RPAとは、「ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation:ソフトウェアロボットによる業務自動化)」を略した言葉。
RPAは、RPAツールと呼ばれるソフトウェアを利用し、パソコン上でのルーチンワーク(繰り返し行う定型的な作業)を自動実行する技術です。
現在、大手企業を中心に日本全体の中小企業や教育機関においても、RPAによる業務自動化が進められています。
そこで、この記事では教育機関、特に大学におけるRPA導入事例を解説。
教育機関におすすめのツールと、RPAを活用した自動化例についてもご紹介します。
RPAの導入をお考えの教育機関さまは、ぜひ参考にしてみてください。
RPAで大学業務の改善が可能!具体的な導入メリットや自動化例
先述の通り、RPAはパソコン上でのルーチンワーク(繰り返し行う定型的な作業)を自動実行する技術。
そのため、パソコンを使う作業であれば、企業のみならず、教育機関における業務の自動化も可能です。
ここでは、大学がRPAを導入するメリットや、RPAで実際に自動化が可能な業務例について解説します。
RPAを導入するメリット
まずは、RPAを導入するメリットについてみていきましょう。
業務量削減
RPAを導入することで、これまで人間が手作業で行っていた作業、特に入力や転機作業を削減することが可能です。
たとえば、PDF形式の発注書の情報を受注管理システムへ入力する転記作業がRPAに置き換わり、自動処理で完結するようになります。
人間は1日約8時間ほどしか稼働することができないのに対し、RPAであれば24時間365日、継続して稼働することが可能です。
そのため、人間の業務量を削減しながら、企業全体の業務量を底上げすることが可能になります。
業務の質向上
人間が手作業で業務を行っていると、どうしても作業ミスが起こってしまいます。
例えば、メール業務では、宛先の入力ミスや未送信、本文の誤字脱字等のミスが考えられます。
そこでRPAを導入することで作業ミスを抑制することが可能です。
RPAは事前に作られたシナリオに忠実に作動するため、シナリオに誤りがない場合、ミスをすることはありません。
また、RPAには人間のミスによる損失を未然に防ぐ安全機能のような役割もあります。
完全に自動化することが不安な場合でも、上記のような機能をうまく使うことでミスを抑制することが可能です。
コアワークへの集中
入力作業などの単純作業に割いていた時間をなくすことで、企画の検討や業務改善など創造的な仕事に注力できます。
RPAを導入することで、事務作業が終わらずに、本来やるべき業務にいつまで経っても着手できない、ということがなくなります。
具体的な活用方法
大学事務が執り行っている業務において、RPAによる自動化が可能な業務例は以下の通りです。
データを集計・登録する
データファイルをいくつか入手した後、それらからデータを抜き出し、社内システムに登録したり、1つのファイルにまとめたりする作業が、大学事務が執り行うようなオフィスワークでは頻繁に発生します。
このような「データをまとめる」「登録する」といった定型作業の多くは、RPAによる自動化が可能です。
もう少し詳しく言うと、「どのデータを抜き出すか」「どう集計するか」「どこに登録するか」といった条件や手順が常に同じであれば、RPAツールに自動実行させることが可能です。
さらに、手間がかかるデータ入力作業をなくすこともできます。
具体的には、RPAツールをOCR(光学文字認識)のソリューションと組み合わせることで、ファクスで届いた発注書や、荷物に同封された納品書などの紙書類をスキャンするだけで記載内容がデジタルデータ化され、このデータをだ大学内システムなどに自動登録できるようになります。
特に大学の生協や成績集計業務において活用可能です。
数値の整合性をチェックする
RPAツールを使うことで、ある数値が正しいかどうか確認する作業を自動化することもできます。
例えば経理業務には、こちらから請求した額と相手から入金された額が一致するか確認し、仕訳帳に反映させる「入金消込」と呼ばれる作業があります。
作業のルールそのものは単純ですが、いくつもの操作画面にまたがって対応するデータを探し出す手間がかかることや、処理件数が多いこと、またミスが許されないことから、担当者にとっては負担の重い仕事となりがちです。
RPAツールを使えば、こうした数値を照合する確認作業が自動化できます。
デジタルレイバーは長時間稼働しても集中力が低下せず、また作業中に抜け・漏れや見間違いといったミスを起こさないので、人間が行うよりも格段に速く・正確な処理が期待できます。
入金消込を含め、特定の用途に特化した自動化システムは多数存在しますが、RPAが特徴的なのは、そうした特定の用途に限らず利用できる点です。
RPAツールでは目的に応じてデジタルレイバーを自由に作成できるので、「納品書の数量合計と検品の数値が一致するか」「前回と今回で異なるデータはどれか」など、さまざまな数値の確認作業を自動実行させることができます。
通知やファイルを送信する
RPAでは、一定の期限ごと、またはある条件を満たしたときに、通知やファイルを自動的に送信することが可能です。
RPAツールを使えば、例えば「書類の提出状況リストをもとに、未提出者に督促メールを自動送信すること」や、「毎日一定の時刻に、ファイルの最新版をコピー・添付したメールを、必要とする全員のメールアドレスに自動送信すること」などができます。
もちろん、RPAツールでできる他のこと、つまりデータをまとめる・登録する・確認するといった機能と組み合わせることも可能です。
例えば「10ファイルから1ファイルにデータを自動集約した後、メール添付で始業前に自動送信する」、あるいは「あるデータ登録作業を自動化し、完了時とエラー発生時に担当者へメール通知する」といった使い方もできます。
大学のRPA導入事例6選
RPAの導入を検討している大学は、実際の事例を見てから決めたいと感じることも多いでしょう。
RPAを導入している大学の導入事例について、6つ紹介します。自身の大学でおこなう業務と比較し、RPAに置き換えられるか参考にしてみてください。
早稲田大学
2032年に創立150周年を迎える早稲田大学では、具体的な数値目標を設定した中長期計画「Waseda Vision 150」を策定し、実行しています。
実現に向け、研究⼒・財務体質の強化と戦略的⼤学経営の実現に向けた改⾰を推進するために、新財務システムを2018年4月から稼働させています。
その一部である、約130カ所で処理していた伝票の集約システムとしてRPAを導入しました。
削減効果に関しては、大きな想定効果を期待できる数値が出ています。
年間で約22万5000件ある 支払伝票の処理業務で、1件あたり数分短縮できると、約30%の削減効果が期待でき、金額換算で年間数千万円の削減につながると期待されています。
参照元:UiPath「創立150周年の長中期計画実現のためにRPA活用の新財務システムで業務効率化以上の効果を発揮」
明治大学
明治大学では、働き方改革への対応として、RPAツール「WinActor®」を使用した業務自動化の有用性について検証しました。
具体的には、オムニバス授業(ある共通のテーマについて本学の教員と学外の講師が登壇する授業)で発生する謝金の支払い業務を対象として、RPAを導入。
- 単純で繰り返しの多い業務であること
- 多くの時間をかけている業務であること
上記の2点を鑑みて、成形したExcelを使用して財務会計システムに伝票起票する作業の自動化を図りました。
従来は、平均すると月100件くらいの伝票起票があり、1件の伝票に5分程度時間をかけていました(データチェック含む)。
5分×100件=500分ですので、1日がかりで登録処理をしていたことになります。
RPAではその作業を45分で完了することができました。
この45分に対しても基本はボタンを押した後は放置しておけば良いので、別の業務対応をしたり新しい取り組みを考えたりなど、時間を有効に使うことができたとのことです。
参照元:株式会社エデュース「WinActor®実証実験事例紹介」
三重大学
三重大学ではもとより、業務運営に関するDX化を推進してきました。
その2ndステージ、3rdステージとしてRPAを用いた業務時間削減を目指しています。
三重大学では、以下の2業務にRPAを導入しています。
- 財務会計システムでの支払伝票作成業務
- 賃金システムへの住所等登録業務
従来の支払伝票作成の業務フローは以下の通り。
- 支出契約決議書作成(入力)
- 支出契約決議書出力(印刷)
- 支出契約決議書確定
- 債務計上票作成(入力)
- 債務計上票出力(印刷・決裁)
RPAを導入することによって2~5の作業を全て自動化することが可能になりました。
令和2年度、財務会計システムでの支払伝票作成業務については、RPAを活用した伝票が約23,000件であり、約1,150時間もの業務時間削減に成功しています。
参照元:三重大学RPA推進室「RPAをはじめとする業務運営DX~三重大モデル~」
立命館大学
立命館大学では、ERP導入を機に仕事の中身や業務フローを見直したところ、以下のような課題が挙げられました。
- 職員の業務を、経営に有効な情報の抽出や分析などの「創造的な業務」に集中させたい
- 各種手続き中に、「スクロールダウン」や「点検印押印」など、定型でありながら手間のかかる作業が多い
支払手続きにおいて承認が終わったものに点検印を押すという業務。
従来、この業務プロセスにおいて、週1回の業務につき「画面を確認してクリック」という作業を約3,000回繰り返していたため、年間で25万件をこなしていたことになります。
また、毎週1回・4時間かかるERP上のデータ調整作業もネックになっていました。
RPAの導入で大量の作業を自動化し、定型業務にかかる心理的な負担の軽減効果を得られたといいます。
参照元:先端教育オンライン「立命館大学 財務経理の業務をRPAで自動化、全学的なDXの足掛かりに」
岡山大学
岡山大学では、プリントポイントを付与する業務をRPAで自動化しています。
従来、ポイントは学内に複数ある教育用プリンタでの印刷に必要で、業務はポイントの購入情報に基づき処理していました。
以下は、導入前に実施されていたプリント付与の業務フローです。
- 生協窓口で学生がプリントポイントを購入
- 情報統括センターが販売情報に基づいてポイントを付与
- プリントシステムから学生へメールで付与状況を通知
ポイント付与業務をRPAで自動化するために、業務フローの見直しからスタートしました。
整理したフローをもとに、データベースやルーチン、エラー処理を設計します。
設計完了後は実際のツール開発に取り掛かり、試行錯誤を繰り返した末に運用開始に至りました。
RPAの導入により、年間7500分(125時間)の労働時間削減を実現しています。
定型作業に費やしていた時間を大幅に削減することによって、定型作業に疲弊していた大学職員の労働環境を改善したという点で大きな成功を収めた事例といえるでしょう。
参照元:岡山大学 情報統括センター「RPAによるプリントポイント付与業務の自動化」
琉球大学
琉球大学では、大学業務の高度化・複雑化により業務量が増大する中、単純業務を効率化し、企画立案等のより高度な業務にシフトする必要があるとの問題意識の下、「RPA等を活用した業務改善プロジェクト」として、本学事務組織においてRPA導入に向けた実証実験を行いました。
実験では、以下の3業務の自動化に成功しています。
- 支払い承認書の印刷
- 学生証の再発行回数データの更新
- 採用申請書の内容を人事給与システムに転記
実験の結果、対象3業務だけでも、RPAの本格導入により年264時間の業務が削減される可能性があることがわかりました。
また、「業務が標準化される」「業務の正確性が向上する」「業務内容が高度化される」といった定性的な効果もあることが期待されています。
参照元:琉球大学「琉球大学におけるRPA導入に向けた取組みについて」
教育機関におすすめのツール3選
ここでは、教育機関におすすめのツール3選をご紹介します。
マクロマン
「マクロマン」とは、コク―株式会社が運営するRPAツール。
期間や利用人数に制限なく利用できるため、一般企業だけでなく地方自治体、医療機関、学校、士業、そのほか各種団体、個人事業主など幅広く導入されており、ダウンロード数は既に5,500件を突破しています。
マクロマンは、完全無料で利用できる点が魅力のサービスです。
無料でありながらもすべての機能を制限なしに使うことができるのが嬉しいポイント。
そのため、「RPAの使用感を体感したい」「RPAの導入効果について把握したい」などとお考えの企業さまにおすすめです。
ただし、無料サービスであるが故に、サポートサービスはなく、導入や利用に際してサポートが受けたい場合は、有料のサポートプランを契約する必要があります。
WinActor
「WinActor(ウィンアクター)」とは、NTTアドバンステクノロジ株式会社によって提供されている、国内シェアNo.1のRPAツールです。
国内の6,500社以上の企業で導入されています。
NTTグループの技術とノウハウが詰まったソフトウェア型ロボットで、Windows上のあらゆるアプリケーションを操作可能です。
また個別の業務システムを利用した業務をシナリオ(ワークフロー)として学習し、ユーザのPC業務を自動化します。
連携可能なシステムやアプリケーションが幅広いことの他にも、下記のような特徴があります。
- シナリオ作成方法が簡単で、操作機能が充実している
- セミナーや勉強会などのサポートを活用し、RPAの最新情報が無料で取得できる
ここまでの機能とサポートサービスの重要さは、国内製品かつ人気ツールならではのものです。
ユーザーが多く、情報が多いのも、初めてRPAを導入する方には嬉しいポイントでしょう。
ただし、先程ご紹介したマクロマンとは違い、WinActorを導入するには、ライセンスを購入する必要があります。
このライセンスはPRAを導入するPC1台ごとの契約となっており、1ライセンスで複数台の使用はできません。
そのため、多くのPCにWinActorを導入する場合はライセンス費用が高額になるため注意が必要です。
MICHIRU RPA
はじめてのRPA導入をお考えの方におすすめしたいのが、「MICHIRU RPA」です。
MICHIRU RPAは業界最安値でありながら、そのパワフルな使用感で、中小企業から絶大な支持を得ています。
MICHIRU RPAの具体的な特徴は以下の通り。
デスクトップ型RPAとして業界最安値!月額5万円~使用可能
価格としては、デスクトップ型RPAのコスト相場は約12万円~であるのに対し、MICHIRU RPAはわずか月額5万円で利用することが可能です。
シナリオ作成は簡単3ステップ!プログラミングの知識がなくても安心
MICHIRU RPAは以下の3ステップで簡単にシナリオ作成が可能。
- 操作対象の画面を収録
- リストから操作を選択
- 操作位置を設定
エンジニアがいない現場やRPAの操作が初めての方でも簡単に使いこなすことが可能です。
RPAの導入が初めてでも安心!充実したカスタマーサポート
MICHIRU RPAは、導入後も安心してご利用いただくため、安心の伴走型サポートをご用意しています。
- 自動化の可否やシナリオ作成のアドバイス
- お客さま自身がシナリオを作成できるよう、オンライン操作勉強会を開催
- メールやチャットで丁寧に担当者がサポート
国産ならではのきめ細かいサービスを受けることができる点も、中小企業がRPAツールをオペレーションするにあたって魅力的なポイントです。
初めてのRPAの導入をご検討中の方は、まずはMICHIRUまでご相談ください。
記事まとめ
この記事では教育機関、特に大学におけるRPA導入事例を解説。
教育機関におすすめのツールと、RPAを活用した自動化例についてもご紹介しました。
大学の本来の運営目的は教育支援であるのに対し、データ収集や登録、送信業務に時間がとられて本来の教育支援が疎かになってしまっている場合も少なくありません。
特に、大学事務における定型業務はRPAによる自動化が可能です。
大学のように多くの人やモノ、情報が出入りする現場では、RPAの特性がより強く活かせるでしょう。
RPAの導入をご検討中の方は、ぜひこの記事内でご紹介した事例を参考にして、業務フローの見直しから始めてみてはいかがでしょうか?