大手企業では、RPAの導入と活用が進んでおり、すでに自動化により多くの業務時間の削減に成功しています。
一方、中小企業では、かつてはRPAツールは高いので中小企業向きではない、と敬遠され、導入がなかなか進みませんでした。
しかし、RPAツールも従来のものより、コスト面や、使い勝手の面で改良されているものが多く登場し、普及が広がっています。
ところで、大手企業と中小企業では、RPAツール製品の選定基準・製品の特徴は違うのでしょうか。
違うとすると、具体的にはどんな違いが生じるのでしょうか。
この記事では、大手企業と、中小企業でのRPAツールの選び方の違いを解説。
企業の規模ごとにおすすめのツールを紹介します。
RPAツールの導入をお考えの方はぜひ参考にしてみてください。
RPAツールは大手企業だけのもの?
RPAツールは大手企業だけのものであった時期はすでに過ぎており、中小企業でも導入事例が増えています。
MM総研による「RPA国内利用動向調査 2022」では、2022年9月時点の日本企業におけるRPA導入率は年商50億円以上の企業では社数ベース導入率は45%と、半数近い企業が導入するまでになりました。
その一方で、年商50億円未満の企業では、導入率12%と低い水準にとどまっています。
いまだに、企業の規模が大きい方がRPAの導入率は高く、特に金融業では59%と、高い割合となっているので、市場をけん引しているのは大手ということができるでしょう。
一方、中堅・中小企業での12%という普及率は、他のITソリューションと比べると、決して低いとは言えない数字です。
大手がシステム化・デジタル化を進めていく中で、規模が小さい企業では、投資にも限界が生じやすいため、それほど一つのソリューションが高いシェアを占めることはあまりありません。
従いまして、RPAツールは大手企業のものとの認識は、というのはすでに過去の認識になっているのです。
成功事例が多いのは大手企業
RPAツールは、成功事例が雑誌記事やWeb記事で取り上げられることも多いソフトウェア製品です。
雑誌やWebでは「多くの時間削減効果が出る」と記載するほうが効果がはっきり伝えられます。
この点、大きな会社の業務・作業のほうが数字で示しやすくわかりやすいという特徴があります。
そのため、取り上げられることが多いのは、大手企業の導入成功事例です。
ただ表に出ていない導入成功事例の中には、多くの中小企業の事例があるはずです。
例えば、書籍「小さな会社が自社をRPA化したら、生産性がグーンとアップしました。」は、著者の実体験を基にしたものですが、これも中小企業の成功事例の一つと言っていいでしょう。
より必要としているのは中小企業
見方を変えてみると、RPAツールは大手より、むしろ中小企業でより必要とされている、ということができるでしょう。
- 中小企業は、RPAの発達の原因になった、人手不足の問題の影響を受けやすい
- 中小企業の生き残りのためには、生産性や、収益性を短期間に上げることが課題である
- 中小企業が生き残るには、大企業のそれより魅力的で付加価値の高い商品を売る・サービスを提供する必要があり、時間をかけて本業に集中しなければいけない
上記のように、中小企業の経営環境・経営課題は、大手と比べてより厳しい状況にあると考えられます。
しかし、もしRPAを上手に導入できると以下の効果が生じます。
- 中小企業もRPAの導入により、自動化を実現し人手不足をカバーできる
- 生産性・収益性は、RPAによる労働時間のカットで実現できる
- 本業に集中することは、RPAによる単純作業時間のカットにより実現できる
大手よりも、中小企業のほうがRPAツールを必要とし、かつ、効果が出やすいと考えられるのです。
企業の規模にあわせたRPAツールの選び方
RPAツールは、市場シェアの高い代表的な製品=大手向き、日本産のコンパクトな製品=中小企業向き、と考えてよいのではないかと思われます。
代表的な製品は、運用を大きくできることが特徴です。
これに対して、中小企業は、そこまで大きな運用をしなくてよいので、コンパクトで使い勝手の良い製品が、コスト・導入期間などの面でメリットが出ると考えられます。
代表的な製品では、台数が少ない運用を行う際の導入時投資額が一括で大きくなりがちですが、導入時に支払う初期費用を抑え、月額で支払える費用体系のほうがより中小企業向きと考えられます。
フリーソフトのRPAツールは実際どう?
フリーソフトを使うことにも問題があります。
例えば、UiPath では、Community Versionというフリーソフトがありますが、商用利用は禁止されています。
会社でインストールするだけでも当該RPAツールの「商用利用」にあたるものと考えられます。
その他のフリーソフトウェアでも、商用利用がどこまでできるのか、できないのか、フリーのRPAツールでは問題になりがちです。
利用規約を間違って解釈すると訴訟リスクもあります。
したがって、通常、企業での利用には向かないと考えてよいでしょう。
中小企業には低価格のクラウド型RPAツールが人気
初期費用が安い、または0円で導入でき、月額費用を支払うとメンテナンスフリーで利用できるクラウド型ツールが中小企業向きのツールとして考えられます。
OSも選ばない点もメリットです。
しかし、クラウド型ツールは以下の特徴から、限られた用途にのみ使うことが活用法として考えられます。
- Web上での動きのみに機能が限られることが多いこと
- アプリ・システムとの連携ができないこと
中小企業でも本格的な業務への導入を考える場合、クラウド型ツールの機能の限界を考えなければならないでしょう。
【大手企業】おすすめツール4選
まずは、大手企業向けおすすめツールを紹介します。
Blue Prismの製品概要
Blue Prismは、2010年に市場に登場した「元祖」とも呼ばれるRPA製品で、サーバによる大規模な運用に向いているRPAツールです。
Blue PrismはイギリスのBlue Prism社の製品で、2017年には日本法人が設立されています。
アメリカ・ヨーロッパ・アジアの各地にもそれぞれ現地法人を有しており、世界での導入数は1800社を超えています。
金融業のオフィス・英国の官公庁などの導入実績もあり、大規模運用に耐えられることでは安心感のある、大手企業向けRPAツールです。
その他、以下のような特徴があります。
- フレキシブルなUIで、ワークフローが書きやすい
- Blue Prism University で、操作や仕組みが学べる
- 完全日本語対応も行っている
トライアルバージョン・デスクトップ型・サーバ型・クラウド、それぞれを備えており、どんな運用にも対応できるところも強みです。
しかし、導入費用が年百数十万円であるところから、なかなか中小企業の手が出にくい価格であることが難点であるといえるでしょう。
BizRobo!の製品概要
BizRoboは国内1,560社以上の企業に導入され、実際に導入している企業は、中小企業から大手企業に至るまで様々。
小規模な運用用のMiniなどのラインアップがあることが特徴的ですが、BizRoboも大規模運用まで行うことが可能です。
BizRobo!には、ロボット設計・開発用ツールであるDesign Studioが用意されており、簡単にシナリオ開発が出来るという特徴を持っています。
また、管理コンソールはサーバ運用の際に、運用・監視のためのツールとして利用することが可能です。
すでに1500社を超える日本企業に人気のあるRPAツールですが、導入のための初期費用が約100万円と高額になるのが難点だといえるでしょう。
WinActorの製品概要
国産のRPAツールとして、日本国内シェア1位となっているWinActorは、NTTデータから発売されています。
日本語によるサポート、マニュアル、そしてベンダー検定などの充実から、使いやすいRPAツールとして話題。
既に約3000社ほどの導入実績があり、業種を問わず利用されているRPAツールです。
WinActorは名前の通り、Windowsで動作するソフトウェアの操作を何度も再現できることが特徴。
Microsoft Office製品、ブラウザ、ERP・OCRなど、ソフトウェアはWindowsで動く限りはなんでも対応可能です。
専門知識がなくても、シナリオを作成できるわかりやすいインターフェースを持ち、1台から、サーバによる大規模運用まで対応しています。
1台の導入なら、年間約90万円ほどでの導入が可能です。
UiPathの製品概要
UiPathは2020年現在世界シェア1位のRPAツールであり、すでに多くの大手企業でも導入実績があります。先ごろ、内閣府でも選定された製品です。
自動化のプロセスを設計する「UiPath Studio」、管理コンソール「UiPath Orchestrator」、実行機能を持つ「UiPath Robot」から構成されています。
Blue Prismと同時期、2017年よりUiPathは日本法人を開設し、日本語フル対応もできるようになっています。
ERP/CRMとの連携が可能であり、さらにMicrosoft Officeとの連携・Webアプリケーションの操作、ブラウザ操作によるWebスクレイピングなど、機能的にも充実しています。
RPAに期待されていることは、WindowsOSを利用することを前提とすると、すべてできるのがUiPathと言ってよいでしょう。
シナリオを直感的にドラッグアンドドロップで書くことも可能で、使い勝手がよい一方、オブジェクトコードを使い、詳細にシナリオを作成することも可能です。
UiPathも、他の代表的 RPAツールと同様、一台での運用から、サーバでの大規模な運用も可能です。フェーズを問わず使えます。
したがって、約90万円~となっている導入費用が払えれば、使い勝手の面とあわせて考えて、UiPathは堅実なRPA製品の導入となるでしょう。
【中小企業】おすすめツール4選
中小企業が気軽に1台から導入するには上記で紹介したツールに比べてもう少し使い勝手が良いもの、また価格面でメリットがあるものを選びたいところです。
ここでは、中小企業におすすめツールを紹介します。
Autoroの製品概要
Autoro(旧:Robotic Crowd)は充実したカスタマーサポートが特徴のクラウド型RPAツール。
クラウド型(SaaS)RPAツールのため、構築のためのコストが不要で導入が容易な点が魅力で、ソフトウェアのインストールや専門的な知識が必要な環境構築などを行わずとも、すぐにツールを活用できます。
また、ロボットが実行する動作を登録する作業も、用意されているアクションをドラッグ&ドロップするだけと非常に簡単です。
動作検証として実行ログも確認することができます。
さらに、業務フローを共有できるのも中小企業には嬉しいポイント。
テキストベースのエディタモードを利用することで、業務フローをまるごとコピーできるので、自身の作業を可視化することが可能になるとともに、個人間・チーム間での共有もスピーディに行うことができます。
退職・異動にともなう業務や作業の引き継ぎにはもちろん、作業ノウハウの共有などにも便利です。
業務効率化・スリム化につながり、新しい価値の創出に時間を割くことができるでしょう。
ただし、その一方で、価格帯は月額10万から30万円程度と、中小企業向け製品の中では割高なのが難点といえるでしょう。
JobAutoの製品概要
「JobAuto」はChromeなどのブラウザ、ExcelなどのOffice製品、Googleスプレッドシートやメールなど、様々なアプリケーションを使用する業務を自動化したい場合にうってつけのRPAツールです。
マウスでのドラッグアンドドロップだけでロボットを作成可能。
だれでも操作することができるノンププログラミングのRPAツールなので、RPAツールを使いこなせる人材がいない中小企業でも問題なく導入することができます。
初期費用は無料。
30日間の無料トライアル後の利用料金も月額10万円~と低価格で利用できるのが魅力です。
Robo-Patの製品概要
Robo-Patは現在1,600社以上の企業で利用されており、継続率も97%と高評価を誇る国産RPAです。
アプリケーションを選ばず、全てのソフト、ブラウザを操作可能と汎用性が高いのが魅力といえるでしょう。
プログラミングや専門知識を必要とせず、現場で簡単にロボが作成可能。
Web操作もマウスとキーボードで簡単自動化できるので、エンジニアがいない中小企業でも問題なく導入することができます。
特徴的なポイントとして、Robo-Patは1か月単位での契約が可能。
「繁忙期だけ使って、その他の月は使わない」、「 繁忙期だけ実行専用を増やす」など効率的に運用ができます。
低コストで人材不足を解消したい企業さまにおすすめのツールです。
MICHIRU RPAの製品概要
MICHIRUはデスクトップ型のRPAツール。
初期費用10万円から始められ、月額は5万円の料金という低価格ながらも、他のシステム・アプリとの連携も問題なく行うことができるという高スペックが人気の製品です。
MICHIRUは、画像認識技術を使ったわかりやすいUIにより、シナリオ作成ができます。
画面を他のメンバーと共有しながら、シナリオを作成することも可能です。
しかも、簡易なフローを作成する・オブジェクトコードでより詳細にロボットの動きに指示を与えるなど、自由自在の対応も可能です。
AI-OCRとのパッケージソリューションもありますので、中小企業が文書の電子化を図り、出入力を自動で行う、ワンストップソリューションの利用を考えるなら、MICHIRUは最適な製品と言えるでしょう。
中小企業には、人手不足とIT人員の不足という問題があります。今後双方の不足をどう補うかは問題です。
この点、まずMICHIRUの導入で人手不足をロボットで補ってもらい解消することができます。
その上、サポートが手厚いので、よく問題を知っている技術者とのコミュニケーションにより、問題を解決することができる点もメリットです。
記事まとめ
各RPAツールの特徴や問題点・比較についてご紹介しました。
大手企業には大手企業の、中小企業には中小企業にあったRPAツールがあります。
特に、中小企業の場合、RPAによる自動化を進めることは企業の収益・生産性に直結しがちなため、適切な製品を導入し、安定的に運用させるようにしましょう。