働き方改革が施行され、新しい働き方が模索される中、業務の効率化と生産性を向上させるための手段として、RPA(Robotic Process Automation)を使用した自動化が注目を集めています。
言葉として聞いたことはあるけど「どんなことが出来るのか?」や「働き方改革とどう関係があるのか?」このような疑問をお持ちではありませんか。
今回の記事では、RPAと働き方改革の関係について解説しながら、おすすめの活用方法や成功事例をご紹介します。
働き方改革の一環としてRPAを活用することで、どのようなメリットが得られるのかに興味をお持ちの方は、最後まで見て頂ければ幸いです。
RPAとは
RPAとは、「ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)」を略した言葉で、RPAツールと呼ばれるソフトウェアを利用し、パソコン上で行っている業務を自動化する技術です。
以下のような業務にRPAを適用すると効果的に自動化することができます。
ルールが定義されている業務を自動化
RPAはルールが決まってる業務フローを正確に実行することに長けています。
多くのRPAツールでは「クリックしたい箇所」「値の入力箇所」などを住所のように記録する特性を備えているため、何度実行しても同じ手順で業務を実行することが可能です。
そういった特性から、ルールが定義されている業務であれば効果的にRPAを利用することができます。
その反面「処理ごとに手順が変わる」ような業務フローは、RPAに向いていません。
長時間かかる単純な繰り返し業務に最適
RPAは人が実施する業務時間よりもスピーディーに対応ができるため、長時間かかる単純な繰り返し業務を自動化することで、膨大な業務効率化を図ることができます。
また、人では「物理的に処理時間がかかりすぎて」実施出来ないような、何万件という繰り返し業務に対しても、RPAであれば素早く正確な対応が可能なため、生産性の向上に繋げることができます。
働き方改革との関係
RPAと働き方改革はどんな関係にあるのでしょうか。
「働き方改革とは何か」から、総務省が掲載している「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」の資料も用い解説をしていきます。
そもそも働き方改革とは
働き方改革は2019年4月より施行された法案で「労働力不足の解消」を目的としています。
そんな法案が施行された背景としては、少子高齢化による総人口・労働人口の減少があり、特に労働の主力となる15〜64歳の生産人口の減少ペースが著しいものがあります。
また、現在のままだと2050年の総人口は9000万人となり、生産年齢人口は5000万人前後になると考えられており、国の生産力の低下と国力の低下が避けられません。
そこで、日本政府が「一億総活躍社会」を掲げ、家庭・職場・地域などのさまざまな場面で、誰もが活躍する社会を目指すべく、働き方の改革に乗り出しました。
課題となっている労働力不足を解消するためには「出生率の向上」「女性や高齢者などの働き手を増やす」「労働生産性の向上」といった対策が必要です。
その中でも「労働生産性の向上」を実現するためにRPAは効果的で、人が実施している業務をロボットに置き換えることで生産性を向上させることが可能です。
その結果、空いたリソースを使い、より売上に繋がるコア業務へ注力することができます。
また、働き方改革の肝でもある「長時間労働の是正」についても、長時間かかっていた作業をRPAに置き換えることで、仕事と生活が調和するワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を実現することもできます。
総務省もRPAでの働き方改革(業務自動化による生産性向上)を推奨
総務省でも「働き方改革(業務自動化による生産性向上)」と題し、RPAを紹介しています。
その中からポイントを抜粋し解説すると以下の内容になります。
働き方改革が施行され、人手不足を補いながら生産効率を上げるために、さまざまな施策が講じられてきている中で、従来よりも生産性を高める手段としてRPAが注目されています。
2017年の調査によると、国内でRPA導入済みの企業が14.1%、導入中が6.3%、導入を検討中が19.1%と、導入が進んでいる状況です。
また、RPAの市場規模は2017年度が31億円、2021年度には100億円規模になると予測されています。
今後の展望として、これまでのような人間が実施している定型作業を置き換えるといったRPAの利用から「仮想知的労働者」として、より高度な作業を実施できるツールへと進化しているため、バックオフィス業務の1/3がRPAに置き換わることが予想されています。
このことから、働き方改革をきっかけにRPAに注目し導入している企業が多くあり、今後もRPA導入が進んでいくことが予想されます。
参考:総務省|情報通信統計データベース|RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)
おすすめの活用方法とポイント
RPAのおすすめな活用方法について、具体的な業務を挙げて解説します。
活用方法1:労務管理・勤怠管理業務
RPAは一定のルールが定義されている業務の自動化を得意としています。
そのため、作業手順が決まっており、繰り返しの作業が必要な労務管理や勤怠管理といった業務へのRPA適用が可能です。
通常、人の手で作業を実施する場合、労務管理システムへアクセスし対象者を検索、そこから勤怠のチェックを実施し、誤りがあれば対象者へ連絡するといったフローになります。
そうすると、確認対象者の人数によっては、膨大に時間がかかる作業になりますし、従業員の給料に関係する処理のため、ミスが許されないという精神的な負担もあります。
そんな業務にRPAを適用することで、労務管理システムへのアクセスから、対象者への連絡まで作業全体の自動化が可能なため、生産性の向上に繋がるのはもちろんのこと、精神的な負担の軽減にも繋げることが可能です。
活用方法2:請求書の発行業務
RPAは、何度実行しても「同じ品質」で稼働できるため、正確性が求められる業務や、繁忙期に業務量が増加するような業務はRPAの自動化に向いています。
例えば請求書の発行業務では、スピーディーかつ正確性のある作業が必須ですが、毎月月末近くになると繁忙期に入り、作業量が多くなることで長時間労働になったり、疲れから人的ミスを発生させるリスクも高くなります。
そこでRPAを導入すると、作業スピードが人よりも早くなり生産性の向上を図ることが可能です。
また、何時間稼働してもロボットはミスを発生させないため、人的ミスの低減や精神的な負荷の軽減に繋げることができます。
活用方法3:在庫管理業務
定期的に確認するスケジュールを設定しておけば、RPAで在庫管理業務を行うことができます。
在庫切れによる販売機会のロスや、過剰在庫をかかえることによる管理費の増大といった問題を起こさないためには、適切に在庫管理することが重要です。
そのためには、在庫の過不足を検知するフローが必要ですが、そのフローを人が実施すると他の業務もあるため、不定期になったり、高頻度の確認が負担になる可能性があります。
そこでRPAを活用すると、あらかじめ設定しておいたスケジュールで、専用の在庫管理システムにアクセスし、在庫数や出荷予定数など在庫に関する情報をまとめてメールで受け取ることも可能です。
そうすることで、在庫状況をリアルタイムにチェックでき、機会損失のリスクをカバーすることができます。
活用方法4:基幹システムへのデータ登録
企業で使用しているさまざまな基幹システムへのデータ登録作業は、RPAに向いています。
例えば、顧客情報の登録システムを運用している場合、顧客リストのExcelや名刺管理アプリケーションなど、複数のアプリケーションを使用して管理しているケースがあると思います。
そういった場合でも、RPAであれば各システムから必要な情報を取得し、データを纏め顧客管理システムへ登録することが可能です。
また、人が実施するときのリスクとして、入力間違いなどがありますが、RPAであれば正確に処理することができるため、入力間違いをすることはありません。
また、他アプリケーションから取得してきた情報に誤りがあった場合の対策として「入力エラー想定」をプログラムしておけば、想定される誤入力をエラーとして検知することもできます。
活用方法5:日次レポートなどの作成に関するデータ収集業務
RPAは、さまざまなアプリケーションやシステムを横断して、データの収集や転記作業を得意としているため、定期的に作業が必要なレポート作成業務への適用に向いています。
日次や月次レポートでは、報告に必要な実績データを収集する必要があるため、人が実施すると煩雑な作業となりますが、RPAで自動化することで素早く正確に対応することが可能です。
RPAでの働き方改革に成功した事例3選!
RPAを活用し働き方改革に成功した事例について3つ挙げ、具体的に解説をします。
事例1:商品情報をWEBに掲載する業務の自動化
毎月月初に、数百件もの商品登録作業が発生し、商品の登録完了までに1週間以上かかっていました。
そこで、RPAを導入し商品の登録元情報が記載されているExcelファイルから情報の取得と、Webサイトへのログイン、商品情報の登録といった作業の自動化を実施。
その結果、作業時間が1日に短縮され商品公開までのスピードが大幅にアップしたことや、付随する業務もスムーズに行えるようになりました。
事例2:資材関連の単価マスタを改訂する業務の自動化
担当者は、単価情報を確認し資材情報システムに登録されている単価マスタの変更判断を実施し、改定が必要だと判断した品目については資材情報システムへ手作業にて入力を実施。
しかし、数百件以上のデータを手入力していたことや、誤入力の影響を考え入力後は単価情報の全件チェックを実施していたため、作業には長時間を要し休日出勤も余儀なくされていました。
そこで、RPAを導入することにより、改定判断については人が実施しますが、その後の入力作業からチェックまでは自動化することができたため、ヒューマンエラーがなくなり担当者の負担を大幅に軽減することができました。
事例3:収支資料の作成と配信業務の自動化
担当者は収支資料を作成するために、業務システムから収支情報をダウンロードし、用意していたエクセルファイルへデータを転記、資料作成後は対象者へメール送信を実施。
しかし、業務システムから収支データをダウンロードするのに、長時間かかっていたため、長時間拘束されてしまうことや、収支資料作成に関する精神的な負担が課題となっていた。
そこで、作業をRPAで自動化することによって、年間130時間のリソースが創出され、長時間労働の抑制や正確性が増したことで、ミスが業務の削減され業務の効率化に繋がっています。
記事まとめ
この記事では、おすすめの活用方法や導入事例などを交えて、RPAがどのように働き方改革を推進し、業務における生産性と業務効率の向上に寄与しているかについて解説をしました。
RPAを活用することで、従業員は本来のクリエイティブで高度な業務に専念でき、単純かつ時間のかかる作業から解放されます。
また、働き方改革の一環として、RPAは労働時間の効率的な利用を可能にし、従業員のワークライフバランスの向上にも貢献します。
そして今後もテクノロジーは進化を続けることが予想されますので、例えばAIが発達することで今は人が実施している業務フローの見直しから自動化され、より簡単に自動化が実現できる可能性もあります。
さまざまな可能性があるRPAですが、導入に迷われている方がいましたら、今回の記事で解説した活用方法や導入事例ををチェックいただき、検討の一助にして頂ければ幸いです。