近年、盛んに謳われている「DX推進」において、RPAとAIは非常に重要なツールとして認識されています。
DXとは、Digital Transformationの略で、経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)」では以下のように定義されています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
この記事では、企業のDX推進において重要なツールとなる「RPA」と「AI」の違い、また両者を連携したり、組み合わせたりすることで得られるメリットや活用事例を解説していきます。
RPAの概要と3つのクラス
RPAとは、Robotic Process Automationの略で、パソコン上で本来人間が手作業で行っていた処理を自動で行います。
また、日本RPA協会では下記のように説明しています。
ロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)、通称RPAは、これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を、人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用して代行・代替する取り組みです。 (読み:アールピーエー)
出典:日本RPA協会
RPAツールを使用することで、これまで手作業で行っていた定形業務の処理を自動化させ、人間の手を介さずに業務を完了させることができます。
そして総務省では、RPAの定義として以下の3段階の自動化レベルを提示しています。
クラス1. RPA(Robotic Process Automation)
クラス1の「RPA」とは、定型業務を自動化することです。
例えば、特定のアプリケーション内にあるデータを抽出し、会社の経理システムに登録する、といった業務の自動化に活用される事例が多いです。
このような作業は複数のアプリケーションを横断的に利用する必要があります。
そのため、エクセルのマクロ機能のように、特定のアプリ内の操作のみに利用するソフトウェアでは、フロー全体の自動化を実現することができません。
しかし、RPAなら、人が操作するように複数のアプリケーションを横断できるので、既存のシステムを変更したり、連携用のプログラムを開発したりすることなく業務の自動化を実現できます。
クラス2. EPA(Enhanced Process Automation)
クラス2の「EPA」とは、一部非定型業務の自動化のことで「RPAとAI技術を組み合わせたもの」になります。
非定型業務とは、状況によって対応を変える必要のある業務です。
EPAの場合、ルールづけや情報の構造化がされていないデータや知識も処理することができます。
例えば、大量の画像を特徴別に分類する画像認識、またビッグデータから顧客傾向を分析することなどが可能になります。
AIが自ら分析を行うことにより、イレギュラーな状況への対応も可能となります。
クラス3. CA(Cognitive Automation)
クラス3の「CA」とは、高度な自律化のことで、収集したデータをもとにRPAツールが自律的に判断を下し、業務プロセスの分析や改善提案のみならず、業務上の意思決定までも自動化できると定義されています。
いわばRPAの最終形態であり、搭載された自律型AIが機械学習を繰り返し、自らの判断と意思決定の精度を向上させられるのが特徴です。
現時点においてCAの実例はないですが、AI技術の発展を鑑みると、将来的に導入されることは間違いないでしょう。
AI(Artificial Intelligence)とは?RPAとの違い
AIとは、人工知能のことです。
AI機能のNLP(自然言語処理)によって、画像や音声、動画などの非構造化データを解析することができます。
先述した通り、RPAは、Excelファイルなどのデータ取得や入力作業などの定型業務の自動化を得意とし、画像や音声、動画などのデータの処理は苦手です。
AIとRPAの大きな違いは、「非構造化データの解析ができるかできないか」という点にあるでしょう。
非構造化データを処理できないRPAに、非構造化データを処理できるAIを連携させることによって、RPAのみでは処理できなかった複雑なデータを扱えるようになり、自動化できる業務の範囲が大きく広がるようになります。
RPA✕AI(インテリジェントオートメーション)を活用しよう
先述した通り、RPAクラス2の「EPA」とは、RPAとAIを組み合わせたものです。
これはインテリジェントオートメーション(Intelligent Automation)と呼ばれています。
実は、日経BPのイベント「RPA/ビジネスAIカンファレンス 2022 Spring」で、RPAとAIの組み合わせの事例が紹介されたりと、インテリジェントオートメーションの活用が注目されているのです。
RPA✕AIツール紹介と導入事例
ここでは、実際のインテリジェントオートメーションと、その導入事例を紹介していきます。
RPAやAIの導入をお考えの方は、これらの導入事例と、効率化したいと考えている社内の業務内容を照らし合わせて、RPAとAIのどちらが必要なのか、またはどちらも必要なのかをご検討してみてはいかがでしょうか。
Kore.ai「BankAssist」
Kore.aiの「BankAssist」は、対話型AI(conversational AI)です。
ユーザーの質問に対し、チャットボットが従業員の代わりに自動で回答します。(チャットボットとは、AI機能を用いて人間と自然な対話・応答を行うコンピュータプログラムの総称です。)
活用事例として、銀行業務の日常的な問い合わせをチャットボットで対応しており、問い合わせの80%以上を処理しています。
出典:チャットBotが銀行業務を効率化する方法 | Kore.ai
UiPath「UiPath AI Fabric」
「UiPath AI Fabric」は、UiPath Studioや UiPath Robotsと組み合わせることで、AIをワークフローに組み入れることが可能なAI運用・管理プラットフォームです。
ドラッグ&ドロップでAIをRPAに組み込むことができるので、AIに詳しくない現場の従業員であっても、簡単に使いこなすことができます。
例えば、UiPathのRPAでSNSやWebニュースに掲載されている「RPA」に関連するツイートや記事を自動で収集。
次に、AI Fabric上のAIが、それぞれのテキストの感情をポジティブかネガティブかで分析します。
AIがテキストの感情にランクを付け、キーワードを抽出し、トレンドの分析までを自動で行います。
出典:顧客のリアルな声を分析しマーケティングに生かす―ソーシャルメディア分析におけるRPAとAIの活用
Blue Prism「Intelligent Automation」
Blue Prismは、RPA市場において世界的な主要企業のひとつです。
Blue Prismが提供するソリューション「Intelligent Automation」は、AI(人工知能)とML(機械学習)によるデジタルワーカーで、RPAに組み合わせれば人の負担となる日常業務を代行させることができます。
Blue PrismのRPAを活用して、大手IT会社の営業事務部門が、提案支援から受注、売掛金回収・資産管理までの業務を自動化し、業務改善の成果を得た事例があります。
出典:エンタープライズオートメーションプラットフォーム | SS&C Blue Prism
ソフトバンク株式会社「Automation 360」
ソフトバンクがは、Automation Anywhereが提供する、大規模導入や複雑な業務の自動化に最適なRPAツール「Automation 360」を販売しています。
完全ウェブベースのユーザーエクスペリエンスを実現するためにゼロから設計されたそうです。
また、ソフトバンクはRPAツール「SynchRoid」も販売しています。
こちらは大規模導入向けのAutomation 360と違い、小規模開発向きの製品になります。
ある地方自治体での活用事例では、事務作業の自動化に成功し、結果として年間2,300時間の削減を実現したと報告されています。
出典:Automation Anywhere | 大規模導入に最適なRPA | 法人向け | ソフトバンク
SAP「SAP Intelligent RPA」
業務の効率化のためのソフトウェアであるERPパッケージ(Enterprise Resource Planning)の、最も大きい国内シェアを誇るSAP。
このSAPから販売されているRPAツールが「SAP Intelligent RPA」です。
SAPのERPパッケージを使用している場合、スムーズにSAP Intelligent RPAと連携させることができます。
RPA初心者には難易度が高めではありますが、SAP商品を既に使用している企業は導入を検討するのも良いかもしれません。
出典:SAP Build Process Automation | 製品機能
記事まとめ:業務を自動化し、仕事をもっと効率的に
近年、多くの企業で取り組まれているDX推進において、「RPA」と「AI」は業務効率化を促進する非常に重要なツールです。
RPAは定型業務の自動化に優れ、一方、AIは非構造化データの処理に適しているという違いがあります。
また、RPAとAIを組み合わせたインテリジェントオートメーションも注目されており、さらなる業務運用の効率化や人手不足の解消に貢献します。
これらのツールを導入する際には、対象業務をしっかりと見極め、自社に最適なシステムを選ぶことが重要です。
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