RPAはパソコンで行う定型作業や単純作業といった「人の手で行ってきた業務」を自動化できるため、業務効率化のツールとして注目されています。
現在では、さまざまな業界の企業がRPAを導入し、ホワイトカラー業務やバックオフィス業務と呼ばれる業務を自動化し「効果的に生産性を向上」させることに成功しています。
しかし、RPAに馴染みがない方にとっては「RPAの活用方法が分からない」など導入することによるメリットを、イメージしづらいのではないでしょうか。
そこで、今回は多くのホワイトカラー業務を抱えている人事部門に焦点をあて、RPAを導入するメリットから、自動化できる業務例などを解説していきます。
また、導入に成功した事例についても紹介していますので、RPA導入の一助になれば幸いです。
人事部門における課題
まずは、人事部門における課題について整理すると、主に以下の課題が挙げられます。
- 人手が不足している
- 事務作業が多く工数がかかっている
- テレワークなど新たな働き方に対応しにくい
- 業務が多岐にわたるため人材の育成がむずかしい
現在、人事部門は採用や労務だけでなく、総務・経理といった業務を幅広くカバーしており、その作業の8割が事務作業といわれています。
そのため、どれだけの熟練者であっても物理的に手を動かすスピードには限界があり「大量の単純作業」「毎日実施している定型業務」「繁忙期におとずれる突発的な業務」といった業務にリソースを割かざるを得ない状況です。
その結果「本来時間をかけて実施すべき業務」に対してリソースを割くことができず、市場での競争優位性が下がってしまう可能性があります。
また、近年では労働力が減少傾向や働き方改革の導入、2020年に発生した新型コロナウイルスの流行により、企業は労働環境の改善が求められるため、労働力の確保や業務の効率化については急務と言える状況にあります。
RPAを人事部門に導入するメリット
RPAを人事部門に導入し自動化するメリットは、主に以下の3つが挙げられます。
労働人材不足の解消
日本では、少子高齢化などが原因で「生産年齢人口」に該当する15歳から64歳の人口が減少しています。
引き続き減少傾向にあるため、労働力不足に関する問題については、どの企業も対応すべき課題となっています。
そこでRPAを導入すると、今までは人が実施していたパソコンを使った「定型業務」や「事務作業」を人の代わりに自動で行ってくれます。
また、人が実施しなくても問題ない単純作業などはRPAに任せることで、限りある人材は付加価値の高い業務に対しリソースを集中できるため、人事部門全体の生産性を向上させることも可能です。
ヒューマンエラーの防止
RPAが得意としているのは、決められたルールに従って行う業務の自動化です。
人がそんな作業を実施しているときは「疲れ」や「慣れ」といったことが要因で、ヒューマンエラーが発生してしまう可能性があります。
しかしRPAを導入すれば、どれだけ作業しても自動で正確に対応ができるので、ヒューマンエラーの要因となる事象については発生しません。
その結果、ミスを防止することが可能になります。
また、副次的な効果としてはヒューマンエラーが発生した時の原因分析や対策立案といった工数も削減することができるため、より効率的に業務を進めることができます。
コストの削減
RPAはソフトウェアですので、人のように時間に縛られることなく「24時間365日」作業を実施することができます。
今までは作業が間に合わず休日出勤や残業で対応していたような業務も、RPAを導入し任せることで業務負担が軽減されるため、生産性の向上に繋がることはもちろんのこと、残業代を支払うことも減ります。
また、繁忙期には一時的な労働力の確保として、人材派遣会社などからサポートや支援を受けていたと思いますが、定型業務はRPAに任せることができるため、コスト削減につなげることができます。
RPAで自動化できる人事部門の業務例
RPAが得意としている業務は「ルールが定義されいてる業務」や「大量の繰り返しが必要な業務」などです。
膨大な事務作業が発生する人事部門とは相性が良く、人事担当者の業務負担や人的ミスを削減するにはRPAの活用が効果的です。
では、人事部門のどんな業務にRPAを適用できるのでしょうか。
自動化を適用できる主な業務は以下になります。
勤怠管理
勤怠管理は管理者による承認作業といった人の判断が必要な作業をのぞき、一定のルールに従って進められる業務が多いため、RPAの活用に向いています。
また、勤怠管理は従業員の給与にかかわる作業のため、RPAに任せることで生産性向上はもちろんですが、精神的な負担が減少しエンゲージメントの向上効果も期待できるでしょう。
給与計算
こちらも勤怠管理と同じく一定のルールに従ってできる作業であるため、RPAに任せることで生産性の向上と効率化に繋げることができます。
また、従業員の賃金に直結する業務であり、プレッシャーがかかる業務ですが、RPAに置き換えることで正確に作業をしてくれるため、プレッシャーから解放されるという効果もあります。
経費の清算
交通費や出張費、接待費などの経費清算ですが、システムの入力作業などを自動化することが可能です。
人が確認や入力を行うと、どうしてもヒューマンエラーが発生する可能性がありますが、RPAに置き換えると計算ミスが無くなり業務の正確性と品質の向上が期待できます。
採用に関する業務
人事業務の中でも多くのリソースを要するのが採用活動です。
人の判断が必要な場面が多く、RPAを導入する業務はないと思われがちですが、面談完了者のファイル移動や採用試験に関する点数の集計といった定型作業に対して自動化を導入することができます。
過重労働の検知
勤怠管理に関連する部分ですが、RPAであれば対象となるデータが膨大でも、素早くデータを処理し、条件に合致するデータをピックアップすることが可能です。
そのため、全社員の中から条件に合致するデータをスピーディーに検索することができ、連携すれば対象の従業員に対し注意喚起のメールを自動送信することもできます。
レポート(報告書)の作成業務
人事部門に限らずではありますが、各種レポート作成に属する業務については、RPAを適用することで効率的に作業をすることが可能になります。
人の手であれば、さまざまなインプットとなる情報を色んなデータベースから取得する必要がありますが、RPAであれば各種データを適したデータベースから取得しレポートファイルを作成することができます。
各種発注業務
発注業務については、人が判断して対応するイメージが強いですが、例えば在庫状況をRPAで管理するような仕組みにしておけば、在庫が閾値未満になると担当者へメールを自動送信するなどの作業を実施することができ、頻繁に人が確認しなければいけない手間が削減されます。
このように、RPAで自動化できる人事部門の業務は多岐にわたります。
こういった業務をRPAで自動化することにより業務効率化を図り、繁忙期に人材派遣などで賄っていた人件費の軽減が期待できます。
ただし、効果的にRPAを活用するのであれば、見境なく業務を選定し自動化するのではなく、しっかりと費用対効果を分析し、RPAを適用することでどれぐらいの削減効果が見込めるのかについて確認しましょう。
進めてみたものの「思ったより効果が感じられない」というのは、RPAの導入を失敗してしまう大きな要因の一つになっています。
効率化に成功した導入事例3選
ここまでは、RPAを導入するメリットや活用できる業務事例について解説をしてきました。
次は実際に人事部門へ導入された事例について、3つ挙げて解説をします。
自社への導入を検討されている方は、参考にしていただければ幸いです。
事例① 勤怠管理システムからのデータダウンロードと対象者検知
従業員の勤怠チェックについて、管理者が勤怠管理システムへアクセスし打刻漏れがないかについて確認、その結果を対象者へ口頭にて通知をしていました。
しかし、勤怠管理システムへアクセスしチェックする処理は大変工数がかかり、承認者の大きな負担になっていたため、RPAを導入し効率化を図りました。
自動化した内容としては、勤怠管理システムにて打刻漏れとなっている対象者をピックアップし、各支社および拠点ごとにファイルを作成、その結果をメールで送信するところまでを対応しました。
その結果、承認者は出勤時に届いているファイルを確認することで打刻漏れに対応ができるようになり、大幅な工数削減に繋げることができています。
また、RPAの特性を生かし毎営業日の朝に稼働させることで、承認者が出勤したタイミングでファイルが出来上がっている運用にすることで、スムーズに対応ができるようにもなっています。
事例② 海外勤務者の勤怠データの自動集計
近年のDX化や働き方改革の流れから、業務の効率化については注目しており、付加価値を増大させサービスレベルを向上させることを目的に、ルーティンワークなど標準化を実施していました。
そして標準化した事務作業を、より業務を効率化させるための手段としてRPAの導入に至りました。
RPAで対応した業務の一つとして、海外勤務している担当者の勤怠管理について、エクセルなどで送られてくる残業データを別のエクセルに転記、集計して給与計算の担当部署や勤怠管理の担当部署に対して、それぞれに伝えていくという業務プロセスに適用しました。
その結果、一連の運用フローをRPA化できたことで業務がスムーズに完結するようになり、人が担当していた部分が大幅に減少し工数削減に繋がっています。
事例③ 福利厚生の利用者集計と分析業務
従業員に対して複数の福利厚生を提供していたが、活用されているかの確認ができておらず、従業員の満足度を測りかねていました。
また、経営層からコスト削減について求められていたが、福利厚生にかけているコストが正しく評価できていなかったことで、コスト削減対象として良いかどうか判断できない状況がありました。
作業フローとしては福利厚生を管理しているシステムがあり、そこから利用者のデータをダウンロード、その結果を別エクセルファイルにて集計や分析の作業を実施するという手順でした。
しかし、従業員数が多いことや複数の福利厚生があるため、人の手で実施すると大変時間がかかってしまう状況にあり、RPAの導入を決定しました。
RPAでは福利厚生管理システムへアクセスし、月次で利用者データをCSV形式でダウンロードする作業や、その後のエクセルファイルへの集計、分析、福利厚生コストを算出から経営層への結果ファイル送信まで、すべてを自動化の対象として置き換えを実施しました。
今までは、1回あたり30分程度かかっていた作業時間がなくなり、他の業務に注力できるようになったことや、従業員満足度の向上を可視化することで、より良い福利厚生の提供が可能となりました。
記事まとめ
今回の記事では、労働力の確保や業務の効率化に欠かせなくなっている人事部門のRPA導入について、活用できる業務の紹介や導入事例について解説をしました。
RPAの導入は、業務を自動化することで工数の削減に繋がり経費削減や人的ミスの防止に繋がることはもちろんですが、それだけではなく「働き方改革」や「DX推進」にも繋がる企業にとって大きなメリットをもたらしてくれる活動です。
現時点で運用として問題ない業務に対し、新しいツールを導入するのは決意がいる活動ではあると思いますが、その決意に見合う効果をRPAはもたらしてくれます。
専門のエンジニアがいなくても利用できるツールですので、今回の記事がRPAを導入したいと検討している方の一助になれば幸いです。