
RPAで現場の手間を着実に削減中
情報システム課が進める自動化の第一歩

MICHIRU RPAを知ったきっかけを教えてください
現在、当院ではITツールを活用して業務を効率化していこうという取り組みが全体で進められており、その一環として院内で「医療DX検討委員会」も立ち上がりました。
そうした中でRPAの導入を検討していたところ、知り合いの方から「熊本だったらMICHIRUさんがいいんじゃないか」と紹介を受けたのが、導入のきっかけです。
RPA製品について他社との比較検討はしておらず、最も大きな決め手は月額費用が安価だったことでした。
また、トライアル期間中に実際の業務でRPAを使った検証まで行うことができたのも大きかったです。
最初は操作方法などが難しく感じられましたが、レクチャーを受けながら使い方を学ぶうちに、自動操作セットの作成ができるようになり、実用レベルで業務に使用できると判断しました。

左:里川様 右:白石様
現在稼働している自動操作セットの数と削減できた時間を教えてください
現在、9個の自動操作セットが稼働しており、月間でおよそ160時間の業務時間を削減できている計算です。
これらの自動操作セットは、各部署の業務をヒアリングしたうえでシステム課が作成したもので、主に毎日発生する手動による集計や資料作成といった集計業務が中心です。
これまでは、それぞれの作業に毎回手間がかかり、時間のロスや集計ミスのリスクが課題となっていました。
1回あたりの作業時間は10分から15分程度ですが、毎日繰り返されることで負担が大きく、積み重ねると結果的に多くの時間を消費していました。
現在は、そうした作業がRPAで自動化されたことで、業務負担の軽減にもつながっており、日時を指定して自動実行することで、朝には必要な資料がすでに作成されている運用が実現できています。
<自動化した主な集計業務>
- ・受持患者数 実績報告資料作成
- ・入院患者の発熱・排便状況確認
- ・薬の処方切れ確認と通知
- ・看護必要度算出と分析
- ・放射線部 撮影件数のカウント
集計業務について詳しく教えてください
たとえば、毎朝の院内会議で使用する「受持患者数の報告資料」は、外来患者数や入退院状況、ドクターごとの予約数などをまとめたもので、以前はシステム課が毎日15分ほどかけて手作業で作成していました。この資料もRPAによって自動生成されるようになりました。
また、看護部からの依頼で、入院患者の体温や排便状況を毎日チェックしていた業務も自動化しました。
以前は看護師が電子カルテを一人ずつ確認していましたが、今ではRPAが情報を取得し、PDF形式で一覧化された資料を生成するため、ひと目で確認できるようになっています。
さらに、入院患者の薬の処方切れを確認してドクターに伝えていた作業も、看護部と薬剤部の双方で自動化を実施。
患者ごとの処方状況を一覧にまとめた資料を自動生成することで、確認作業が格段に効率化されました。
これらの業務はいずれも、まず電子カルテから必要なデータを抽出し、それをもとにExcelマクロを用いて集計や資料化を行っています。
作成された資料は、院内サイトや共有フォルダなどに自動で格納されるように設定しており、職員がすぐに参照できる運用になっています。


必要な資料に院内サイトからすぐアクセス可能
自動操作セットの作成にあたって工夫や苦労した点はありますか?
まず、RPAだけで完結させるのではなく、自分たちで作成したExcelマクロと組み合わせて運用している点がひとつの工夫です。
RPAがデータ出力やファイル操作を担当し、その後の集計・加工をExcelマクロで自動化することで、より安定した運用が実現できています。
自動操作セットを作成する際には、まず各部署から「こういう資料が欲しい」「この作業を自動化できないか」といった相談を受け、システム課側で必要なデータやテンプレートの形式、最終的にどのような資料として出力するのかを部署とすり合わせながら進めました。
そのため、RPAで自動化するにあたり必要となるExcelマクロやテンプレートの新規作成、処理の最適なフロー設計なども、一から考えて構築しています。
また、最初のころはRPAの動作エラーが頻発し、安定化に苦労した場面もありました。
さらに、各部署との連携においても、最終的なアウトプットのイメージにズレがあると何度も修正が発生し、 認識を合わせていくプロセスにも時間を要しました。
加えて、導入初期にはRPAそのものがどういったものなのかイメージしてもらいにくかったため、実際にRPAが動いている様子を録画して、それを見てもらうことで理解を深めてもらうといった工夫もしました。

自動操作セットの作成は主に白石様が担当
RPAの運用について 今後チャレンジしたいこと・解消したい課題を教えてください
私たちとしては、ようやくスタートラインに立てたという感覚です。
病院全体でDXを進めていく中で、まずその第一歩として、RPAを活用した業務の自動化に取り組み始めることができました。
現時点では、RPAを導入していることをすべての職員が把握しているわけではなく、主に役職者がRPAによって作成された資料を確認・活用している状況です。
今後は、より多くの部署や職種にもRPAの存在を知ってもらい、業務に活かしてもらえるように広げていきたいと考えています。
他の医療機関へのアドバイスとしてお伝えしたいのは、「考えなくてもできる単純作業」は迷わず自動化すべき、ということです。
人手が限られる中で効率化を図るには、まずはそうした作業から着手するのが現実的ですし、確実に負担軽減につながります。
RPA製品の中には「誰でも簡単に作れる」と紹介されているものもありますが、実際に現場で運用していくには、処理の流れを安定化させるためのフロー設計や、元データの整備、マクロ作成など、一定の準備や知識が求められると感じています。
特に医療機関の情報システム担当者は、ネットワークや保守が主な業務であり、開発スキルを持った人材が少ないことも多いと思います。
RPAを現場で安定的に運用していくには、状況に応じた処理の組み立てや、必要なデータの準備など、ある程度の工夫や知識が求められる場面もあるのが現実だと思います。
現在、操作セットの作成はすべてシステム課が担っており、日常業務の合間を縫って少しずつ対応しているのが実情です。
現場からの相談や要望に対して、必要な情報をすり合わせながら、自動化できそうな作業を一つひとつ形にしています。
人員に限りがある中でも、10個、20個と操作セットを増やしていければ、より多くの業務で効果を発揮できると考えています。
少しでも現場の負担を減らせるように、これからも自動化の取り組みを進めていきたいと思っています。