RPAは「ロボティック・プロセス・オートメーション」の略で、少子高齢化による労働力不足といった社会的な背景から、注目されているテクノロジーの一つです。
RPAを導入することにより、手作業で実施している業務が自動化され、業務処理スピードの向上やコスト削減などを実現することが可能です。
しかし、「簡単に導入できる」「導入すれば業務が楽になる」といったイメージが先行してしまい、具体的に「どんな業務を自動化できるのか」について、把握しきれない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、RPA化できる業務例について一般的な業務と、部門別の業務に分けて解説していきます。
他にも、RPA化できる業務の見分け方なども解説していますので、最後までご覧いただけますと幸いです。
RPA化できる業務の具体例15選
RPA化できる業務は多岐に渡るため、さまざまな業務に適用されています。
ここでは、RPA化に向いている業務を「一般的な業務」と「部門別の業務」に分けて解説します。
一般的な業務事例
どんな部門でも実施しているような一般的な業務の中で、RPA化できる業務を紹介します。
データ入力作業
デジタルなデータの入力、更新、変更といった業務はRPAが得意とする分野の1つです。
今までは手作業で行っていたシステムへの顧客情報登録といった入力作業を、RPA化することで効果的な工数削減を実現することができます。
また、デジタルではない紙媒体でも、AI-OCRの技術を組み合わせることにより、より効果的な自動化が可能になります。
AI-OCR | AI-OCRとは、OCR(Optical Character Recognition)と呼ばれる光学文字認識技術に、AI(人工知能)のテクノロジーを融合させた最先端のOCR技術のことです。 AI技術を組み合わせることで、文字認識精度やレイアウト解析精度などが大幅に向上しています。 |
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日報などのレポート作成
日次や月次などで提出するレポート作成は、RPA化できる業務です。
RPAはさまざまなシステムとの連携が可能なため、レポート作成に必要なインプットデータを基幹システムから取得し、その情報を整理してレポートファイルへの書き込み、Outlookなどを利用した報告メール送信まで、一連の業務フローをRPA化することが可能です。
インターネットからの情報取得
自社サイトの口コミ数や、株価の変動指数収集など、インターネットサイトを活用したデータ収集業務もRPA化できます。
データを収集するためのチェックポイントをRPAに登録しておくことで、データ収集が可能になりますし、メールやチャットを利用した関係者への情報展開も可能です。
基幹システムからのデータ出力
顧客情報などを管理している基幹システムから、条件を設定し必要なデータを出力するような業務は、RPA化に向いています。
RPA化すれば素早く正確に作業することが可能になるため、人が作業している時は発生しがちな、データの出力漏れなど「ヒューマンエラーが発生しない」ため、業務品質の向上にも繋げることが可能になります。
Excelソフトを使用した業務
多くの企業で使用されているExcelファイルを使った作業も、RPA化できる業務です。
システムから出力したデータの書き込みや、Excelファイル間のデータ転記など、RPA化することで面倒な作業をすべて自動化することができます。
メールの自動送信
全社共有やチーム間共有など、宛先の指定から件名や本文まで一定のルールで運用している業務であれば、RPA化し置き換えることができます。
RPA化することで、宛先の選択や本文の誤字チェックなど二重確認にかかっていた多くの工数を削減し、業務効率化へと繋げることができます。
ファイルサーバー上のファイル移動・コピー・削除
ファイルの格納先としてファイルサーバーを使っている企業が多いと思いますが、そのファイルサーバー上でのファイル移動や削除などの作業はRPA化に適しています。
処理完了したファイルはoldフォルダに移動したり、必要なファイルをパソコンにダウンロードしたりなど、手間のかかる作業を自動化することが可能になります。
交通費の申請
個人の交通費を交通費精算用のアプリケーションに入力し申請する業務は、RPA化に向いています。
個人申請が必要な交通費精算などを自動化することで、ミスのない正確な申請ができるため、申請者の負担軽減だけではなく「後続の処理を実施する対応者」の負担を軽減する効果もあります。
ToDoリストの対応漏れ検知
ToDoリストを使用し自身の課題を管理している場合、RPA化することで対応漏れがないかの確認や、対応漏れに対し通知でお知らせすることが可能になります。
定期的にToDoリストの締め切り日を確認する仕組みをRPAにて構築しておくことで、自動的に指定した宛先へ検知メールを送信することができます。
人事部門関連
次に人事部門で実施している業務の中で、RPA化できる業務を紹介します。
勤怠集計・通知
勤怠管理システムに登録された社員の勤怠情報の集計や、残業超過状況のチェックといった業務をRPA化することで自動化できます。
また、RPA化することで、これまでは難しかった社員1人ごとの「手厚い労働管理」が可能になるため、ワークライフバランスの改善などに効果があります。
有給取得状況などの労務管理
上記と同じく、有給取得状況などのチェックを行う労務管理に関わる作業も、RPA化できる業務です。
勤怠管理システムとRPAを連携させることで、各社員の有給休暇消化率のチェックや、過重労働を行っている社員へのアラートを自動通知することも可能になります。
経理部門関連
続いて、経理部門で実施している業務の中で、RPA化できる業務を紹介します。
請求書の作成・発行業務
請求書の作成・発行業務については、決まったフォーマットに対しデータを入力していく業務になるため、RPA化に向いています。
また、請求書関連の業務については、金銭に関わる業務になるため、担当者の心理的負担が多い業務になりますが、自動化されることで負担軽減に繋がるという副次的な効果もあります。
納品書などのデータ入力業務
納品書データの入力業務について、決まった納品書フォーマットからデータを抽出し、入力するような業務になるため、RPA化に向いています。
また、納品書の中にはデジタルではない紙帳票が含まれている場合、AI-OCRと組み合わせることで、より効率的に業務を自動化することが可能になります。
営業部門関連
最後に、営業部門で実施している業務の中で、RPA化できる業務を紹介します。
見積書作成業務
毎月同じ内容を記述する見積書であれば、RPA化することが可能です。
見積書の作成はもちろんですが、作成後の取引先へのメール送信や、見積書ファイルの社内保管フォルダへのデータ保存まで一連の作業を自動化することで、迅速に処理が行え品質向上に繋げることもできます。
受発注の管理業務
受発注システムや在庫管理システムなど、複数のシステムやアプリにまたがることが多い受発注業務は、RPA化することで効率化が図れます。
手作業の場合、各システムに手作業でログインし、在庫状況などを確認し受発注業務を行うため、大幅に工数が掛かりますが、RPAに条件を設定してしまえば一連の業務を自動化することが可能です。
RPA化できる業務の見分け方
ここまで、さまざまなRPA化ができる業務について紹介してきましたが、具体的にはどのようにRPA化の可否を見極めれば良いのでしょうか。
RPA化できる業務の主な見分け方について、3点挙げて解説します。
判断が不要な単純作業
作業手順が一定のルールに則って実施されている単純作業は、RPA化するときに必要な「RPAシナリオ」の作成が容易なため、自動化に向いています。
また、自動化したい作業が単純であれば「作業が自動化されるまでの期間」が短縮され、素早く効果を感じることが可能です。
PAシナリオについては、以下の記事で詳しく解説しています。
定期的に行われる反復業務
日次や月次などで定期的に行われる、売上計上やレポート作成といった業務もRPA化に向いています。
定期的に行われるといった側面から、決まった手順やフォーマットに対する業務になるため、一定のルールに則った作業の自動化に向いています。
また、定期的に繰り返される反復業務のため、単発の削減効果ではなく「継続して効果を得続けること」が可能になります。
大量のデータ処理が発生する業務対応
手作業では難しかった大量のデータを使用した業務も、RPAであれば迅速に処理することが可能です。
人が大量のデータを処理する場合は、物理的に現実的ではないケースや、疲れや慣れからヒューマンエラーが発生してしまうケースもあります。
しかし、RPA化すると正確かつスピーディーに処理が可能になるため、業務品質の向上だけではなく、ビッグデータを活用した業務分析も可能になるため、市場競争力の向上にも繋げることが可能です。
パソコン内で完結するデータ処理
RPA製品は、基本的にパソコンにインストールされたソフトウェアなため、パソコン内で完結する業務の自動化に適しています。
例えば、業務フロー内に「出力したデータを印刷し、その印刷された紙を使って…」のように、印刷された紙を使用する部分はパソコン内で完結していないため、業務のRPA化には適していないため注意が必要です。
次の記事では、ツールの選び方やRPA比較表を紹介
今回は、RPA化できる業務や、どんな業務が自動化できるのかの見分け方について解説をしました。
RPAは、少子高齢化による労働力不足といった課題を解決する有効な手段の一つです。
今回の記事を参考に自社の業務を洗い出し、RPA化できるものはないか検討いただければ幸いです。
また、RPAは製品によって、業務全般に適用できる製品や、経理業務に特化している製品など市場のニーズに合わせて、さまざまな製品がリリースされています。
そのため、RPA製品を選ぶときは「自社の業務プロセスに合った機能が備わっているか」などの検討が必要不可欠です。
以下の記事に、RPAツールの選ぶ時のポイントや、人気のRPA製品についてまとめていますので、ぜひ興味のある方はご覧ください。