RPAに業務を代替させるため、シナリオを設定し、保守・あるいはツールのカスタマイズを行うRPAエンジニアは、すでに求人市場で高い需要があります。
今後も求人需要が高まることが見込まれていますが、どうすればRPAエンジニアになれるのか、どんな仕事をするのか、どんなスキルが必要か、年収はどれくらいなのかについても解説します。今後のキャリアアップの指針としてご利用ください。
株式会社MICHIRU 取締役 CTO
この記事の監修担当者:
斎藤暁
医療施設法人やホンダ子会社のIT領域責任者などを経て独立。AI技術やシミュレータなど、複雑なアルゴリズムを駆使したシステムを提供している。自然言語処理によるシステムの技術は日米で特許を取得、その発明者でもある。2018年11月株式会社MICHIRUを創業。
Contents
RPAエンジニアの需要は?

概況からすると、RPAエンジニアは、導入企業側・サービスまたはプロダクトのベンダー、それぞれに求人が活況です。
開発・運用・導入支援などでは導入企業側に、開発基盤の整備やサービス・プロダクト開発では、ベンダー側の求人需要があります。
正社員だけでなく、フリーランスエンジニア・契約社員・派遣職員など、雇用形態を問わず、全国各地で求人需要が増えています。
最近、特徴的なのは、エンジニアとして未経験であっても、導入企業での要件定義・シナリオ作成の経験や情シスプロジェクトでのPMO経験などがあると、エンジニアとしての転職も可能な求人市場の情勢であることです。
また、エンジニアによるコンサルティングの需要も高くなっています。
RPAに関するスキルがあると、就職・転職を有利に展開できる可能性が高いと考えられるのです。
仕事内容は?
RPAエンジニアは、以下のような仕事を行います。
- 開発…要件定義に基づいた開発・導入
- 運用保守…運用管理、効率化に向けた改善等の保守対応
- 導入支援…業務内容をヒアリング・分析した上での要件定義
- 基盤整備…開発パフォーマンスの向上に向けた開発基盤の整備
- サービス開発…プロダクト/技術検証を通したサービス開発
RPAエンジニアは、主に導入企業においては開発、保守・運用の3つの役割があり、担当する業務によって必要なスキルや仕事の内容に差があります。
また、RPAベンダーやサービスプロバイダーにおいては、開発・保守運用に加え、基盤整備やサービス開発の業務があり、求められるスキルが導入企業でのそれと若干違います。
導入・活用についてアドバイスをするコンサルタントもRPAエンジニアの仕事の一つです。
コンサルタントには、コンサルタント会社・ベンダー・サービスプロバイダでの職務があります。
しかし、業務内容のヒアリングや、要件定義での役割などを考えると、エンジニアとコンサルタントの差が大きくはなく、エンジニアもコンサルタントとして活躍することが可能で、逆も同様と考えられます。
開発・ロボットやシナリオの設計および構築

RPA開発をツール使用して、ロボットやシナリオの設計および構築をするエンジニアの仕事があります。
設計・構築に、プログラミングおよびシステム開発の知見を利用するかどうかは、採用するRPAツールによっても少し差があります。
しかし、最低でもプログラミングの考え方をつかって設計・構築を運用を見越して行うと、バグや、結果として得られる成果にエラーが少なくなります。
現在の開発の仕事では、RPAの導入の初期に生じていた設計・構築の不具合からくるトラブルを修正するために、シナリオを再度作成するなどの改修業務を含めて、業務量が多くなっているところです。
構築したロボットやシナリオの保守・運用
RPAの運用上では、ロボットやシナリオの保守・運用のスキルは重視されます。
NTTデータのRPA技術者検定では、運用中に生じやすいエラーの解消・シナリオのバグフィックスなどの保守に関する知識・操作が中級資格で問われますが、実務で頻出するトラブルシューティング技術としても非常に重要なポイントを問うようです。
エラーに関する修正の方法を知り、不具合が出た場合の対処を正しく行うことができることは、システム開発スキルほどではありませんが、高く評価されます。
これらに対処できるエンジニアがいなければ、現場の業務はストップしてしまうためです。
シナリオの修正・トラブルシューティングに強いRPAエンジニアは社内でも社外からのサポートでも高く評価されます。
さらに、保守・運用にともない、ユーザーマニュアルなどの文書作成もや、ユーザー教育に対応することもあります。
RPAコンサルタントはエンジニアとどう違う?

RPAコンサルタントも、RPAエンジニアの仕事と考えられます。
クライアントやプロジェクトの規模によっては、RPAエンジニアとRPAコンサルが別の場合と、兼務している場合がありますので、エンジニアとコンサルタントの壁は厚くはありません。
つまり、要求されるスキルと、仕事内容が現在のところエンジニアというか、コンサルタントというかはあくまでもどのフェーズを担当するかの違い、といった様相なのです。
コンサルタントは業務担当者・部長以上の上層部双方にアプローチします。
まず、現場担当者にヒアリングし、RPA化できる業務を抽出して提案します。
また、業務改善・経営課題を上層部を巻き込み、十分聞き出し、解決のためRPAの利活用あるいは運用についての提案を行うことも含まれます。
RPAツールは生産性や、収益性・労務問題などの経営課題を解決するものだからです。
一方、エンジニアが担当するのは、クライアントの課題を正確に把握し、技術で表現するにはどうするか、コミュニケーション能力と、技術的知見を使える業務です。
フェーズでいうと初期がコンサルタント、実行フェーズでエンジニアが活躍することとなります。
RPAエンジニアに必要な知識・スキルとは?
RPAエンジニアとして、必要なスキルはエンジニアとしてのスキルが主ですが、さらに業務に関する知識ないし業務改善に関する知識があるほうが望ましいと考えられます。
システム開発の経験は大きな強み
RPAエンジニアとして、システム開発経験は非常に有利といえます。
開発工程のなかで、仕様を固める=>開発を行う=>テスト工程を行う=>本運用と進める工程のありようについて理解していることはそれ自体強みです。
また、開発プロジェクトで生じがちなトラブルや課題の解決の仕方が一通りわかっていることはキャリア全体を通じて、大きなプラスになるスキルです。
特にJavaやPythonによるシステム開発の経験は非常に強く働きますが、それがないからといって、RPAエンジニアができないということではありません。
以下にご紹介しているスキルを揃えることができると、RPAエンジニアへの案件参画においては有利になるでしょう。
他にも、例えば情報システム部で案件のコーディネーター役やPMOなどでプロジェクトに参画していた経験がある場合でも、RPAエンジニアデビューがスムーズなものとなるといえます。
Access・Excel VBAなどの経験

Access・Excel VBAなどの業務経験があると、求人案件の要求事項に合うことが多くなります。
Accessは多くのデータをデータベースに整理・スムーズに呼び出す作用がありますが、Accessの仕組みを知っていると、Access ベースで作られたシステムのRPAでの処理が把握しすいため有利です。
また、Excelについては、Excelでデータをまとめていることや、Excelベースで書かれた書式の処理なども管理部門の業務には多くあります。
これもExcelVBAによる数字の置換などの実際の業務での処理をよく知っていることがRPAシナリオの作成に生きるためです。
BI・R言語などの知識・経験も、今後は大いに役に立つ
どの仕事の分野でもデータ活用が進む今後を考えると、データ分析ツールとRPAの組み合わせによるソリューションも増えてきます。
データ分析ツールと、RPAツールとはどのように組み合わせるか、使い方はどのようにするか、理解して実行できるスキルが求められます。
そのため、BIツールの経験がある・R言語を理解しているなどの要素は、今後の活躍にプラスになります。シナリオ開発にも、また、ソリューションの開発にも双方に役に立つでしょう。
RPAツールの経験・検定合格など
RPAツールについて知識・経験があると、RPAエンジニアとして就職・転職に有利になります。
ただし、これはベンダーサイドでも、ユーザーサイドでも知識・経験は活かすことができます。
UiPath・WinActor・BizRobo!・Automation Anywhere などの主要製品の経験・知識はプラスに働きます。
これに加えて、トレーニング修了や、検定(例えば、NTTデータのWinActor を使ったRPA技術者検定)などに合格しておくと、その力の証明になります。
RPAエンジニアのツールの知識・経験が重要視される背景には、RPAの技術的な知識よりも、ユーザーの要望を正確にくみ取るコミュニケーションスキルを重視されることや、トラブルの概要を知っており、危機管理ができると考えられるためです。
その意味では、若干RPAの技術面での知識・スキルに不安があっても、他の技術的な知識・スキルで補うことが可能ともいえます。
ビジネススキル・ソフトスキルはどれくらい必要?
RPAは業務改善を目的に導入するため、ビジネススキルがあまりにもない、という状態では、ユーザーの要望を技術の面ではくみ取れても、何が目的なのかわからず、ユーザーとエンジニアのミスマッチを起こしてしまうことがあります。
ビジネススキルとしては、各会社における業務を正確に理解しておく必要まではありませんが、各部の働きを理解する力・ユーザーの要望を聞く力、それに足りるだけの業務に関する基礎用語の知識などが求められます。
これからRPAエンジニアとしてのスキルを伸ばそうとしている方、特にITサポートなどに在籍している方は、絶好のスキルアップの機会と考えて、ビジネスサイドの使っている用語や、あるいは経理の基礎知識などは勉強しておくと非常に役に立つと考えられます。
また、技術情報・新しい製品情報など、技術系の情報キャッチアップ力はビジネススキルとして、社外社内の動向をつかみ、課題解決のため重要な力になります。
好奇心旺盛に、何にでも関心を持って情報をとりあえず収取してみるというスタンスはRPAエンジニアにも重要と考えられます。
RPAエンジニアの将来性とは?

RPAエンジニアは将来性のある仕事です。
働き方改革や、総務省の「スマート自治体」構想でも意識されているように、日本の少子高齢化の進行は急激であり、足りない若年労働者をRPAなどの自動化ツールで補う必要があります。
RPAだけでなく、AIのエンジニアにも注目が集まっていますが、今後のエンジニアのキーワードは「自動化」と言っても過言ではありません。
そのため、国内のRPA市場は22年までには400億円市場となることが予想されています。またそれくらいに市場規模を拡大しないと、少ない労働力で、日本の生産性を維持するのは難しいでしょう。
世界に目を移すと、2025年には1億人のホワイトカラーがRPAに置き換えられるとされ、20年後には47%の雇用が自動化および機械化されると予想されているのです。
世界でも市場規模は大きくなる傾向が続き、RPA市場は、高い将来性を持つ市場となる見通しです。
若手や未経験者にもチャンスは大きい
世界全体でみても、需要と将来性、導入企業の数は、今後も右肩上がりと考えられ、求人数・年収も比例して多くなっていくものと考えられます。
このことから、若手で少しRPAプロジェクトの経験が不足している、RPAプロジェクトは未経験者である、と心配するよりも、経験を少しでも積んでおくことが将来にとって重要と考えられます。
若手が将来を考えるのであれば、RPAに強いエンジニアになるにはどうすればよいのかをキャリア戦略として考えておくことが有益です。
RPAについて、現在未経験であってもエンジニアが学習・検定試験チャレンジによりスキルをつけること、RPAプロジェクトに参画することなどにより、未経験からでもRPAに強いエンジニアにキャリアストレッチすることは可能です。
年収は?
最後に、現在のRPAエンジニアの年収相場と、どんな要因でさらに上を目指せるか、まとめてみました。
RPAエンジニアの年収は正社員の場合、400万円~600万円がボリュームゾーンです。そのあたりが相場と考えてよいでしょう。
これに対して、フリーランスエンジニアの場合、100万円の月単価を付ける案件も少なくありません。
月当たり50万円から80万円ほどが月単価のボリュームゾーンで、年収相場にすると、600万円台~900万円台が相場と考えられます。
フリーランスエンジニアのほうが、ボリュームゾーンに金額の幅があります。
特に、上流工程の経験・PM経験・コンサルタント経験者に対しては、月単価が高い傾向があります。
これらの経験は、経験が買われるので、年齢の制限などもあまり目立ちません。
なお、求人ボックスの調査によると、RPAエンジニアの平均年収は500万円ほど、都道府県別では東京の年収が高く、一番年収の低かった北海道とは130万円ほど差がついています。
以上を総合すると、正社員の平均年収よりは高めなのがRPAエンジニアの年収であり、地域・正社員・フリーランスの別、および経験・上流工程を担当できるかどうかにより年収にはかなり差がついてくると考えられます。
まとめ
以上に見た通り、RPAエンジニアは、将来の少子高齢化のさらなる進行に合わせて需要がさらに拡大することが見込まれ、将来性のある仕事です。
求人数・給与水準も上がっていますが、経験が買われる傾向にあること、参入障壁も薄めと考えられることがポイントです。
社内プロジェクトから積極的にチャレンジし、自分のキャリアプランの一つのオプションとして考えられるようにしていきましょう。