2015年頃から海外・主に欧米の金融機関で注目され始め、2016年後半には日本国内でも頭角を現したRPA産業。
少子高齢化による労働人口減少が進む中でその需要は徐々に高まっていきました。
その一方、ネットでは「RPAはオワコン」「RPAブームの終焉」という声も少なくありません。
これを受けて、業務の自動化にRPAの導入を考えていた企業さまも二の足を踏んでしまっているのではないでしょうか。
この記事では、RPAツールの市場規模や将来性について解説。
RPAツールが「オワコン」か否かを独自に検証していきます。
RPAの導入に不安を抱えている方はぜひ参考にしてみてください。
業務自動化ツール「RPA」とは?
RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、ソフトウェア上のロボットを利用して業務を自動化するシステムのこと。
シナリオ(=プログラムの一種)を作成し、実行させると、各種の事務作業を自動で実行させることができるのが特徴です。
RPAツールはデータ入力や請求書発行などの定型業務等のコンピューターを使って行う単純な反復作業を得意とします。
さらに、工夫をすればコールセンターの補助やネット上の情報収集など一部非定型業務も自動化することもできるので、意外と汎用性の高いツールであると言えるでしょう。
人間のようにヒューマンエラーの心配がなく、さらに休息をとる必要もないので効率的に業務を遂行することができます。
ブームは日本だけ?現在の市場規模を解説
2017年頃から国内で注目を浴びるようになったRPAは、当初、年2桁の右肩上がりで成長すると予想されていました。
世界のRPA市場規模は2025年まで2桁の成長率で伸び続ける見通し
世界的な調査機関である「ガートナー」や国内の調査機関「矢野経済研究所」によれば、RPA市場は2020年時点でも成長を続けており、2025年まで年2桁の成長が望めるとしています。
同じくガートナーの調査によると、2019年のRPA売り上げは14.1億ドル、前年比の成長率は、約66%、2020年は、成長率が11.9%に落ちつきました。
しかし、RPAの価格も2019年と比較して約10%ほど落ちているとされており、導入本数で考えると20%増以上であったことが推測できます。
実際、2020年の売上高が約1,738億円であり、2024年までには2桁の成長率で拡大していくことが予測されています。
日本企業のRPA導入率は約50%!今後も増える見通し
MM総研が行った調査によると、2022年9月時点で日本の年商50億円以上の企業では、社数ベース導入率は45%となり、半数近い企業が導入を完了していることがわかりました。
その一方で年商50億円未満では、導入率12%と低調ですが、RPAのベンダーが中小企業をターゲットにしたツールを発表したことから今後数年で普及期を迎えると想定されます。
RPA産業は「オワコン」?将来性はある?
上記でRPA市場の現在の市場規模について解説しました。
2015年~16年が4倍、16年~17年が倍の規模で正常していたのと比べると、成長率が鈍化していることは否めませんが、今後数年で普及期を迎えることが想定されるため、今後も成長は続くと予想できます。
つまり、RPA産業には将来性があるといえるでしょう。
世界のRPA市場では、大規模なベンダーと、ニッチな分野や機能で差別化を図る小規模ベンダーに二極化している状況です。
さらなる顧客獲得を目論む大規模なベンダーは、買収や企業連携を積極的に行っています。
例えば、UiPathはAPI統合プラットフォームを展開するCloudElementを2021年3月に買収しました。
一方、Automation Anywhereも同じ時期にGoogleと連携し、新商品の開発を行っています。
また、IBMやMicrosoftなどもさまざまな小規模ベンダーとの提携を活発に行っている状況です。
このように、RPA市場では今も活発に新製品の開発が行われ、RPAツールは日々進化しているといっても過言ではありません。
「オワコン」どころかむしろ進化するRPAツール
それでは、RPAが将来性のあるツールとなっている所以について解説します。
DX・リモートワークを背景としたRPA導入拡大
企業の生産性を上げるDX・コロナ禍で拡大したリモートワークによる書類・帳票のの電子化と、データ活用など、近時の社会情勢がRPAツールを必要としています。
労働力の補填
RPAを利用する中心は、工業先進国ですが、少子高齢化が共通の課題です。
特に日本などは深刻であり、将来の労働者不足に備える意味でも、RPAツールを導入する必要があります。
ビッグデータ利用とRPAの連携もさらに拡大
工場や物流の現場、あるいは危険環境などでセンサをつかったIoTツールを利用し、取得したデータを活用する動き、つまりビッグデータの活用は、年々進行しています。
データの利用に、RPAで自動でデータを整理、業務に活用することは業務の効率化を推進するために不可欠です。
関連製品と連携も
国内でもAI-OCRとRPAツールの連携がよく見られるように、AI連携・他のアプリとの連携で利便性・効率性が向上します。
RPAや当該のAI製品・アプリ製品を使うと、連携するRPA・アプリの導入を進めるインセンティブがある、という関係になります。導入のインセンティブが多くあることも、RPAツールの好調の理由となっています。
RPAツールにしかできないこととは?
インターネット上では、「将来RPAを凌ぐツール」や「RPAに代わって市場をけん引するツール」として、マクロやAIなどの名前が挙がっています。
それでは、マクロやAIは本当にRPAと互換性はあるのでしょうか?
ここでは、RPAとマクロの違い、RPAとAIの違いに分けて解説します。
RPAとマクロの違い
まずはRPAとマクロとの違いについて以下の4つの観点から見ていきましょう。
- 自動化できる業務領域
- プログラミングの知識の有無
- 処理可能なデータ量
- 導入費やコスト
自動化できる業務領域
RPAもマクロも定型作業を自動化するものですが、自動化できる業務領域に違いがあります。
ExcelマクロはExcel上での作業を自動化するものであり、VBAを駆使しても、自動化できるのはMicrosoft社のアプリを使った作業に限られます。
一方で、RPAはその種類によってできることの範囲は異なるが、Officeアプリを含めて、さまざまなアプリやシステムを使った作業を自動化することができます。
プログラミングの知識の有無
マクロではVBAというプログラミング言語でコードを書くことによって動作を指定し、作業を自動化することができます。
そのため、マクロを扱うにはVBAの知識が必須です。
一方で、RPAはツールの種類にもよりますが、テンプレートがあったり、管理画面上で自動化したい作業を人間が一度実践することで、その作業手順をシナリオ化して設定してくれるものもあるので、プログラミングの知識がなくても使用できます。
処理可能なデータ量
Excelマクロで作業を行う場合、その処理能力はExcelを使用するパソコン本体のスペックに依存します。
そのためパソコンのスペックが低い場合には、一度に大量のデータを扱うような作業をマクロで実行しようとすると、動作が遅くなったり、処理しきれずにパソコンが止まってしまうことも。
もちろん、RPAの中でも、デスクトップ型RPAはパソコンにRPAをインストールするため、マクロ同様に処理能力がパソコンのスペックに依存し、パソコンのスペックが足りない場合は処理しきれないことが発生します。
ただしこれに関しては、サーバー型やクラウド型であれば、パソコンのスペックに関係なく、サーバーやクラウド上で大量のデータ処理を高速で処理することが可能です。
導入費やコスト
Excelマクロは、Excel自体に元から搭載されている機能のひとつです。
そのため別途ツールやシステムを導入する必要はありません。
Excelさえあればマクロを使って作業を自動化することができ、追加で支払う費用も発生しません。
一方で、RPAはさまざまなツールがベンダーから販売されており、その中からライセンスを購入することになります。
RPAを導入するための費用としては、デスクトップ型やクラウド型で数十万円~数百万円、サーバー型で数百万円~が必要になると言われています。
自動化できる業務の範囲が広いため、それなりにコストはかかると考えておいた方が良いでしょう。
RPAとAIとの違い
RPAはあらかじめ設定されたルールや基準に従って作業を行うのに対して、AIは自ら判断をして作業を行うという違いがあります。
また、RPAは業務を自動化するシステムであるのに対して、AIはそれ単体で何かをするわけではなく、システムやデバイスに組み込まれることで機能します。
イメージとして捉えるなら、RPAは人間指示どおりに作業を代替してくれる「手」。
一方、AIはどのように作業を進めるかを人間の代わりに考えてくれる「脳」と言えるでしょう。
RPAとAIの違いは以下の通り。
RPA | AI | |
---|---|---|
できること | 定型作業 | 識別・予測・分類を伴う判断と実行 |
動作の基準 | 事前の指定 | 機械学習の成果による判断基準 |
実装前の準備 | 具体的な作業の指示・指定(シナリオ作成) | 機械学習とモデル評価 |
AIを搭載したRPAでさらに広範囲の自動化が可能
RPAの機能にAIを搭載することで、一部の非定型業務を自動化することが可能になります。
AIが「頭脳」として業務に対する判断を担い、その判断を基にRPAが「手足」として確実に処理を実行するというフローによって業務処理がなされるのです。
これによりRPAが担える業務の領域を拡げることができます。
例えばチャットボットやマッチングサービス等の、「対ヒト」業務において倫理的推論や臨機応変な対応をすることが可能です。
「注目したい」RPAツールにしかできないこと
ここでは、AIやマクロなどと比較したうえでRPAツールにしかできないことについて解説します。
エンジニアがいない環境でも自動化が可能
RPAは導入・運用にプログラミングの知識が必要ないため、他のソフトウェアシステムと比べて比較的簡単に自動化を行うことができます。
また、RPA産業は普及期ということもあって、各RPAベンダーが充実したサポートやサービスを提供しているというのも嬉しいポイント。
RPAの導入に不安があっても、問題なくRPAを使いこなすことができるでしょう。
広範囲にわたって自動化が可能
RPAはその種類によってできることの範囲は異なりますが、Officeアプリを含めて、さまざまなアプリやシステムを使った作業を自動化することができます。
定型業務から一部非定型業務であれば、工夫次第でほとんどの業務が対応可能なので、費用対効果の高いツールといえるでしょう。
自動化範囲が決まらないという方は、一度無料トライアルを試してみてから本格導入を進めるのがおすすめです。
人材不足の問題解決
RPAは導入・運用に専門スタッフは必要ありません。
そのため、RPAを運用するための新しい人材を探す手間もなく導入することができます。
RPAで自動化した業務にはおのずと人手がいらなくなるため、人間はコアワークに回ることができ、人件費削減、生産性向上にもつながります。
【記事まとめ】結論、RPAは「オワコン」とはいえない
この記事では、RPAツールの市場規模や将来性について解説しました。
- R世界のRPA市場規模は2025年まで2桁の成長率で伸び続ける見通し
- 日本企業のRPA導入率は約50%で今後も増える見通し
- ビッグデータ利用と他商品との連携で今後もRPAツールの進化は続く
- RPAではプログラミングの知識なしで業務自動化が可能
これらの理由により、結論、「RPAはオワコンではない」といえるでしょう。
RPAは今後の人材不足に備えるためには必要不可欠なツールといえます。
この記事を読んでいただいた企業さまがRPAを導入する一歩をお手伝いすることが出来ましたら幸いです。