RPAは自治体でどのように活用されている?導入メリットや具体例を紹介

RPA導入の近道になる!成功事例や活用の具体例を紹介

RPAは自治体でどのように活用されている?導入メリットや具体例を紹介

近年、自治体の業務はますます多様かつ複雑になり、その対応に追われる中で労働力不足も深刻な問題となっています。

総務省が平成29年10月から開催した「自治体戦略2040構想研究会」では、労働力が不足する中で、「自治体のあり方は、人口縮減時代のパラダイムへ転換しなければならない」と問題提起しています。

このような課題を解決するため、多くの自治体でRPA(Robotic Process Automation)の導入が進んでいます。

RPAの導入により、業務プロセスの改善や時間短縮、ヒューマンエラーの削減が実現され、業務効率を向上させている自治体が多くあるのです。

この記事では、自治体におけるRPAの導入メリットや活用方法の具体例について紹介していきます。

総務省が公開している「自治体におけるRPA導入ガイドマップ」をベースに、わかりやすく解説していきますので、RPAの導入をご検討中の自治体の方はぜひ参考にしてみてください。

参考:総務省 – 自治体におけるRPA導入ガイドマップ

目次

自治体がRPAツールを導入することによるメリットを解説

自治体がRPAツールを導入することによるメリットを解説

私たちが暮らすこの日本では、少子化が凄まじく進んでおり、2008年をピークに総人口が減縮傾向にあります。

15歳から64歳の生産年齢人口は45年前を下回る水準となっており、今後はますます減少していくことが予想されているのです。

そのような中、社会経済では、労働力の供給不足が深刻な問題となっています。

自治体でも総職員数の減少による業務遂行の難しさは大きな課題です。

近年、多くの自治体においては、人口減少や都市部への人口流出、それに伴う地域経済の低迷などを原因として税収が落ち込んでいます。

一方、高齢化による介護や医療など高まる福祉ニーズへの対応や、社会インフラの維持などが自治体に求められています。

労働力が不足していき、市民のニーズが多様化していく自治体では、労働力を民間に委ねるだけでなく、RPAなどの革新的技術を積極的に活用することが求められているのです。

【広島県広島市】RPAによる業務プロセスの改善

【広島県広島市】RPAによる業務プロセスの改善

総務省では、平成30年度から毎年「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」を実施し、結果を公表しています。

令和4年度調査によると、RPAを導入している自治体は、都道府県及び指定都市で100%です。

具体例として広島県広島市では、少子高齢化などの社会情勢の変化に伴い、市民の方へ提供する行政サービスが拡大していました。

その結果、業務に携わる職員が事務処理などの定型的な業務に多くの時間を取られてしまい、企画・立案などの業務に注力できていないという課題がありました。

この課題の解決を目指し、本庁および南区役所にて定型的な業務に対して部分的にRPAやOCRの導入および運用を開始。

RPAは主に、市民の方から提出された申請書の情報を業務システム等へ入力する業務を代行しています。

そのうちの1つが「介護保険高額介護サービス費等支給申請書の情報登録業務」です。

広島市では従来、職員が目で申請書を確認し、手動でシステムへ入力していました。

効果

これについて、OCRで申請書を電子データ化したものを職員が確認した後、RPAがシステムへ自動入力することで作業時間が短縮され、効率化や業務プロセスの改善につながりました。

さらに、間違いがないよう細心の注意を払って入力していた作業が減ることにより、職員の精神的・身体的な負担の軽減効果もあります。

今後、業務プロセスが改善されたことによって創出された時間を、新たな市民サービスの提供やサービスの向上に充てることができると期待しています。

参考:広島市様の窓口業務の効率化をRPA(エネロボ)とOCRにより実現|株式会社エネルギア・コミュニケーションズのプレスリリース

【兵庫県伊丹市】RPA導入による時間の短縮とヒューマンエラーの削減

【兵庫県伊丹市】RPA導入による時間の短縮とヒューマンエラーの削減

作業時間の短縮とヒューマンエラーの削減に成功した具体例としては、兵庫県伊丹市の事例が代表的です。

伊丹市では、全庁的な体制を整えてRPA導入を進めています。

自治体にはさまざまな業務がありますが、中でも単純なシステム入力を繰り返す作業は業務量が多いうえ、時期による変動も激しいものです。

繁忙期には職員の長時間労働が前提とならざるを得ない状況でした。

また入力にミスがあった場合は、その対応のためにさらに多くの作業時間が必要となることから、正確性も求められます。

以前から超過勤務の多さを問題視し、改善策を検討していた市民税課は、平成30年度に先進自治体で行われた市税業務におけるRPAの実証実験の報告書を受け、伊丹市でも活用できるのではないかと考え、RPAを導入。

対象業務は、先進自治体の事例を参考に、特別徴収異動届の入力や公用照会による課税証明書の発行などの業務としました。

効果

結果として、個人住民税、固定資産税、収滞納管理の計21業務で年間830時間の削減(削減率71%)に成功。

上記のうち個人住民税は10業務で、年間514時間の削減効果(削減率64.5%)が出ています。

また基幹系システムの更新権限を持たない職員でも必要に応じて入力用のデータを作成できるため、業務負荷の分散が可能となったことはもちろん、入力ミスの削減により職員の心理的負担を軽減することができました。

その他、自治体にもたらされる定性的効果

その他、自治体にもたらされる定性的効果

定性的効果とは、問題を解決することによって得られる数値で表すことのできない効果のことです。

上記では、RPAの導入によるメリットの具体例として、業務プロセスの改善や時間短縮、ヒューマンエラーの削減を上げました。

これ以外にも、職員の精神的負担が軽減されたり、住民から行政サービス向上に対する好評価を受けたりといった、RPA導入による以下のような定性的効果を多くの自治体が感じています。

  • 繰返される作業やミスの許されない作業の削減(精神的負担の軽減)
  • 特定の職員に集中していた業務負荷の分散
  • 超過勤務時間の削減などによるワークライフバランスの向上
  • 入力ミスの軽減、正確性の向上
  • 業務プロセスの可視化・合理化
  • 庁内の業務改革の意識醸成
  • 人間にしかできないコア業務へのシフト
  • 業務の見直しやコア業務へのシフトによる住民サービスの向上

上記の通り、RPAの導入は自治体にさまざまなメリットをもたらしているのです。

業務自動化の具体例

業務自動化の具体例

では、RPAを導入している自治体は、どのような業務を自動化対象としているのでしょうか。

またRPAの効果を得やすい分野とはどのようなものなのでしょう。

以下は、「自治体におけるRPA導入ガイドマップ」に記載されている、実際にRPAが導入された分野および業務の一部です。

令和元年度RPA導入業務

導入分野 導入業務
住民情報 住民基本台帳 ・個人番号カード交付管理
・ご遺族手続支援コーナー資料作成業務
地方税 個人住民税 ・当初課税準備:住民税申告書の入力、所得税確定申告書の入力、給与支払報告書の入力、法定調書の入力
・当初課税:エラー解消業務
・更正:年金資料の入力、給与所得者異動届出書の入力、退職所得分納入、申告書の入力、納税通知書の作成
・照会:公用照会による課税証明書の発行
法人住民税 ・基本情報登録:法人設立届出書の入力
・申告書受付:法人住民税申告書の入力、電子申告データの取込み
・更正・決定:法人税額更正データとの照合
固定資産税 ・課税客体把握:償却資産申告書の入力、登記異動情報の入力
・評価:評価情報の入力
・更正:納税通知書の作成
健康・医療 国民健康保険 ・資格管理:国民健康保険異動届の入力、資格証明書情報の管理
・賦課管理:簡易申告書の入力、転入者の所得情報の入力
・給付管理:レセプト点検結果の入力、高額療養費申請書の入力、限度額 適用認定証の年度更新
・統計・報告:月報の作成
福祉 国民年金 ・資格管理:第1号・第3号被保険者資格喪失者一覧表の入力
・免除管理:免除申請書の入力
生活保護 ・生活保護申請書の入力
・医療要否意見書の対象管理
・訪問実績の管理
・保護費支給額の確認
子育て 児童手当、児童扶養手当 ・認定:手当認定請求書の入力、所得情報の入力
・額改定:手当額改定届の入力
・現況届:手当現況届の入力
財政・会計・財務 財務会計 ・予算編成:査定結果の入力、整合性確認
・予算管理:配当、収支計画の作成、執行状況の集計・確認
・歳出管理:契約管理、市場価格調査、債権者登録、支出帳票の作成
・歳入管理:収入調定書の作成、納入通知書の作成、還付命令書の作成
・公会計システムへの入力
・監査調書の作成
組織・職員 庶務事務 ・勤怠管理:時間外勤務時間の集約・集計、休暇取得日数の集約・集計、正規職員以外の勤務実績集約・集計
・各種手当申請:旅費の申請、通勤手当の申請
・照会・配布:給与明細の作成
・福利厚生管理:健診結果の入力
人事給与 ・人事:人事評価シートのとりまとめ、発令通知等の作成
・給与:給与計算、社会保険料の支払い、戻入処理
文書管理 ・メール送付文書の収受登録

上記の通り、住民情報系の業務から内部事務系の作業まで、RPAは自治体で幅広く活用されています。

ただし、これらは先進自治体で実際にRPAが導入された業務の一部であり、あなたの自治体でも同じ効果が得られるとは限りません。

同じ業務であっても、その内容が自治体によって異なる場合もあります。

そのため、どの作業がRPAでの自動化向いているのか、RPAでの自動化対象としたい業務が人間の判断を必要としない単純なものなのか、必ず確認することが重要です。

失敗を避けるためには、RPAができることとできないことをしっかりと理解し、RPAに適した作業を絞り込んでスモールスタートすることがおすすめです。

記事まとめ

記事まとめ

この記事では、自治体におけるRPAの導入メリットや活用方法の具体例について紹介しました。

自治体のRPA導入事例は数多く公表されています。

それらの成功事例や、今回紹介した具体例をもとに対象業務を選ぶことは、RPA導入の近道になるでしょう。

しかし、RPAはどんな作業でも自動化できるわけではありません。

また他の自治体で大きな効果が出ていても、あなたの自治体で同じ効果を得られるとは限らないのです。

対象としたい業務のプロセスを見直し、RPAができることとできないことを踏まえたうえでRPAを活用すれば、自治体業務全体の生産性向上とより良いサービス提供が実現できるはずです。

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