少子高齢化による、人手不足や働き方改革を背景に、業務効率化に取り組む企業が増えてきています。
そんな中、パソコンを使った業務を自動化でき、さまざまな効果を発揮するITツールとして注目されているのが「RPA(Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション))」です。
しかし、RPAという言葉は聞いたことがあるが「具体的な効果がわからない」「効果測定が難しそう」という疑問から、導入に踏み切れない企業も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、RPAを導入することによって得られる効果7選と、費用対効果の測定方法について詳しく解説します。RPAツール導入の一助になれば幸いです。
RPA導入によって期待できる効果7選
さっそくですが、RPAを導入することで得られる具体的な効果を7つ挙げて解説します。
効果① 生産性の向上
生産性の向上は、RPAを導入することの最大の効果とも言えます。
RPAは、データ取得やデータ入力といった「人が実施するには時間がかかる業務」を代行することができるため、その作業に割いていた労働時間を大幅に削減できます。
また、RPAは夜間や休日も休まず24時間365日稼働することが可能なため、今までは作業できなかった時間帯を利用し効率よく業務を進めることができます。
そのように削減した時間を、マーケティング活動、経営戦略の立案、新サービスの開発といった企業としての「コア業務」に割り当てることで、生産性を高めることができます。
効果② 人手不足の解消
日本の労働力人口は減り続けており、2060年には現在の人口が4割減少すると言われています。
これは日本が取り組むべき社会問題で、将来的に業界業種を問わず、あらゆる企業が人手不足という課題に直面することを意味しています。
しかし、RPAを導入すれば「人が行っていた作業を代替できる」ため、その業務を担当していた人員を別の業務へ配置するなど、人手不足の解消の効果が期待できます。
また、RPAによる業務効率化や長時間労働が解消できるため、従業員満足度や定着率の向上に繋がり、離職率を低下させる効果もあります。
効果③ 業務品質の向上
人が作業をする場合、どれだけ業務に慣れている担当者でも、その日の体調や疲れ、慣れといった状況からミスをしてしまう可能性があります。
さらに、処理している作業が単純作業であったり、毎日実施するような定型業務だったりすると、集中し続けるのは難しく、うっかりミスが多くなってしまいます。
そういった業務をRPAに任せることで、ミスを削減し業務の正確性を高める効果があります。
また、人が実施するよりもスピーディーに処理できるため、作業完了までの時間を短縮することができ、業務品質の向上に繋がります。
効果④ 業務プロセスの見える化
RPAを導入する際は、自動化する業務を検討するために、業務プロセスの見える化(可視化)を実施します。
そのため、普段は見つけられない無駄なプロセスや、担当者によって手順が違うといった「改善の糸口」を見つけることができます。
そうすると、たとえ自動化しなかった業務でも、業務プロセス自体は改善されているため、結果的に生産性の向上が期待できます。
効果⑤ 働き方改革の推進
労働環境の質向上と、生産性の向上を目指している働き方改革では、長時間労働の是正や柔軟な働き方の推進、多様な人材の活用といった取り組みを推奨しています。
RPAを導入すると、人の作業を代替し社員の労働時間を削減することが可能なため、長時間労働や残業の抑制や、リモートワークの導入など環境を整備することができます。
また関連項目として「フレックスタイムの導入」や「育児や介護との両立」といった環境も構築できるようになります。
効果⑥ 現場の改善意識が向上
RPAツールは、普段の業務が自動化される様子を身近で確認することになるため、自動化による効果を感じやすいツールです。
そのため、他の業務も自動化して効率よくしたいという考えが、現場で広がり「何か改善点はないか」という視点で普段の業務を実施するようになります。
そうすると、現場の改善意識が向上し、自動化していない業務も含めて業務効率化が進み生産性の向上に繋がります。
効果⑦ コア業務へ注力
コア業務とは、会社経営のメインとなる業務で、事業活動の根幹を担うような「戦略の立案・策定」「開発、営業活動」などの、利益の創出に直結するような業務を指します。
RPAを導入すると、単純作業を繰り返すような業務を代替できるため、その作業に割いていた膨大な労働時間をコア業務に充てることが可能になります。
また、コア業務に集中できるようになった社員はモチベーションが高まり、離職リスクも低下するため、効果的な人材活用が期待できます。
費用対効果の測定方法
RPA導入の失敗事例で「思ったより効果が感じられなかった」というケースが発生しています。
手間をかけて導入を進めても、正しく費用対効果を測定する方法を理解しておかないと、十分な効果を感じることができませんので注意が必要です。
無駄なIT投資とならないよう、ここではRPA導入時の費用対効果の指標である「定量的効果」と「定性的効果」について解説します。
定量的効果の測定
定量的効果とは、数値として表すことができる効果を測定することです。
RPA導入の定量的効果としてわかりやすいのが、工数の削減時間や人件費のコスト削減などです。
たとえば、人件費のコスト削減を算出した場合は、以下の式で測定することが可能です。
担当者の処理時間(件)× 担当者の時給(円)× RPAが処理した件数(年) =削減できた人件費(年) |
このように算出した人件費と、RPAの導入費用を比較することで費用対効果を算出することが可能です。
定性的効果の測定
定性的効果は、数値として表すことができない効果を測定することで「従業員のモチベーション向上」や「職場のコミュニケーションが円滑になった」などが当てはまります。
定性的効果は、定量的効果とは違い測定しづらく、結果が見えにくい効果です。
しかし、従業員のストレス軽減や離職リスクの抑制など、事業に影響する重要な項目になりますので、導入前には効果測定の仕方や項目を検討しておきましょう。
測定方法は、従業員へのアンケート調査や、業務中のフィードバックなどで確認できます。
まとめ:次の記事ではRPAツールの種類をわかりやすく比較
今回の記事では、RPAツールを導入することによって得られる7つの効果について解説しました。
RPAは単純作業や定型作業を自動化することができるため、人手不足や人件費の削減に効果があり生産性の向上が期待できます。
そのためには、定量的効果や定性的効果といった費用対効果について理解し、導入前に検討しておきましょう。
またRPAツールには、いくつか種類が存在し導入する型によって「使い方」「コスト」「効果範囲」などに違いがでてきます。
RPAの種類は費用対効果を正しく算出するためには把握しておくことをおすすめします。興味のある方は是非以下の記事もご覧ください。