ビジネスで話題のRPAツールは、業務の自動化を行うツールであり、大企業を中心に成功事例も多くなっています。
新聞・雑誌・書籍などで成功事例紹介も多く、自動化が与える産業界へのインパクトも大きいものがあります。
例えば2019年11月22日の日経新聞によれば、50社で17000時間の業務時間が浮いた計算になると発表されました。
ところで、同じ自動化を行うことができるAIですが、RPAとの違いを正確にご存じでしょうか。
RPAとAIは連携させて利用することも多いので、同じものと思われがちですが、双方は技術的にも違う仕組みを使っています。
この記事では、RPAとAIの技術的な仕組みの違いを解説。
RPAとAIを連携されることにより期待できるさらなる業務効率化への効果も併せてご紹介します。
RPAの導入でお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
RPAとは
RPAとは、ソフトウェアロボットを使用して、ルーティンとなっている業務プロセスやタスクを自動化する技術です。
Robotic Process Automation(ロボティックプロセスオートメーション)を略してRPAと呼びます。
これまで人手で行っていた繰り返しの作業やデータ処理、情報の管理などを、ソフトウェアロボットにより高い精度と効率で自動化することが可能となります。
RPAは特定のルールや手順に従って作業を行うため、人間が事前にルールを設定し、そのルールに基づいてタスクを自動的に実行します。
RPAを導入することで企業の業務プロセスの効率化やコスト最適化、ヒューマンエラーの軽減、生産性の向上などを実現できます。
RPAツールにできること
RPAツールは、およそ事務仕事があるところ、どんなところにでも有効と言われますが、シナリオに載せて同じ動作を繰り返すという性質があり、そして自律的な判断をするほどの人工知能はない、ということが特徴です。
このことから、反復して定型的作業を行うことは得意であるが、高度な判断を伴う業務や、学習、あるいは細かく変数を設定して、規則的でない動きを行わせることには向いていないとされています。
こうしたRPAの性質や、他の確立された手法との組み合わせをしたほうがより効果的に業務の効率化が図られると考えられる場合があることから各種のソリューションとRPAは組み合わせて導入され、利用されることも多いのです。
導入のメリットとデメリット
メリットは、圧倒的な業務効率の改善・業務時間短縮効果や、人件費などのコストカット、これによる労働環境の改善、本質的な業務に集中できることからモーチベーション・コミュニケーションの改善などが挙げられます。
業務の正確性や、24時間休まず働けるところもメリットです。
その反面、デメリットとして挙げられるのは、RPAツールの操作に慣れることには時間がかかること、操作スキルには個人差が出やすいことから、業務が属人化しやすい・ブラックボックス化しやすいというものがあります。
AIとは
RPAが人のいうことを聞くことを機能の本質としているのに対し、AIは人のいうことを学習し、判断することがその機能の本質です。
AIによる判断は機械学習(Machine Learning)による学習で習得します。
とりわけ何層にもわたる人間の神経系統にも似た機械学習の中でも高度な深層学習(Deep Leaning )により行います。
深層学習は、究極的にはアルゴリズムによる演算であり、何度もふるいにかけるように、誤りを取り除き、正しい演算結果を返して、判断の精度を上げていきます。
演算結果を返すことが人の目から見ると、「判断している」というように見えるのです。
機械学習は、過去のデータをもとに行いますので、膨大なデータを計算して行います。
RPAはAIと異なり、このように高度なレベルの学習・判断をすることができません。
AiのUse Case としてはIBMやGoogleが多数の事例を持っています。
Watsonによるクイズ大会、チェスのチャンピオンとの対決といったキャッチ―な事例から最近ではAiによる遠隔・無人医療、画像診断、あるいは危険なところでの警備ロボットへの利用や気象の変化をモニタリングするなどの実用AIが発達、各方面での導入が進み始めています。
導入のメリットとデメリット
AIのメリットは、人に代わって非定型的な判断ができ、画像のような多くのデータを判断材料にする高度な判断が可能になることが挙げられます。
RPAと異なり、AIの自動化の利用場面はオフィスに限られない事などが挙げられます。
それに、人と違っていつまでも同じ仕事をさせておいても問題はありません。
AIも反復継続する長時間の仕事が可能なところは、RPAと共通しています。
デメリットは、大量の過去データが必要になり、また、コンピューターも大型になりやすいこと、さらに、チャットボットなどの一部のAI関連ソリューションを除き、いまだにコスト面で業務に導入するには高価でハードルが高いことが挙げられます。
AIは本格運用するまでに学習を待つ必要があり、導入までの時間がかかるケースがああることもデメリットの一つといえるでしょう。
「RPA」と「AI」2つの共通点と差異とは
以上にRPAとAIをそれぞれ技術的な違いを中心に紹介してみましたが、共通点と差異をそれぞれまとめると、以下のようになるでしょう。
共通点は自動化・業務効率の向上、業務改善効果
RPAとAIの共通点は双方とも人の手を介さなくても、自動で仕事を行うことができることです。
その結果、業務効率の向上や、業務改善効果、労働環境の改善効果、コストカット、人為的なミスが出にくくなる効果などは共通点と言えます。
用いられる技術の差から判断と学習機能、非定型業務にも向くかどうかに差がある
RPAとAIの差異は用いられているロボット技術と、機械学習技術に差異があること、そしてこれらの技術的な差異から、判断・学習・定型だけでなく非定型業務に向いているのがAI、反復・大量の定型的業務に向いているのがRPAであるとまとめることができます。
なお、RPAは学習は最小限の機能がついているものが見られますので、仕事の処理をある程度自動で修正することもあります。ところが、この学習機能は、向上するほど高度なものではありません。AIは学習で機能向上が見込めるのです。
ところで、RPAとAIは、向いている業務から考えると、相互に補完をして人間の行う業務・作業を行うことができる、という見方も成り立ちます。このことから次にご紹介するように、相互を連携させ、組み合わせるソリューションの導入例が数多く登場しています。
RPAとAIを組み合わせたソリューションで自動化範囲を拡大
AIとRPAを組み合わせると高度な自動化が実現します。AIが物事の判断と指示を担い、その指示を受けたRPAが作業を遂行するのです。
ここでは、RPAとAIを組み合わせるメリットや活用事例をご紹介します。
既にAIを搭載したRPAも存在している
RPAは、人間が定めた作業フローにもとづいて業務を自動化するものから、AIと連携して非定型業務まで自動化できるように進化しています。
これによりRPAは、対応できる自動化レベルにより、以下の3つのクラスに分類されています。
それぞれのクラスと対応業務は以下の通りです。
Class1 | Class2 | Class3 |
---|---|---|
RPA (Robotic Process Automation) |
EPA (Enhanced Process Automation) |
CA (Cognitive Automation) |
RPA | RPA+AI | RPA+AI |
データ入力等、複数のアプリケーションの連携が必要な定型業務を自動化する | 形式が定められておらず、処理がされていないデータ(非構造化データ)の収集や分析といった非定型業務を自動化する | 高度な人工知能により、プロセスの分析や改善、意思決定までを自動化する |
現在、RPAを導入している企業の多くはClass1を使用しています。
一方で、Class3の製品ともなると、日本語の対話ができるAIを活用し、対話だけでRPAを動かすのに必要なデータ入力が完了し全ての業務プロセスを完結することも可能とされています。
これまでは、業務自動化のフローにはまず初めにRPAへの指示内容の決定と構造化するためのデータ入力が必要でした。
しかし、インテリジェントオートメーションでは、AIの活用でRPAの自動化サイクルの各ステップをサポートし、その後も改善を続けます。
RPAとAIを組み合わせるメリットとは?
これまで企業で導入されてきたRPAの多くは、単純作業を自動的に繰り返すRPAです。
手作業をする手間を削減できるというメリットはありますが、RPAで自動化できる分野や領域は限定的です。
たとえば、作業手順が明確化されていない業務では、RPAに手順を設定することができません。
また、イレギュラーが発生するような業務では、RPAが正しく機能しない場合があるので、結局エラーがないかを人間がチェックする必要があり、完全に自動化することはできません。
しかし、上の図で挙げたEPAやCAと呼ばれるもののように、RPAとAIを組み合わせることで、単純作業の自動化だけではなく、自ら学習し、その課題に対して最適な処理を行うというところまでできるようになります。
たとえば、商品の売り上げ予測など、人間が分析ツールを駆使しながら膨大な時間をかけて行っているデータ収集や分析も、RPAとAIを組み合わせることで、人間よりも正確かつ早く行うことができるようになり、生産性を上げることも可能になります。
ほかにも、RPAと光学文字認識技術にAIが加わったAI-OCRを組み合わせることで、不定形帳票からでもデータ収集を行い、基幹システムに登録するといったことができるようになります。
RPAとAIを組み合わせた活用事例の紹介
RPAとAIを組み合わせることで、定型業務のみならず、一部非定型業務や非定型業務の自動化も可能になります。
具体的な事例は以下の通りです。
事例1)文書の電子化・自動化の事例AI OCR and RPA
AI OCRは、非定型的な帳票や手書き文字をAIで判断して読み取りやすくしている点が従来型のOCRと異なります。
OCRは、文字情報をデータにするので、さらに他のソリューションでの利用を可能にし、紙の帳票も人の手による入力業務も不必要なものにすることもできます。
読み取りから入力までが一気通貫で処理することが可能です。
AI OCR and RPAの組み合わせのソリューションは、例えば損保会社(三井ダイレクト損保、損保ジャパン)銀行といった金融機関・地方自治体のように、大量の文書を必要としていた業務に導入されています。
そして、効果として、愛知県のように95%の入力業務を減らした例にも見られるように大幅な業務効率化効果が得られています。
事例2)コールセンター・カスタマーセンター業務ChatbotとRPAによる自動架電
ChatbotとRPAの組み合わせは、通話の自動応答に使ったり、あるいはメールの自動応答に利用できます。
Chatbotで音声を聞き取るか文字情報を読み取り、応答する内容を選び、RPAで応答を自動で行う、という一連のコールセンター・カスタマーサポート業務の自動化が可能です。
例えば、JALのホームページに登場したチャットボット「マカナちゃん」は、IBMのワトソンとUiPathの組み合わせで、予約のアシストをします。
保険会社のコールセンターにおける夜間受付・無人のクレジットカードのカスタマーセンター・通販コールセンターなど、多くの導入事例が登場しています。
事例3)製造業のでのIoT and AI+RPA
製造業はもともとFA(Factory Automation)による自動化が進んでいる業種です。
しかし、製造から物流まで一貫して自動で業務を行うときには、FAだけでなくオフィスのロボットであるRPAやAIによるデータの判断が必要となります。
製造業では、IoT技術を使って、生産工程に関するデータを集め、AIで判断し、RPAでERPシステムへデータを入力する、工程管理、流通管理が可能です。
ドイツのフォルクスワーゲン・シーメンスなど大手メーカーによる生産工程から流通工程の管理に導入した事例があり、これらの企業が国際競争力を取り戻したことも著名な事実です。
ロボット技術と人工知能をつかったサービスは今後続々登場予定
ロボット技術と人工知能技術を使い、効率化を図ると、より本質的・創造的な仕事に人力を振り向ける・短縮できた業務時間により、「働き方改革」も加速することができます。
利益率・労働生産性もこうして向上させることが可能です。
そのため、今後もRPAとAIの違いを踏まえ、相互補完作用を活かしたソリューションが次々と登場することが予想されています。
記事まとめ
RPAツールとAIは、用いられている技術の違いから、得意な仕事が異なります。
定型的で、反復して同じ仕事をすることが得意なRPAと、学習により非定型的な作業・業務にも対応できるAIは、それぞれロボット技術と機械学習・深層学習と、異なる技術が用いられています。
RPAとAIは、組み合わせで利用すると、機能がより本物の人間に近くなる一方で、働き続けて、大量の業務・作業をこなすこと出来るので、RPA単体よりもさらに業務改善効果を狙うことが可能です。
RPAを導入するときには、ぜひAIとの組み合わせも視野に入れてみましょう。