RPAツールは、AIと並んで、業務・作業を自動化する目的で広く利用されています。
2023年も好調に売上・市場規模が拡大しており、その関連商品も含めて、世界のソフトウェア売上をけん引しています。
企業の業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)・データ活用業務の進展・リモートワークの拡大の動きなどにより、RPAツールを必要とする場面が増大していることにRPAツールの市場規模は比例しているのです。
この記事では、RPAツールの世界市場と、国内市場のおおむねここ数年の動きと市場規模の拡大について紹介し、さらに今後の市場の動きを展望します。
株式会社MICHIRU カスタマーサクセス
この記事の監修担当者:
田中 温子
PCスクールのカリキュラム開発や地方創生イベントの企画運営を経て、2019年、業務で導入したMICHIRU RPAと出会う。その技術に心を打たれ、2023年に入社。お客様の描くDX実現に寄り添うカスタマーサクセスを目指しています。
快進撃続くRPAツールの市場規模・2021年
RPAツールは、ロボット技術をもちいて、PCの操作を自動化するソフトウェアです。
簡単に言うと、ロボットが人の仕事を代わりに行います。
定型的な仕事なら、人を一人雇うよりはるかに安く仕事をこなしてくれます。
- 定型的な仕事を正確に行う
- 教育研修の費用が掛からない
- 24時間業務を行っていても、問題ない
これらの特徴のため、日本でも導入が進んでいます。
2025年までに全世界で1億人以上のホワイトカラー労働者の仕事量がRPAツールに置き換わるとも言われています。
IMARC社の調査によると、RPAの世界全体の市場規模は2021年に24億ドルに達しました。さらに、2027年までに年平均30%の成長率で推移し、その市場規模は114億ドルにまで達すると予測されています。
また、RPAと連携するソフトウェアの導入も拡大しました。RPAはIT業界の売上をけん引して、市場規模を広げる役割をしています。
RPAよる自動化は、世界中で企業の生産性を向上させ、業務効率化を強力に推し進めるものです。
そして、働き方・経営を変えるものであるだけに、より多くの企業がRPA導入を進めるようになり、RPAの市場規模が拡大しているのです。
RPAツールが世界中で絶好調の理由とは?
RPAツールの市場規模が拡大を続けている背景を一度整理してみましょう。
・コロナ禍、リモートワークを背景としたRPA導入拡大
RPAの市場規模拡大の要因の一つとされるのが、新型コロナウィルスの影響です。
2020年は世界中の企業にとって経済活動の自粛や行動制限の中で業務を継続する必要に迫られた年でした。それを解決する手段として、もともと拡大傾向にあったRPAにさらに注目が集まったのです。
多くの国で、PCR検査に関わる業務や衛生用品の発注業務、航空券の払い戻し業務など、新型コロナウィルス関連の業務でも多く活用されました。
さらに、コロナ禍で拡大したリモートワークによる書類・帳票の電子化、それらのデータ活用、DXの推進など、近年の社会情勢がRPAツールを必要としています。
・労働力の補填
RPAを利用する中心は工業先進国ですが、少子高齢化が共通の課題です。
特に日本では、深刻化する労働者不足解消のためにRPAツールを導入する必要があります。
・ビッグデータ利用とRPAの連携もさらに拡大
工場や物流の現場、あるいは危険環境などでセンサをつかったIoTツールを利用し、取得したデータを活用する動きは、年々進行しています。
このようなビッグデータの利用に、RPAによるデータ整理の自動化は不可欠です。
・関連製品と連携も
国内でもAI-OCRとRPAツールの連携がよく見られるように、AI連携・他のアプリとの連携で利便性・効率性が向上します。
AI製品・アプリ製品と連携するRPA・アプリの導入にインセンティブがある場合も多く、RPAツールの好調の理由となっています。
海外のRPAツールのシェア
現在RPA世界市場シェアNo1はUiPath です。続いて、Automation AnywhereやBluePrizmが続きます。今後、マイクロソフトのRPAなども普及が進む見通しです。
日本のRPAツールの市場規模
日本もRPAツールの成長市場の一つです。2017年以降、特に市場規模を拡大しつつあります。
2020年~2023年の市場の推移
矢野経済研究所の調査によると、RPAの市場規模は製品売上高ベースで2020年には299億円、2023年には520億円以上になると予想されています。
2016年には13億円だったことを考えると、40倍の規模にまでに拡大しているのです。
成長率でみると、前年比4倍で推移していた2017年をピークに鈍化は見られますが、2021年から2023年にかけて年平均74億円の成長幅が見込まれており、まだまだ伸びていく市場といえるでしょう。
また、数年前まではRPAは大手企業の利用が中心でしたが、いまでは中小企業へも浸透しはじめ、本格的な利用拡大のフェーズに入ったと見られています。
コロナ禍でRPAの価値が再評価されたことも市場拡大の要因の一つです。
製品別市場規模は?
IDC Japan社の調査によると、2018年の国内RPA市場シェアは、ベンダー売上額ベースで首位はWinActor、次いでUiPath、富士通という結果でした。
以前は、先進導入事例では、UiPath や、BluePrismのような輸入ツール中心に利用がありましたが、現在では国産製品の市場規模が特に拡大しています。
中小企業向けの低価格で使いやすい製品群も増加していますし、クラウドRPAの普及も進んできました。
日本では、2030年問題と言われる、若年労働者の不足が深刻な問題です。この穴を埋められるのがRPAと考えられます。
海外諸国と比較しても、相当に深刻な人手不足に陥る可能性があり、官民ともにRPA導入で業務の省人化をはかり、リスクコントロールし始めたところです。
RPA市場規模の拡大は、社会的な要請が背景にあり、日本の場合は人手不足への備え、という側面が非常に強くなっています。
満足?幻滅?日本の企業ユーザーのRPA満足度と普及率は?
今後の国内RPA市場規模を占う上では、導入の満足度も重要な指標になると考えられます。
MM総研が2019年に行った市場調査によると、満足度は59%、楽になったと答えたユーザーは7割と非常に高い割合の満足度が見られます。
海外ユーザーよりもソフトウェアに対する満足度は、日本のユーザーの方が辛めの傾向がありますが、RPAツールの満足度は「健闘している」ということができるのではないでしょうか。
国内1112社を対象とした満足度調査では、「業務が楽になった」が約7割を占めたほか、「人手不足対策につながった」「残業等を削減できた」という回答も多く、従業員満足度の向上なども寄与しているとみられるとのことです。
自動化で時間削減効果・業務量の負担が軽くなる効果が実感しやすく、他のソフトウェアよりも満足度が高く出やすい要因があります。
また、2022年に同社が行った国内のRPA導入率の調査では、年商50億円以上の企業で45%、50億円未満の企業で12%、合計57%となっています。
また、検討中の企業は20%となっており、合わせると約8割の企業がRPAを導入中あるいは導入検討中であることがわかりました。
中小企業向け・低価格製品が普及しはじめてきたことから、中小企業を中心に普及率が進んでいくでしょう。
満足度・普及率から将来を読み解く
これらの調査の数字を踏まえて、普及率が今後どのくらい伸びるかは、見解が分かれるところだと思います。
ITR社の2020年の調査によると、RPAを導入した国内企業には「ロボットの運用・開発ができる人材が不足している」「現場の理解・協力が得られない」といった課題があることが見えてきました。
また、社内にRPAの専任組織があるかないかによって、導入効果に差がみられることもわかりました。
RPA製品は、シナリオを作って業務を自動化する「道具」という色彩が強いものです。
製品別の機能の差はそう大きくありません。製品の機能差よりも、それを扱う人材や運用体制が満足度に影響しているようです。
同調査で、RPAを導入済みの国内企業の82%が、社内でのロボットの利用をさらに拡大する予定だと回答しています。
RPAの導入に課題はあるものの、それを上回る効果をあげているということが読み取れます。
市場予測・中小企業向け製品は?
RPAツールは満足度が高く、普及率が57%程度だとすると、伸びしろがまだあるため、今後もまだ市場の拡大傾向が続くでしょう。
時々、大企業のRPAツール導入の動きは一巡したと言われるのですが、実際はまだ一部の業種に導入が偏っています。また、今後はさらに中小企業向け市場でも市場規模が拡大する見込みです。
より具体的には、中小企業向けの低価格RPAツールのより一層の普及や業種・業界に特化したRPAサービスの普及が考えられます。
「お役所ロボ」が市場をけん引
さらに日本市場では、官公庁・自治体にもRPAツールが急速に普及しています。
2018年度にはRPAを導入している都道府県は14しかありませんでしたが、3年後の2021年度には43都道府県まで導入が進みました。
市区町村でも導入予定・検討中を含み、約62%がRPAの導入に向けて取り組んでいます。
こうした動きは、市場規模の伸びを今後も長期にわたり下支えする要因となるでしょう。
拡大する高齢者人口向けのサービスの業務量が増えることが見込まれる地方自治体では、少ない労働力で業務を行う「スマート自治体」化が急務です。
RPAも手段として、総務省が主導して自治体への導入を推し進めてきました。
現在では、導入効果の事例も数多く報告されています。例えばコロナ特別給付金の配布に自治体が利用した事例・住民税のコンビニ出納集計事務などをRPAで進めている例など身近なところでロボットが活躍しています。
まとめ
企業の業務を自動化するRPAの国内市場規模は、2017年から成長率は鈍化がみられるものの、その後も成長を続け2023年には520億円規模になると予測されています。
企業にとって負担が大きく、また時間がかかる業務を自動化するRPAツールは、かつては大変高価なものとされてきましたが、現在では低価格帯のRPAツールも登場し、下がった価格分を上回る勢いでさらに成長を続けています。
日本では、民間企業だけでなく自治体にも浸透しつつあり成長を下支えしそうです。今後しばらく、国内外でこの傾向が続くものと見られます。