RPA(Robotics Process Automation)は、パソコンで行う作業を自動化するツールです。シナリオ(作業の流れ)を登録し、ロボットによって業務を代行してもらいます。
RPAには3つの種類があり、それぞれ異なる特徴があるため、ツール選びでは重要なポイントとなります。
そこでこの記事では、RPAの各種類とその特徴について、それぞれ詳しく解説していきます。
どの種類がどのような業務に適しているのかも解説しているので、RPAツールを選ぶときの比較検討にぜひお役立てください。
RPAツールの種類3つのとそれぞれの特徴
RPAの種類は、以下の3つに分けられます。
- サーバー型
- クラウド型
- デスクトップ型
上記のうち、サーバー型とデスクトップ型を「オンプレミス型(自社で機器やソフトウェアを保有する利用形態)」とまとめる場合もあります。
各種類の大まかな違いを一覧表で比較すると、次のようになります。
種類 | サーバー型 | クラウド型 | デスクトップ型 |
---|---|---|---|
仕組み | 自社サーバーでロボットを稼働 | ベンダー側のクラウドサーバーにアクセスして実行 | パソコンにソフトウェアをインストール |
費用 | 初期費用で数十万円、年間利用料で数百万円 | 月額数千円~ | 初期費用10万円程度~、月額料金5万円程度~ |
セキュリティ性 | 高 | 低 | 高 |
導入や管理の難易度 | 高 | 低 | 低 |
おすすめの運用規模 | 大企業 | 中小規模がメイン※個人や大企業もニーズを満たせる可能性あり | 個人レベル~小規模企業 |
次の項目から、種類ごとのさらに詳しい特徴を詳しく解説していきます。
①サーバー型RPA:自社サーバーでロボットを稼働
サーバー型は、自社で構築したサーバー内でロボットを稼働させるRPAの種類です。
処理できるデータが膨大で、複雑な業務の処理にも適しています。
具体的には、以下のような特徴があります。
- 膨大かつ複雑な処理を実行できる
- 社内の端末すべてで自動化業務を実行できる
- セキュリティ性が高い
- カスタマイズ性が高い
- コストが高い
- 導入から管理・運用まで手間がかかる
膨大かつ複雑な処理を実行できる
サーバー型は100体以上のロボットを作成し同時に稼働できるため、大規模・複雑な業務でもスムーズに実行できます。
大企業だと数千~数万の顧客や製品データを取り扱うことも珍しくありませんが、サーバー型はそれらの管理・分析やデータ加工が可能です。
また、部署をまたぐような業務にも対応できるため、大企業の基幹業務などにも適しています。
サーバーと接続した端末すべてで稼働できる
サーバー型は、サーバー側と接続している端末すべてでロボットを稼働させられます。
複数のライセンスを契約する必要がなく、全社横断で効率的な自動化が可能です。
また、サーバー側で各端末の業務を一括管理できるため、部署間の連携も容易になります。
セキュリティ性が高い
サーバー型は社内サーバー内で稼働するため、不正アクセスや情報漏えいのリスクが低くなります。
個人情報や機密情報を扱う業務でも安心して利用可能であり、金融や医療などセキュリティレベルが高い事業にも採用されています。
カスタマイズ性が高い
サーバー型は開発の自由度が高く、自社のニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできます。
独自システムとの連携や、企業の成長に合わせた機能の拡張など、自社独自のニーズに最適な業務の自動化を実現可能です。
コストが高い
サーバー型の大きなデメリットとして、他の種類と比べてコストが高くなります。
一般的な相場では、初期費用で数十万円、年間利用料で数百万円ほどかかるのが普通です。また、自社サーバーの構築やメンテナンスにも費用はかかります。
サーバー型を導入するときは、コストと業務効率化による利益を比較し、自社の規模に見合っているかを見極める必要があります。
導入から管理・運用まで手間がかかる
もう1つの注意点として、サーバー型は自動化までのハードルが他の種類より高く、メンテナンスも難しくなることも挙げられます。
導入から管理・運用まで専門知識が必要となり、高度な技術を持ったエンジニアの確保が必要なります。
②クラウド型RPA:クラウド上のRPAツールを利用
クラウド型は、ベンダーがクラウド上に用意したRPAツールをオンラインで利用する種類です。
中小企業向けが多いですが、ツールによっては個人レベルから大企業まで、さまざまなニーズに応えられます。
特徴としては、以下の項目が挙げられます。
- コストが安い
- 端末依存がない
- メンテナンスの手間がない
- 基本的に「Web上の業務」にしか対応できない
- セキュリティに不安がある
コストが安い
クラウド型のRPAは、コストの安さが大きなメリットです。
ツールにもよりますが、0円~30万円程度のイニシャルコストで利用できます。
ランニングコストも相場が低く、限定的な機能なら1アカウントにつき月額数千円で使える場合もあります。
端末依存がない
クラウド型はインターネットさえつながれば利用できるため特定の端末に依存せず、場所の制限もありません。
そのため、複数拠点やリモートワーク環境など多様な企業体制で活用できます。
メンテナンスの手間がない
クラウド型RPAのシステムはベンダー側のサーバーにあるため、クライアントにメンテナンスの手間はかかりません。
問題が発生すればベンダー側で対応にあたりますし、日々アップデートされるので常に最新の状態で利用可能です。
サーバー型のように専門のエンジニアがいなくても、手軽にRPAを導入できます。
基本的に「Web上の業務」にしか対応できない
クラウド型はWebベースの業務に特化しており、ローカル環境の作業は基本的に実行できません。
Excelなど一部業務はオフラインで実行できる場合もありますが、対応範囲としては他の種類より限定的です。
企業の独自システムとも連携できず、自社の環境によっては活用できない可能性があります。
セキュリティに不安がある
クラウド型はベンダー側のサーバーを使うため、セキュリティレベルもベンダーに左右されます。
また、データを逐一インターネットにアップする必要があるため、他の種類と比べて情報漏洩のリスクは高くなってしまいます。
そのため高いセキュリティレベルが要求される業務を自動化したい場合は、クラウド型を使わないほうが無難です。
③デスクトップ型RPA:端末にソフトウェアを直接インストール
デスクトップ型は、1端末につき1ライセンスでRPAソフトウェアをインストールする種類です。
Webブラウザ・ローカル問わず、個人のパソコンで可能な業務に対応できます。
具体的な特徴は以下の通りです。
- コストが安い
- 操作が簡単
- セキュリティ性が高い
- RPA稼働中の端末は別の作業をできない
- 端末のスペックに左右されやすい
コストが安い
デスクトップ型RPAの場合、初期費用は10万円程度~、月額料金は5万円程度~が相場となります。
先述したクラウド型と比べると若干高くなりますが、サーバー型と比べると安価で利用できるため、低コストでRPAを使いたい場合はおすすめです。
クラウド型と比べる場合も、導入規模などによってはデスクトップ型のほうが安く済む場合もあるため、選ぶときはツールごとの料金体系も確認しましょう。
操作が簡単
デスクトップ型RPAは操作が簡単で、直感的に業務の自動化ができます。
例えば、自動化したいパソコン操作を録画するだけで、その工程を自動化できるツールもあります。
プログラミングの知識が0でも扱えるため、専門的な技術者がいなくても導入可能です。
セキュリティ性が高い
デスクトップ型RPAはパソコン1台で独立して稼働するため、外部に情報が漏れにくくなります。
端末の管理権限を厳しくすれば、機密情報を扱う業務でも十分なセキュリティレベルを確保可能です。
ただし、特定の担当者のみに管理させるとRPA業務が属人化しやすくなります。マニュアルを作るなど、基本的な操作は共有するようにしましょう。
RPA稼働中の端末は別の作業をできない
デスクトップ型では、RPAの実行中そのパソコンが使えなくなるというデメリットがあります。
普段の業務でもそのパソコンを使う場合、人がやらなければいけない業務に支障を来たし、全体のスケジュールが遅れるかもしれません。
専用の端末を用意するなど、何らかの対策をしておきましょう。
端末のスペックに左右されやすい
デスクトップ型は、インストールしたパソコンのスペックによって動作に影響が受ける可能性があります。
必要なスペックがないと、RPAの動作が途中でストップしてしまうかもしれません。
安定した動作を確保するためには、ツールの推奨スペックを満たしたうえで、長時間稼働など端末に負担をかける使い方を避けるようにしましょう。
【業務ニーズ別】RPAツールの種類の選び方
「自社にとってどの種類のRPAが最適からわからない」というときは、以下の基準で選ぶことをおすすめします。
- 大規模展開や機密情報に関わる業務:サーバー型
- 段階的な自動化業務の拡大:クラウド型
- 小規模・個人レベルの作業効率化:デスクトップ型
具体的にどのような業務が当てはまるのか、詳しく解説します。
大規模展開や機密情報に関わる業務を自動化したい:サーバー型
サーバー型RPAは高い処理能力とセキュリティ性が魅力なので、「大量のデータを扱う業務」や「セキュリティの要求レベルが高い業務」に適しています。
例としては、次のようなケースが挙げられます。
- 大量のデータ集計・分析・加工
- 全社もしくは複数部署が関わる基幹業務
- 金融・保険・医療系の事業
高機能な反面コストも高い種類なので、大企業での導入におすすめです。
Webサービスとの連携を重視したい:クラウド型
クラウド型RPAは、クラウドサービスやビジネスアプリなどWebサービスを使った業務での使用がおすすめです。
具体的には、次のようなケースが当てはまります。
- 予約サイトやECサイトのデータ管理
- 勤怠管理・給与の自動計算
- クラウドを使ったビジネスツールの連携
先述の通りツールによって対応範囲はさまざまな種類なので、個人から大企業まで幅広く活用できます。
小規模・個人レベルの作業を効率化したい:デスクトップ型
デスクトップ型RPAはスモールスタートに適した種類なので、個人や一部署レベルの作業効率化に向いています。
例としては、以下のようなケースでの導入がおすすめです。
- 各種データの入力・転記
- 帳簿や定期レポートの作成
- メール処理
主に個人や中小企業向けのツールが多い一方、大企業でも部分的な活用やRPAの試験導入などに使われています。
記事まとめ
この記事で紹介したRPAの種類をまとめると、次のようになります。
- サーバー型:高コストだが大規模な運用に最適
- クラウド型:中小企業を中心に幅広い規模の業務に対応
- デスクトップ型:個人レベル・スモールスタートに向いている
種類ごとに適した業務や事業規模があるので、RPAツール選びの基準として重要な指標となります。
ただし、実際にRPAを導入するときは製品ごとの細かい違いも大切です。
種類も重要ですが、料金体系やサポート体制など、より細かい部分もチェックして自社に合ったツールを選びましょう。