成長分野への人員再配置を目指す中期経営計画の一環として、働き方改革、生産性向上を目的にRPAを導入した第一生命。
第一生命では、2016年からRPAによる自動化に着手し、2021年末までの5年間で累計1010業務37万時間の自動化に成功しました。
この記事では、第一生命のRPAによる自動化成功例について、導入業務や実際に導入したRPA製品、自動化成功のポイント等を解説。
数々の事例から見る、RPAによる自動化成功のポイントについてもご紹介しています。
RPAの導入をご検討中の方や、RPAによる自動化の効果について伸び悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
RPAで累計13万2000時間の効率化を達成!第一生命の自動化例を紹介
第一生命では、2016年10月から、デロイトトーマツコンサルティング合同会社、アクセンチュア株式会社と共同でRPAの実証試験、社内システムへの適用、導入できる業務の分析などを実施し、個人保険事務の約20種類の業務で順次トライアル稼働を進めていました。
2017年10月からは保険関係事務に加え、マーケティング、総務・会計、資産運用にかかわる事務など、全社の様々な業務にRPA活用を広げ、生産性向上、働き方改革を推進しています。
RPAを活用している部門・業務例
第一生命では、実際に以下のような業務において、RPAを導入しています。
- 支払査定関連業務(事務アンダーライティング分野)
- 企業評価/モニタリングに関する資料作成業務(資産運用分野)
- 業績等、内部管理資料作成業務(各分野)
実際に導入したRPA製品
第一生命では、グローバルで数多く採用され、高い評価を受けている以下2製品を導入しています。
- Automation Anywhere
- Blue Prism
それぞれの特徴は以下の通り。
Automation Anywhere
日本ではまだ馴染みがないですが、実は世界シェアNo.1のRPAツールです。
製品としては海外製ですが、日本語での対応が可能で「質問し放題サービス」というサポートを提供しているため、はじめてのRPAツール導入についても安心できます。
Automation AnywhereはAIを採用していて、人間が作業している裏側で自動化による効果が大きい業務を見極め、その業務を自動化するためのプロトタイプを作成する機能があります。
また、手書きの書類のような不明瞭なデータについても読み取り使用できる文書処理機能があり、会社に紙媒体が多い場合は大きいメリットです。
ベンダー | Automation Anywhere |
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価格 | [Cloud StarterPack]約10万2千円/[Advanced Pack]要見積もり |
提供形態 | サーバー型/クラウド型 |
公式サイト | https://www.automationanywhere.com/jp/products |
Blue Prism
国内シェア4位の「Blue Prism」はサーバ型RPAツールで、フローチャート形式でのロボット作成が特徴です。
特に高いセキュリティを提供しているため、医療機関や金融機関などのセキュリティが重要視される分野で多く導入されています。
AIとの連携も可能で、複雑な作業の自動化にも対応してくれます。
これにより、より高度な自動化ニーズに応えることができるため、信頼性の高いツールとして評価されています。
ベンダー | Blue Prism |
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価格 | 要問い合わせ |
提供形態 | サーバー型 |
公式サイト | https://www.blueprism.com/japan/ |
自動化成功のポイント
第一生命が、RPAによる自動化を成功させるために行った取り組みは以下の通り。
- 自社システムとの相性を確認、自社に合ったツールを選択
- 既存システムの改修により親和性を高める
- 経営層の理解を促進、トップダウンで企業全体の自動化を図る
- ビジネススコープを検証し、RPAの導入範囲を決定する
具体的には、第一生命では、全社およそ80の部署の各人員に、RPA化を推進する「RPAアンバサダー」を任命。
また、事務企画部においてロボを管理する部門を設け、RPA全体の運用や費用管理、開発(セットアップ)/保守を担当するような体制を構築しました。
さらに、RPAだけでなくExcelやAccessなども含めたITツールの利用を俯瞰的に検討しながら業務をコンサルティングする機能も同部署に設けました。
このように、第一生命では、主に事務企画部が主導し、IT部門と協力しながら自動化を進めているのが特徴です。
RPAの活用をビジネス部門が主導することで、より現場のニーズに寄り添うことが可能。
RPAの開発から保守運用までを事務企画部が一手に請け負うことによって、作成した自動化プロセスが管理不能になる、いわゆる「野良ロボット」の発生を防ぐという意図もあります。
効果
第一生命保険は、2021年度末の時点で、累計1010業務37万時間の自動化に成功。
事務管理業務の効率化において、国内トップクラスの規模での実績を誇っています。
稼働するロボットの台数は約200台。
昼夜を問わず、業務を自動的に進めることを可能にしています。
今後の課題
現在、第一生命では、品質と生産面の2つの面において課題を抱えているといいます。
まず、品質面での大きな課題は、自動化プロセスを実行する際のネットワーク品質に影響されやすいこと。
これに対して、第一生命では、プロセスが異常停止してしまった事例を集めて継続的に原因を分析し、安定運用に向けたノウハウを蓄積しています。
これらを新規の自動化案件にも生かし、品質面の課題に対応していく見通しです。
次に、生産性の面での主な課題は、ライセンス効率。
部署ごとの要件により、RPAを実行したいタイミングが重なってしまうケースが増えているとのことです。
限られたライセンス数のロボットしかないため、これを有効活用し、全体の稼働率を平準化してコスト効率を高めていく必要があります。
この課題に対して、第一生命では、所管部署と連携してスケジューリングの最適化を図っています。
自動化成功事例から見る、RPAによる自動化を成功させるポイントとは?
ここでは、様々な事例から読み取れる、RPAによる自動化成功のポイントについて解説します。
ポイント① 成功のためのファストステップ「ツール選定」は慎重に
RPAツールを選ぶ際、以下の2点に注意しましょう。
- ツールの種類は適切か
- サポートサービスは充実しているか
それぞれについて解説します。
ツールの種類は適切か?
RPAツールには様々な種類があり特徴が異なるので、RPAを導入する業務内容に合わせて適切なものを選ぶことが大切です。
例えば、対象業務が「クラウドで完結するもの」なのか「PC上(ローカル)で行う業務なのか」などと見分けがつけば、RPAツールの種類も絞られます。
というのも一般的に、デスクトップ型のRPAツールではPC上の操作が全て行えますが、クラウド型ではWebでできる操作しかできない仕様となっているからです。
なお、RPAツールは複数ありますが、ベンダーによってはトライアルを設定している場合もあります。
PoCの結果、導入を見合わせる場合もあるため、PoCでのツール導入は各業者と契約期間等の調整を行っておきましょう。
この際、対象業務を選定し、RPA化していく過程ではどのくらい手間と時間がかかるのかを分析および測定することは必須です。
サポートサービスは充実しているか
RPAツールはベンダーによってサポートサービスの充実度が大きく異なります。
例えば、WinActorやUiPathのような市場シェアの高い代表的な製品は、自社のRPAツールを使用している人に向けて研修パッケージを提供。
汎用的なサポートサービスを行っています。
一方で、AUTOROのような中小企業向けツールでは、標準でチャットサポート機能がついており、RPAの疑問点を即レスで解決するサービスを実施しています。
後者の方が、エンジニアがおらずRPAの知識が少ない企業には合っているといえるでしょう。
RPAは基本的に初心者でも扱えるツールですが、困ったときのためのサポート機能はあって損はしません。
自社のRPA耐性に合ったツールを選びましょう。
ポイント② RPA導入前に業務フローを改善する
業務フロー図を描くことにより現在の業務プロセスの可視化ができますが、併せて不要な工程、非効率な仕事のし方等も可視化することができます。
そのようなところはRPAを導入せずとも改善できることが多いので、まずそちらを優先して取り組むことをおすすめします。
またRPAを適用する場合にも事前にRPAロボットで処理しやすいように業務フローを変更することも効果があります。まとめてロボットに任せられるように業務フローを変えていくのです。
ポイント③ はじめはスモールスタートから
スモールスタートをおすすめする理由は、大きく分けて以下の2つがあります。
- RPA導入で失敗するリスクを低減すること
- RPA導入の効果を早期に享受すること
2023年12月時点で、市場には30種類以上ものRPAツールがあります。
種類の多さがツール選定を難しくし、導入時期が延びることで解決すべき問題が放置されることにもつながっています。
また、闇雲に投資をした結果、投資対効果を出せずに撤退することもあります。
スモールスタートによって、最初は対象を絞ることで人員・お金・時間という経営資源を最小限に抑えながら、「RPAが問題解決に適切な手段(ツール)であるかどうか」、「検討しているRPAツールが問題解決を実現できそうかどうか」を確認することが可能になります。
また、自動化する業務の複雑さにもよるものの、RPAは、他システムに比べて導入期間が短い傾向にあること、かつ、導入範囲を絞り込むことで導入効果を早期に享受し、投資対効果を高めることができます。
さらに、付加価値として、少しずつ成果がを重ねることで、RPA導入へ人の関心が向き、人の協力を得やすくなります。
ポイント④ 全社的なDX推進で、業務を「見える化」
メンバー間で、ITスキルはばらばらであるのが会社の常です。
そんな中で「RPAを導入する」というと、業務効率化で自分の作業・業務負担が軽くなるにも関わらず、アレルギーを起こすように嫌がる方がいるのも事実です。
そこで、わかりやすい目的・効果測定をするのは、よりRPAツールの定着を推進することにつながります。
「達成したら早く帰れる」、「業務効率化はこんなに進んで○○時間浮く見込み」など、具体的なプラス面や改善される点を社内で共有することを徹底しましょう。
また、RPAツールは基本的にプログラミングが不要。
学習プログラムによりスキルを身に着ければ、誰でもロボットが動くためのシナリオを作ることができるのは、RPAの特徴の一つです。
評価基準を整備することに加え、基本操作の習得と簡単なシナリオが作成できるように教育研修を行うと、スキルに自信がついて、メンバーがさらに積極的にRPAを活用するようになります。
社外のセミナーも活用してみましょう。
記事まとめ
この記事では、第一生命のRPAによる自動化成功例について、導入業務や実際に導入したRPA製品、自動化成功のポイント等を解説。
数々の事例から見る、RPAによる自動化成功のポイントについてもご紹介しました。
「RPAを導入したいが、ツール選びで悩んでいる」
「RPAを導入したがよいが、費用対効果を発揮できずにいる」
そんなお悩みをお持ちの方は、この記事でご紹介した、自動化成功のポイントを参考にしてみてください。
また、ツール選びで悩んでいる方は、まずはフリーソフトや無料トライアルを活用して、RPAに触れてみるのがおすすめです。