近年、急速なAI産業の進化により、業務用のAIツールが急速に普及しています。
その一つに業務効率化ツールであるRPA(Robotic Process Automation)が注目を集めています。
RPAは、事務作業などの定型業務を自動化する機能を有しており、作業時間の短縮を図ることができるため、便利なツールとして多くの企業で活用されています。
一方で、導入後に適切な運用が行われなかった場合、「野良ロボット」と呼ばれる、管理下に置かれていないロボットが発生するといったデメリットも生じます。
本記事では、RPAの野良ロボットの定義やそのリスクを理解した上で、その発生を防ぐための適切なツール運用方法について詳しく解説します。
RPAにおける野良ロボットとは
野良ロボットとは、組織や部署内の管理下に置かれることなく運用されているRPAロボットのことを指します。
これらは、RPAツールを用いて個々の従業員によって独自に開発または導入されているため、社内規定やセキュリティ基準に準拠していない可能性があります。
具体的には、以下の特徴を持つロボットが野良ロボットに該当します。
野良ロボットが発生する特徴
- 従業員が組織の許可を得ずに運用している
- 担当者の異動や退職により、誰が構築・運用しているのか不明
- 作成目的や運用状況が記録されていない
- システムや業務フローに合わせたメンテナンスが行われていない
- 不要になったにもかかわらず、放置されている
RPAの野良ロボットを放置することは、組織に重大な被害をもたらすリスクとなり得ます。
次章よりRPAの野良ロボットが引き起こす業務への影響やリスクについて解説します。
引き起こされる背景と受ける影響について
RPAの野良ロボットは作業の効率化を目的として個別に導入されることが多いですが、組織全体の観点から見ると多くのリスクを孕んでいます。
RPAの野良ロボットが原因で引き起こされる問題や、社内へ影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下の3点が挙げられます。
セキュリティリスクの増加
RPAの野良ロボットが予期しない動作を行ってしまうことが原因で、情報漏洩やサイバー攻撃を受けるセキュリティリスクが増加します。
特に注意したいのがRPAツールがWebを経由したソフトウェアや、インターネットと接続して業務の自動化を行う場合です。
悪意のあるハッカーによるサイバー攻撃を受けてしまうと、社内で保管している個人情報や、機密情報などがWeb上に流出する危険性も考えられます。
また、RPAの野良ロボットは、社内の正式な許可を得ずに構築されたロボットも存在します。
これらは社内規定に則って構築されていないため、作り方やそのプロセスに問題が生じていることがあります。
したがって、社内のセキュリティ基準を満たさないまま導入・運用されているため、脆弱性を抱えた状態で運用されるリスクを含んでいます。
業務フローの混乱
野良ロボットによって業務フローの混乱が起きる要因は、担当者間での引き継ぎ時のコミュニケーション不足がその一つとして挙げられます。
RPAツールの導入目的や作業プロセスが不明瞭となり、適切なメンテナンスがされないまま放置されてしまうことで野良ロボットが生まれます。
RPAの野良ロボットは、担当者の指示なく勝手に動作したり、必要のない作業やデータ処理を行ったりしてしまう可能性があります。
したがって、RPAの野良ロボットを放置しておくことで、余計な手間やかえって業務に支障をきたす恐れもあるでしょう。
誤った処理によるデータ損失
RPAの野良ロボットは、不意のシステム干渉や誤動作等により、他のシステムへ影響を及ぼすことがあるため、運用上のリスクや障害を引き起こす可能性があります。
一例として、既存のソフトやサービスのアップデートにより、連携エラーが起きてしまうことが挙げられます。
その結果、データの同期や更新の過程でエラーが発生し、サーバー上のデータ損失や誤った情報がなぜか更新されるといった影響を受けます。
したがって、RPAの野良ロボットを放置しておくことは大きなリスクが伴います。
【重要】RPA導入で野良ロボットを発生させないためにすべきこと
RPAの野良ロボットを発生させないためには、RPAツールの適切な運用が不可欠です。
本章では、RPAの野良ロボットを発生させないために知っておきたいツール運用のポイントを3点解説します。
管理方法を定めたマニュアルを作成する
RPAの運用にはマニュアルを作成することがおすすめです。
上述したように、RPAの野良ロボットが発生する原因の一つには、業務の引き継ぎが上手くいかないことが挙げられます。
RPAを活用した作業やプロセスが属人化していた場合は、特に野良ロボットが生まれやすいです。
マニュアルを作成するメリットは、RPAを運用する際のプロセスや手順の一貫性を保つことができる点にあります。
新たな従業員が業務を引き継ぐ場合でも、マニュアルに従って同じ手順で作業を行うことができるため、業務の品質も保証されます。
このマニュアルに記載する内容にはロボットの利用目的や、不測の事態が発生した時の対処法は必ず盛り込むようにしましょう。
上記の内容の加えておくことで引き継ぎが上手くいかなかったとしても、アクシデント時に関連する業務への影響やを最小限に抑えた対処法を把握できるでしょう。
定期的なメンテナンスや監査を行う
RPAの野良ロボットを発生させないためには、定期的にメンテナンスや監査をすることが重要です。
定期的にメンテナンスを行うルールを定めておくことで、自社で稼働させているRPAロボットがどのような作業をしているかを把握することができます。
つまり、野良ロボットの発生を防ぐことにつながります。
定期的なメンテナンスは、RPAツールの誤作動の防止や、更なる業務効率化に寄与することがあるため、野良ロボットの対策以外にも運用に大きな恩恵をもたらすでしょう。
また、大量のデータ処理を行うロボットが同時に動作するとシステムが処理速度に追い付かずダウンすることもあります。
したがって、不要なロボットは定期的に削除するなど監査作業を行うことも必要です。
社員のロボットの開発・運用に対する知識を向上させる
RPAの野良ロボット発生を防ぐためには、RPAツールの活用方法や運用方法の勉強会を行うなど、従業員に対して教育の機会を提供することが重要です。
RPAツールの基本的な機能や操作方法を習得することは、運用プロセスやマニュアルに対する理解を深めることにつながります。
そうすることで、野良ロボットを発生させないための基盤を構築することが可能となります。
また、RPAは担当者を一人に限定させるのではなく複数人で運用することで、引き継ぎの手間や作業の属人化の防止を図ることが可能です。
また、全社的や部門間で最低限のRPAに対する知識を持っておくことは、効率的な運用を行うための手助けとなります。
記事のまとめ
本記事では、RPAの野良ロボットが業務に及ぼす影響と、それを発生させないための対策について紹介しました。
RPAの野良ロボットがもたらす業務上の課題は以下の通りです。
野良ロボットによる業務上の課題
- セキュリティリスクの増加
- 業務フローの混乱
- 誤った処理によるデータ損失
また、RPAの野良ロボットを発生させない対策方法には以下のようなものがあります。
野良ロボットを発生させない対策方法
- マニュアルの作成
- 定期的なメンテナンスや監査
- 社内でのRPAに関する知識の底上げ
社内の実務者が一定の知識を持つことにより、RPAや業務に対する理解を深めることができるため、属人的な管理にならないように意識することが必要です。
また、RPAの野良ロボットを放置しておくと、情報漏洩などのセキュリティリスクや、社内データの損失など甚大な被害を及ぼす可能性があります。
したがって、RPAの運用には細心の注意が必要です。
とは言え、RPAツールは適切な運用をすることで大きな費用対効果をもたらします。
無料の製品をはじめ、低コストで始められるツールもあるため、とりあえずDX化を図るために自動化ツールを活用したいという方には非常におすすめです。
導入の際はツールの比較をした上で、各社の事例などを確認することが重要です。
人材育成のマニュアルや運用ルールを明確に定め、効率的な業務の自動化を行いましょう。