデータ処理、情報の管理が日常的に行われています。
このようなルーティンワークを人手で行う場合、時間やリソースの浪費、さらにはヒューマンエラーのリスクもつきまとうこととなります。
そこで注目を集めているソリューションが「RPA」です。
RPAはその名の通り、ソフトウェアロボットを使用して業務プロセスやタスクを自動化するテクノロジーです。
この記事では、RPAの基本的な仕組みから活用ステップ、メリットまでわかりやすく解説していきます。
【わかりやすく解説】RPAとは
RPAとは、ソフトウェアロボットを使用して、ルーティンとなっている業務プロセスやタスクを自動化する技術です。
Robotic Process Automation(ロボティックプロセスオートメーション)を略してRPAと呼びます。
これまで人手で行っていた繰り返しの作業やデータ処理、情報の管理などを、ソフトウェアロボットにより高い精度と効率で自動化することが可能となります。
RPAは特定のルールや手順に従って作業を行うため、人間が事前にルールを設定し、そのルールに基づいてタスクを自動的に実行します。
RPAを導入することで企業の業務プロセスの効率化やコスト最適化、ヒューマンエラーの軽減、生産性の向上などを実現できます。
RPAの仕組み
前述した通り、RPAは人間が事前に設定したルールに基づいて業務を遂行・自動化する仕組みになっています。
具体的には、以下のステップでRPAを活用します。
1. 対象業務の選定
ルーティンとなっている業務プロセスやタスクを洗い出し、自動化の対象となる業務を選びます。
RPAでの自動化に最適な業務については後ほど詳しく紹介します。
2. ワークフローを基にソフトウェアロボットを設計、開発
対象業務のワークフローや条件を設計し、ソフトウェアロボットがその手順を模倣できるようにシナリオを設計します。
RPAは基本的に設定されたシナリオの通りにしか作業を実行できないため、ここでシナリオ設計を間違えてしまうと業務の自動化を実現することができません。
そのため、必ず対象業務の担当者がシナリオ設計を確認することが重要です。
3. RPAテストの実施、検証
意図した通りにロボットが正しく動作するかどうか、またエラーを検知して処理を継続できるかを検証します。
業務に使用するアプリケーションやブラウザ環境とRPAツールとの相性によっては、うまく動作しないこともあります。
検証を繰り返し行い、本導入をするかどうか、またテストした対象業務をRPAで自動化するか否かを検討・判断しましょう。
上記のため、RPAを導入する際は無料トライアル期間があるツールの利用をおすすめします。
4. 運用
テストが完了したら、RPAを本番環境に導入し、運用を開始します。
5. 例外処理
もし予期せぬ状況が発生した場合には、RPAは、処理を中断せずに適切な対応策を取ること、その上で業務を進めることができる仕組みになっていることがほとんどです。
具体的な「予期せぬ状況」には以下のようなことがあります。
- RPAをインストールしたパソコンが故障した
- パソコンの性能が十分でない
- 操作対象となる基幹システム/Webサイトの仕様変更
- ネットワークの遅延 など
6. 監視と管理
上記のような予期せぬ状況に起因するRPAのエラーや実行状況をモニタリングし、必要に応じて修正を行いましょう。
これにより、安定した自動化が維持されます。
特に、インターフェース(画面)を操作することが多いRPAは、SaaSアプリケーションのアップデートの影響を受けやすい傾向にあります。
アプリケーションのアップデートが入る際は、対象業務のプロセスやRPAのシナリオを見直してください。
7. 定期的な更新
プロセスや業務環境の変化に合わせて、シナリオやRPAを最新の状態に保つために更新や最適化を行います。
RPAの種類
RPAツールには、「サーバ型」「デスクトップ型」「クラウド型」の大きくわけて3種類があります。
それぞれロボットが働く場所に違いがあります。
また種類によって作業範囲が異なるため、自動化したい対象業務やRPAツールを導入する際の条件に合わせてツールを選定するようにしてください。
サーバ型RPA
サーバ型RPAとは、自社で用意したサーバ上で動作するRPAです。
社内の複数のパソコン端末を自動化したり、複数部門をまたぐ業務自動化を実現します。
またサーバが社内にあるため、セキュリティリスクを抑えて利用可能です。
デスクトップ型RPA
デスクトップ型RPAとは、その名の通りデスクトップ上で稼働するRPAです。
そのため、パソコンにソフトウェアをインストールすれば直感的な操作で使用可能です。
インターフェースを録画する機能がついているものの場合は、ワークフローをレコーディングすることでシナリオ設定を行うことができます。
非エンジニアでも業務の自動化を実現することができるでしょう。
クラウド型RPA
クラウド型RPAとは、インターネット上のクラウドサービスにログインし、ブラウザ上で作業をするRPAツールのことを指します。
そのためクラウド型RPAが自動化できる範囲は、ブラウザ上での作業のみに限られます。
クラウドサービス以外との連携が難しい点に注意が必要です。
【自動化できる業務例】RPAにできることをわかりやすく紹介
では具体的にはRPAにはどのような業務の自動化が可能なのでしょうか?
実際に何ができるのか、RPAによる自動化が可能な業務と効果をわかりやすく紹介していきます。
RPAに向いている業務の特徴
RPAが得意とする業務の特徴として以下のようなことが挙げられます。
- ワークフローが単純
- 人間の判断を必要としない
- 日次・月次・定時など決まったサイクルで実行される
- 同じ作業を繰り返される
- 多大な時間やリソースを要する
自動化できる業務の具体例
上記、RPAが得意とする業務の特徴を踏まえた上で、実際にRPAで自動化できる業務の具体例を挙げていきます。
競合他社の価格調査
ECサイトを運営する企業にとって、競合他社の価格調査は必須のタスクと言えます。
調査対象となる項目や、チェックしたいサイトをRPAツールに覚えさせることで、日々の市場調査の自動化が可能です。
経費精算業務
経費精算業務もRPAで自動化しやすい業務のひとつです。
例えば交通費を精算する場合、経理担当者は申請者が提出した交通費をインターネット上で検索し運賃や道のりを確認、さらに申請内容と運賃の突き合わせを行った上で、申請された交通費の承認処理を行います。
RPAツールではこの全てのフローの自動化が可能です。
基幹システムへのデータ入力
基幹システムへのデータ入力の多くはフォーマットが決まっており、RPAとの相性が非常に良い業務と言えます。
このようなフォーマットに則って繰り返される業務を人間が長時間続けた場合、集中力が切れ入力ミスが生じやすくなります。
データ入力のような定型業務にRPAを活用することでミスを防ぐことができる他、この単純作業にかかる人的リソースを削減できるというメリットも期待できます。
資料作成
週報や月報など、定期的に発生する資料作成業務もRPAに代行させることができます。
データ集計やその転記にかかる工数を削減できるため、より生産性の高い「人間にしかできない業務」にリソースを割くことが可能になるでしょう。
メール送信
資料作成と同様、例えば請求書や領収書を添付したメール送信も定期的に発生する業務です。
上記の資料作成とメール送信を組み合わせたシナリオを作成すれば、より効率的にタスクを消化することができます。
導入によるメリット
ここまでに紹介してきた通り、RPAは定型業務を自動化できる便利なツールです。
では、RPAを導入することによりどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
ここからはRPAを導入して業務を自動化することによるメリットを、実際の導入事例と合わせて紹介します。
業務処理のスピードアップ
RPAの導入は業務全体のスピードアップに繋がります。
例えば、他行に先駆けてRPAを導入した三菱東京UFJ銀行では、様々なデータベースや記録にアクセスし、証跡を残さなければならないコンプライアンス部門にてRPAを活用。
結果、業務に従事する社員6~7割の仕事の自動化に成功しました。
他の部門も含む約20業務で、既に合計2万時間の作業を自動化させている事例です。
ただし、RPAの速度はソフトウェアの設定や実行環境、処理するタスクの複雑さによって影響を受けることがあります。
ヒューマンエラーの防止
長時間同じ業務を繰り返すと、集中力が切れヒューマンエラーが発生する可能性があり、人手ではその可能性を0にすることは難しいと言えます。
RPAを導入することにより、業務をロボットが遂行するためヒューマンエラーを未然防止できるようになります
例えば従来、顧客情報の管理を手作業で行っていた東京ガスでは、ヒューマンエラーに起因する顧客情報の漏れや誤入力などの問題が発生していました。
そこで、ヒューマンエラー防止のためにRPAを導入し顧客管理を自動化。
結果としてヒューマンエラーが無くなったことはもちろん、顧客情報の精度や顧客満足度の向上に貢献しています。
時間の創出
RPAを導入することにより、従来定型業務に割いていた時間がなくなり、より生産性の高い時間を創出することができます。
国内最大規模の損害保険会社である損害保険ジャパン日本興亜株式会社では、仕事の棚卸を行う過程でRPAによる定型業務の自動化。
100を超える業務の効率化を実現し、45万時間の創出に成功しました。
コストの適正化、削減
RPAで業務を自動化することで、その業務にかかる人的リソースを削減し、結果としてコストも最適化することができます。
サッポロビールでは、POSデータのダウンロード業務をRPAで自動化しました。
年間の事務コストは約1100万削減され、労働時間についても約5700時間の削減に成功しています。
働き方改革、DXの推進
毎日、誰がやらなければならない定型的な作業の多くが現場の負担になっているケースは少なくありません。
現場の負担を減らすため、また従業員のモチベーションアップにもRPAは有効です。
DX推進が遅れている医療の中でも、オンライン予約やオンライン面接、オンライン診療など積極的にDXに取り組む済生会熊本病院では、働き方改革の推進を目指して2020年にRPAを導入しました。
1,829名分の予約入力業務で46時間を削減しています。
記事まとめ:RPAとはロボットによって業務を自動化できるシステム
この記事では、RPAの基本的な仕組みから活用ステップ、メリットまでわかりやすく解説しました。
RPAとは、Robotic Process Automation(ロボティックプロセスオートメーション)の略であり、ソフトウェアロボットを使用して、ルーティンとなっている業務プロセスやタスクを自動化するテクノロジーです。
RPAにはさまざまなメリットがありますが、ツールによって得意分野や可動範囲が異なるため、自社の課題へのアプローチにRPAツールが適しているかを考えた上で導入を検討することが重要です。