近年、業界を問わず多くの企業がRPAの導入を進めています。
しかし、RPAをうまく運用することができず、業務の自動化が叶わないケースも少なくありません。
RPAを効果的かつ効率的に活用するためには、メリットとデメリットを理解して、デメリットに対してはあらかじめ対応策を用意しておくことが重要です。
この記事では、RPA導入をご検討中の企業の方に向けて、ツール導入前に知っておくべきRPAのメリットとデメリットを解説していきます。
デメリットについては対策も紹介していきますので、是非参考にしてみてください。
業務自動化ツール「RPA」とは
RPA(Robotic Process Automation)とは、毎日、毎週または毎月のルーティンとなっている業務や定形業務を自動化するためのツールです。
ソフトウェアロボットを使用し、データの入力やレポート生成などの業務を自動で処理することができます。
RPAはユーザーインターフェースを通じて業務に対応するため、導入に際してシステムやアプリケーションを変更する必要はなく、既存のITインフラストラクチャーと統合しやすいという特徴があります。
画面上のシステムやアプリケーションを横断的に操作し、業務を自動化することができるため、具体的には業務フローや作業手順が決まっている交通費計算や競合他社の調査、顧客情報の管理などの業務との相性が非常に良いです。
RPAは、特定の業務プロセスの自動化や効率化が必要な場合に有用なツールであり、繰り返しの作業を人手から解放し、企業の生産性向上やコスト削減に貢献します。
しかし、RPAを導入しただけで効果的に運用できないなどの失敗事例も珍しくありません。
RPAを効果的に活用するためには、自動化する業務とRPAの相性はもちろん、導入後に考えられるメリットだけでなくデメリットもしっかりと理解しておく必要があります。
RPAの5つのメリット
RPAツールを導入することで、企業には下記のようなメリットがもたらされます。
- コスト削減、最適化
- ヒューマンエラーの抑制
- 時間創出や従業員のモチベーション向上に繋がる
- 人材不足の解消
- 対応スピード、生産性が向上する
ここでは、RPA導入によって見込むことができる上記5つのメリットを詳しく解説していきます。
1. コスト削減、最適化
RPAは、24時間365日稼働することができます。
また人間が対応している定型業務や大量に繰り返される業務は、膨大な時間や人手ががかかるケースが多く、従業員の残業や新規の雇用が必要になるケースも多いです。
RPAツールを導入することで、単純作業はRPAが対処するようになり人間に担わせる必要がなくなるため、企業はこれらの業務に対する人件費や採用コストを削減することができます。
残業にかかる人件費や採用コストを削減できれば、新たな投資先を見直すことができ、コストの最適化にも繋がるでしょう。
2. ヒューマンエラーの抑制
ヒューマンエラーを抑制できる点も、RPAの最も重要なメリットのひとつです。
RPAツールはプログラムに従ってタスクを自動的に実行するため、人間による手作業に比べて高い精度で作業を処理することができます。
データの入力ミス、計算間違い、適切な手順の不履行など、ヒューマンエラーは多くの業務プロセスにおいて0にはできない課題です。
しかしRPAを導入することで、これらのヒューマンエラーを最小限に抑えることができます。
またこれによって品質向上も期待でき、企業の信頼性と競争力の向上を見込むことができるでしょう。
ヒューマンエラーを原因とするコストや時間の浪費を削減できるため、RPAは多くの業界で注目されています。
3. 時間創出や従業員のモチベーション向上に繋がる
RPAを導入することで、よりクリエイティブな時間を創出できることも大きなメリットです。
退屈な単純作業から解放されることでより生産性の高い時間が創出され、従業員のモチベーション向上にも繋がります。
従業員が、人間にしかできない課題の解決や顧客サービスの向上に集中することができるため、企業全体の効率とイノベーションが促進されるでしょう。
また前述した通り、RPAは24時間稼働することができます。
従業員の有給取得や残業削減にも大きく貢献するため、職場環境がより満足度の高いものとなるはずです。
4. 人材不足の解消
RPAツールは人材不足の解消にも有力な手段です。
現代の日本では少子高齢化が進み、労働人口の減少が問題視されていることは誰もが知っている事実です。
労働人口が足りていないこの時代において、企業に従事するための十分なスキルを持つ従業員を見つけることは非常に難しく、多くの業界が人材不足の問題を抱えています。
RPAを導入することで、定形業務への人間の介入を最小限に抑えることができるため、これらの業務に対応する人材を新規で雇う必要がなくなります。
定型業務を処理する人材の不足を解消できるほか、採用担当者は自社に最適な人材を見つけるための業務に集中できるようになります。
5. 対応スピード、生産性が向上する
業務への対応スピードと生産性が飛躍的に向上することこそ、RPAの最も大きなメリットではないでしょうか。
RPAツールはタスクを高速かつ一貫して実行するため、人間が対応していたときに対して業務プロセスの実行時間が大幅に短縮されます。
これはカスタマーサービスの返信速度向上やビジネスプロセスの迅速な進行に繋がります。
またRPAは24時間体制で作業を実行できるため、営業時間外でも業務を継続できます。
これにより、業務プロセスの停滞を防ぎ、サービス提供やデータ処理などの連続性の確保が可能です。
例えば、RPAツールを利用して、定例会議で必要なデータを抽出し、資料を作成することができます。
RPAによってこのフローが自動化され、資料が夜間に出来上がっていれば、担当者はより高付加価値な提案の模索に時間を割くことができますし、「翌日の定例会議に資料が間に合わない」「残業しないといけない」ということが発生しません。
導入前に知っておくべきデメリット
RPAを導入することで、コスト削減や対応スピードの向上など様々なメリットを見込むことができます。
しかし、導入が失敗に終わる事例が多くあることからもお分かり頂けるように、デメリットがあることも否めません。
ここでは、RPAの導入や運用に際して想定されるデメリットを解説していきます。
またデメリットへの対策も解説致しますので、RPA導入に踏み込めていない企業の方や、導入を頓挫してしまっている企業の方は是非参考にしてみてください。
1. 導入や運用にコストがかかる
当然ですが、RPAは導入したら初期費用だけを払って終わりではなく、毎月または毎年の運用コストを支払う必要があります。
更にソフトウェアロボットの開発、シナリオの設定、監視、保守、アップデートなどの運用に関連するコストがかかります。
またRPAは定期的な監視とメンテナンスが必要なため、これに対する専門的なスタッフの配置が必要になるケースもあることを知っておきましょう。
運用コストが発生してしまうというデメリットへの対策として、以下のようなことが挙げられます。
ROIの検討
RPAツールの導入に際して、コストと利益のバランスを検討しましょう。
ROI(Return On Investment)とは、投資額に対してどれだけ利益を生み出しているかを見る尺度です。
どの業務プロセスを自動化すべきか、どの程度の業務効率向上やエラー削減が期待できるかを検討し、ROIを見積もることが重要です。
スケーラビリティの確保
RPAをスケールアップするために、管理と運用の効率化に取り組みましょう。
タスクの自動化とシナリオの設定を継続的に最適化することで、より費用帯効果の高い運用を実現することができす。
社内トレーニングとスキルの向上
従業員をトレーニングし、RPAの管理や運用に関するスキルを持つ内部リソースを確保しましょう。
また、RPAツールの知見を持つベンダーコンサルタントからのサポートを検討してみるものおすすめです。
比較的低コストなクラウド型RPAを検討する
クラウド型のRPAを検討することで、ハードウェアの管理や運用のコストを削減することができます。
上記の通り、RPAツールには運用コストがかかるというデメリットがありますが、戦略と運用体制を整えることで、RPAを効果的に導入し、そのメリットを最大限に活かすことができます。
2. 導入に時間がかかる
RPAを導入する際、運用までに時間がかかることもデメリットとされます。
RPAツールは、運用をスタートするまでに以下の通り多くのステップを踏む必要があります。
- RPAで自動化する業務を選定
- シナリオを設計し、必要に応じてプログラミングを行う
- ソフトウェアロボットの動作を確認し、バグをなくすためのテストとデバッグを繰り返す
しかし、以下の対策によって、運用までに時間がかかるというこのデメリットを解消することができます。
自動化する業務の優先順位付け
最初に、RPAを導入して自動化すべき業務の優先順位付けを行いましょう。
より高いROIをもたらす業務から着手することで、効果を早く実感することができます。
外部の専門家を活用
外部の専門家やコンサルタントを利用することで、導入にかかるスピードを向上させることができます。
RPA導入にかかる時間を最小限に抑えるためには、計画的なアプローチと適切なリソースを確保することが重要です。
成功の鍵は段階的な導入と適切なプロジェクトマネジメントと言えるでしょう。
3. RPAで自動化できない作業もある
「自動化したいと思っている業務が必ずしもRPAで対応できるかはわからない」という点もRPAのデメリットの一つでしょう。
繰り返しお伝えしているように、RPAで自動化できる業務は、ルーティンとなっている業務や定型業務です。
下記のような業務はRPAで自動化することができません。
- 判断力や創造性を必要とする業務
- 非構造化データの処理 など
このデメリットへの対策としては、以下のアプローチが考えられます。
AIの導入
AIテクノロジーをRPAと組み合わせることで、自動化の幅を広げることができます。
機械学習やNLPを実装することで、非構造化データの処理にも対応することができるでしょう。
業務プロセスの最適化
自動化が難しい場合、業務プロセスそのものを見直し、より効率的な方法を探ることも重要です。
非効率なステップを削減し、RPAに適した形にシナリオを再設計しましょう。
ヒトとロボットの分業
RPAと人間とで業務範囲を明確に分業しましょう。
RPAツールは定形業務を担当し、人間は創造性を必要とするタスクや判断力が必要な業務を担当します。
この分業により、RPAツールと従業員の双方の業務が最適化され、上記で紹介したようなメリットを見込むことができるようになります。
4. メンテナンスや停止時の修正が必要
RPAツールは、プロセスが決まっている業務を自動化するため、アップデートされたシステムや変更されたワークフローに対応することができません。
またソフトウェアロボットがエラーを発生させたり、停止した場合は修正と再設定が必要です。
そのため、定期的なメンテナンスや修正の手間がかかる点もデメリットのひとつとされがちです。
このデメリットに対して下記のような対策を実施することで、RPAツールのメンテナンスや停止時の修正にかかる時間とリスクを最小限に抑えることができます。
自動復旧機能
RPAがエラーに遭遇した場合、自動的に復旧する機能を組み込んでおけば、運用の中断を最小限に抑えることができます。
マニュアルを作成する
シナリオ設計と機能、エラーや停止時の対応方法に関するマニュアルを作成し、社内で共有しましょう。
保守担当者だけでなく、現場の従業員も必要な情報を迅速に取得できるように体制を整えておくことが重要です。
記事まとめ:デメリットも理解した上でのツール選定が重要
この記事では、RPA導入をご検討中の企業の方に向けて、ツール導入前に知っておくべきRPAのメリットとデメリット、またデメリットへの対策を解説しました。
近年、多くの企業が業務効率化やDX推進を目指し、RPAを導入しています。
RPAの導入には多くのメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。
RPAの運用を成功させるためには、闇雲に導入するのではなく、メリットとデメリットを十分に理解し、計画的なアプローチと適切なリソースを確保することが非常に重要です。
効果的にRPAを導入することで、企業はそのメリットを最大限に活かすことができ、競争力を強化することができるでしょう。