国内において人材不足や業務の効率化を背景に、企業におけるDX化を図る試みは年々増加しています。
中でも、業務の自動化を可能とするRPAツールは、2010年代より大手企業で導入がされたことを皮切りに、現在では官民問わず多くの組織で活用されています。
一方で、組織内でRPAの導入を検討しているものの、何から手をつけて良いのか分からない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、これからRPAを導入する企業や組織に向けてRPAの導入ステップについて解説いたします。
加えて、自動化に向いているおすすめの業務や作業も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
RPAの導入ステップ
RPAツールの導入手順は以下の流れに沿って考えると良いでしょう。
- 自動化したい業務を洗い出す
- RPAツールの選定
- 無料トライアルの活用
- 本格的な導入
- 継続的な評価と改善
ステップ①:自動化したい業務を洗い出す
まずは組織内における業務の課題及び、自動化したい業務を洗い出すことから始めましょう。
自動化しやすい業務には以下のような特徴があります。
- マニュアル化しやすい
- データ収集や分析など数字を扱う
- PC内で完結できる
自動化に向いている業務の詳細は、後述していますので、具体的な運用事例を知りたい方は後半を参考にしてください。
また、自動化を検討している業務が部署や組織を跨ぐ場合は、この段階で事前に連携を取り合うことをおすすめします。
そうすることでRPAツールの導入をトラブルなく円滑に進めることができるでしょう。
ステップ②:RPAツールの選定
ある程度自動化したい業務が定まったら、RPAツールの選定ステップに移ります。
RPAツールと一口に言っても、ツールごとに有する機能や種類は違います。
また、RPAツールの導入においては、業務効率化の観点からロボットの工程を作成する操作性も選定ポイントとして重要な要素です。
さらに、費用によっても対応できる業務に差が生じる場合があります。
したがって自社のニーズに合ったツールを選定するためには、費用感を加味しつつ、できるだけ多くの選定候補を持つことが必要です。
ステップ③:無料トライアルの活用
ツールの候補がいくつか絞れたら、実際にRPAツールを試験的に導入するステップに入ります。
RPAツールを開発している多くの企業では、本格的な導入の前に無料トライアル期間を設けています。
トライアル期間は大半のツールにおいて1ヶ月間程度となっているため、機能や操作性を確認するには十分な期間があると言えるでしょう。
無料トライアルを活用するメリットは、事前に本格的な導入にかかる課題を把握できることです。
事前の課題解消はスムーズな運用のためにも大切なステップとなるので、このステップ飛ばさないようにしましょう。
ステップ④:本格的な導入
無料トライアルで効果を実感し、導入で得られるメリットが大きいと判断した場合、本格的な導入のステップに移ります。
全社的に導入を行う場合、部門や業務ごとなど段階的に進めることでよりスムーズに導入できるので、まずは小規模からスタートしてみることをおすすめします。
また、RPAを導入することで自動化前と業務のやり方が変わることとなります。
つまり、従業員に適切なトレーニングを行うことはRPAの導入を成功させる重要なポイントです。
トレーニングの方法としては、研修マニュアルの作成やOJT研修の実施などが良いでしょう。
特にRPAの導入においては業務の属人化が発生し得ることがデメリットとして挙げられます。
属人化を避けることもまた、RPAの成功を実現させるステップであると言えるでしょう。
ステップ⑤:継続的な評価と改善
最後のステップは、RPAツールの継続的な評価と改善です。
RPAは導入すること得られるメリットは多くありますが、ただ漠然と活用しては効果の最大化は期待できません。
したがって定期的にその効果を評価し、プロセスの改善を続ける必要があります。
また、継続的な評価と改善を行うためにはPDCAサイクルを回し続けることが重要です。
RPAツールの導入におけるPDCAサイクルの一例は以下のとおりです。
Plan(計画) | コスト削減、作業時間の短縮、品質の向上など、達成したい目標を具体的に定義する |
---|---|
Do(実行) | 計画したプロセスに基づいて、RPAツールを用いて作業を自動化する |
Check(評価) | RPAを利用する従業員からフィードバックを収集し、実際の作業効率や問題点を把握する |
Act(改善) | 評価フェーズで明らかになった問題点に対して原因を分析し、改善策を講じる |
自動化に向いている業務
上述したステップに基づくと、RPAツールの導入はまずは自動化したい業務を洗い出すことから始まります。
本章では、どういった業務が自動化をするのに向いているかを解説します。
マニュアル化されている業務
マニュアル化されている業務は、一般的に規則性があるかつ、繰り返し行われ、業務手順を明文化しやすいためRPAの導入に適しています。
マニュアル化しやすい具体的な業務の事例としては以下のようなものが挙げられます。
1.請求書処理
請求書のデータ入力や管理は、多くの企業で形式化されている業務です。
RPAを活用することで会計システムやエクセル等のソフトに自動的にデータを入力し、支払い処理等を行うことができます。
また、RPAツールを活用することで、処理速度の向上及び、手作業による入力ミスを削減し業務品質の向上が期待できるというメリットを有しています。
2.データ入力作業
データベースへの情報入力やフォームへのデータ転記は、RPAによる自動化と親和性の高い業務であると言えます。
RPAツールの導入により、既存作業に対する速度と正確性が向上が見込めます。
また、これまで手をつけられなかったクリエイティブな業務に費やす時間を確保することも可能となります。
一般的にこのような業務は現状、AIよりも人間が優れていることが多いです。
したがって間接的に売上拡大につながることが期待できるでしょう。
3.在庫管理
在庫管理の業務には、在庫の監視、発注、在庫レベルの調整など、定型的な作業が多く含まれています。
RPAを導入することでこれらのプロセスを自動化し、在庫の過剰または不足によるリスクやを最小限に抑えられるメリットを有しています。
また、在庫状況に基づいた自動発注システムを設定することも可能です。
データ収集・分析業務
膨大なデータを取り扱う業務は、RPAツールの得意分野の一つです。
人間が同じ業務を行う場合と処理速度や業務品質と比較しても、RPAを活用する方がパフォーマンスが高いと言うメリットがあります。
そのため、データ収集や分析業務は自動化する業務として選ばれることが多いです。
具体的な業務事例としては以下のようなものが挙げられます。
1.月次レポートの作成
自社でECサイトを運営している場合、商品ページごとのアクセス数や、トラフィック獲得数など、多岐にわたるデータをまとめる必要があります。
RPAツールを活用することで上記のようなデータ集計を容易にするため、月次レポートの作成に時間を取られずに済みます。
2.市場の売上予測
RPAは利用するツールや種類によって変わりますがネット上の情報収集も可能です。
RPAツールは、収集した一定のデータに基づいて将来のトレンドや需要を予測する分析を自動的に行うことができます。
例えば、売上予測や顧客行動の予測など客観的な関連データをネット上から収集できるため、自社の目的に応じた市場の分析が効率よく行えるでしょう。
PC内で完結できる業務
業務手順にアナログ的要素が除かれており、PC上のソフトウェアやアプリケーションだけで完結する作業は自動化する業務として最適です。
PC内で完結する具体的な業務事例は以下のようなものが挙げられます。
1.データバックアップ
データバックアップやアーカイブのプロセスは、企業にとって非常に重要です。
そのため、社内で定められたマニュアルに基づいて行われることが多いです。
RPAを導入することで、定期的なバックアップやアーカイブを自動的に実行し、人的ミスによるバックアップのし忘れを防ぐことができます。
2.顧客データの更新
顧客情報のデータベースを最新の状態に保つ作業も、RPAツールを用いて自動化しやすい業務だと言えます。
顧客情報を変更が必要となった際、RPAツールを導入することでそれらのデータを自動的にシステムに反映させることができます。
また、RPAツールの導入により入力ミスや更新忘れ等、人間が介在することで発生する課題の解消にも役立つため、データの整合性が保つことが可能です。
記事のまとめ
本記事では、RPAの導入手順をステップごとに解説しました。
今一度RPAツール導入のステップをおさらいします。
- 自動化したい業務を洗い出す
- RPAツールの選定
- 無料トライアルの活用
- 本格的な導入
- 継続的な評価と改善
まずは社内で発生している業務上の課題を浮き彫りにし、どの業務を自動化するか選定することから始めましょう。
どの業務が自動化できるかわからない場合は、他社での導入事例を参考にすることもおすすめです。
以下の記事では、RPAを導入することで得られるメリットを具体的に解説しています。
メリットの他に導入における注意点や具体的な効果検証の方法についても詳しく記載していますので、本格的に導入を検討する企業様はぜひご一読ください。