DX推進を成功させるには、組織体制の整備が必要です。
DX推進に最適化した人員配置や部門などを考えることで、デジタル施策がよりスムーズに進みます。
この記事では、DX推進に必要な組織体制について解説します。編成のポイントや成功事例なども紹介するのでぜひ参考にしてください。
DX推進に組織体制が必要な理由
DX推進に組織づくり、体制整備が必要な理由としては、以下のような事柄が挙げられます。
全社的にDX推進へ向かうため
DX推進は、部門ごとにバラバラに取り組むものではなく、企業が一丸となって取り組むものです。
全社的にデジタル化し、部門を超えてデータやデジタル技術を活用することで、生産性向上を目指します。
全社的にDX推進へ向かうためには、デジタル施策を担う部門やチームを編成し、権限や役割を明確にすることが必要です。
デジタル化を効率よく進めるため
効率よくDX推進を実現するためにも、体制の整備は欠かせません。
デジタル化を誰がどのように担当するのかを決めることで、施策がスムーズに進みます。
DX推進が効率よくスピーディに実現されれば、その分成果が出るまでの期間も短縮され、ビジネスに好影響があります。
中長期的に取り組みを継続するため
DX推進は、短期的な取り組むというよりもむしろ、時間をかけて中長期的に成果を確認していくものです。
そのため、施策の実行や検証、改善を継続するためにも、組織体制の整備は必要不可欠といえます。
じっくり腰を据えてデジタル化を実践する体制を作ることでノウハウも蓄積しやすくなるため、より良い成果が期待できます。
DX推進体制の種類【3つのパターン】
DX推進の組織体制には、以下3つのパターンが考えられます。以下は、DX推進を誰が主導するのか、誰がきっかけを作るのかという観点から分類したパターンです。
1. 経営者からのトップダウン型
理想的なのは、意識の高い経営者自らがDX推進を主導するトップダウン型の体制です。
経営者もしくは経営者直下のDX推進部門が、一貫してデジタル戦略・デジタル施策を取り仕切ります。
経営に対して全権を持つ経営者自身がリーダーシップを発揮することで、全社的なDX推進を実現しやすいのがメリットです。
ただし、現実にはデジタルに疎かったり、IT部門に任せきりにしていたりという経営者が多くいます。またトップダウン型のDX推進体制では、部門(ボトム)間の調整が課題です。
2. 中間層によるミドルアップダウン型
経営者がDX推進を主導できない場合は、デジタル化に関心の高い若手や中堅が取り組みを進めるという方法もあります。
中間層が社長に働きかけ、社長の代わりにリーダーシップを発揮することで、全社的にデジタル施策を進めるという組織体制です。
DX推進に対する意識があまり高くない経営者も多い日本においては、このミドルアップダウン型が最も現実的な体制といえるでしょう。
ミドルアップダウン型では、中間層が経営者と現場の間を取り持つため、各種の調整がしやすいというメリットもあります。
なお、具体的な組織構成は、各事業部門にDX推進チームを作る方法、既存の事業部門から独立した新たな組織を作る方法などさまざまです。
大掛かりな変革になりますが、DX推進のために子会社を作るという選択肢も考えられます。
3. 現場社員からのボトムアップ型
経営者も中間層もDX推進に積極的でない場合、現場社員による草の根運動で下から徐々にデジタル化を進めていく方法もあります。
スタッフ自らが担当業務のDXを実現し、その影響をほかの社員や部門にも波及させていくという体制です。
ボトムアップ型のメリットは、現場のニーズに合った形でDX推進に取り組みやすいこと。また意識の高い人材が一人でもいれば始められるため、ハードルも低いといえます。
DX推進体制が果たすべき役割
DX推進のための組織体制が果たすべき役割としては、主に以下のような事柄が挙げられます。
DX推進に関するリサーチ・研究
DX推進を成功させるには、まずDXについて知ることが必要です。
DX推進の手法や最新のデジタル技術、成功事例などを網羅的にリサーチすることが求められます。
そのほか、自社が属する業界のDX推進状況、市場や社会全体の動向など、DX推進関連のことを幅広く研究し、施策に役立てます。
DX推進計画(デジタル戦略)の立案
企業の経営戦略に基づくDX推進計画を立てることも、DX推進体制の重要な役割です。自社の課題や強み、ビジョンなどを踏まえ、最適なデジタル戦略を立案します。
個々のデジタル施策で十分な成果を上げるには、何より戦略の正しさ(進むべき方向性)が重要です。
DX人材に必要なスキル要件の定義
デジタル戦略を立案したら、その実行に必要な人材像を策定します。人材像とは、DX人材にどのような技術や能力が必要なのかというスキル要件の定義です。
DX推進に必要なスキルを明確にすることで、自社の組織体制を俯瞰するとともに、不足する人材の種類や数を把握できます。
デジタル施策の実行支援
各事業部門によるデジタル施策の実行をサポートすることも、DX推進組織体制の重要な役割です。
例えば、リサーチの結果に基づき専門的な助言を行なったり、実際に技術的な支援をしたりします。
また適宜研修や教育、情報発信を実施し、社内のITリテラシーやDX推進に関する意識を高めることも大切です。
DXに関する人員や予算の管理
DX推進に対して無尽蔵に経営資源を投入できる企業はごく一部です。多くの企業では、限られたリソース(ヒト・モノ・カネ)をやりくりしてデジタル施策を進めます。
そのため、今ある人材や予算を最大限に活用し、効果的にDX推進を実現していく体制を整えることも重要です。
常にプロジェクトの進捗を把握し、最適なリソースの割り振りを考えなければなりません。
各種の変更に関するリスク管理
DX推進は基本的にメリットの大きい取り組みですが、実施にあたってはさまざまなリスクが想定されます。
例えば、既存システムから新しいシステムに切り替える際のトラブル、業務フローの大幅な変更に伴う混乱などです。
そうしたリスクを管理し、重大な損害を予防することも、DX推進体制に求められる重要な役割になります。
業務システムのアップグレード
DX推進で十分な成果を上げるには、進捗を見ながら適宜取り組みを改善していくことが必要です。
その中でも重要になるのが、導入したシステムやツールのアップグレード。必要に応じて機能を拡張、再構築して、より良い性能を目指します。
しかし、プログラミング知識のある人材を持たない企業にとって、自社の体制内でシステムを更新するのは難しいといえます。
開発スキルが不十分な場合は、無理に自社の組織体制で内製化しようとせず、外注や既製品を活用するのも良いでしょう。
月額5万円で使える「MICHIRU RPA」
MICHIRU RPAは、専門的な開発スキルを持たない組織体制におすすめのツールです。ロボットおよびAIによって日々の定型業務を自動化し、大幅な業務効率化を達成できます。
また使いやすさに優れていることもMICHIRU RPAの売りです。
プログラミング知識がなくても簡単にシナリオを作れます。さらにAIがデータを学習するため、使えば使うほど業務が効率化されていきます。
そのため、専門的なIT人材はいない体制の中で技術的な改善を内製化したい企業にもおすすめです。
より良い推進組織を構築するポイント
DX推進のためにより良い組織体制を構築するためには、以下のポイントを意識してみてください。
全社員のDXリテラシー教育を
DX推進の取り組みを全社的に進めるには、全社員のDXに関する意識やITリテラシーをベースアップする必要があります。
DXの定義や必要性、自社のDX推進計画などを教育する機会を設けましょう。
適切な教育によって多くの社員がDX推進の意義と必要性を認識すれば、デジタル施策の実行において社員の協力を得やすくなります。
部門を超えた協力体制を作る
DX推進で十分な成果を上げるには、社内で全社的な協力体制を構築する必要があります。
事業部門ごとにデジタル施策に取り組むだけでは、その効力は限定的です。
一方、事業部門の枠組みを超えてノウハウを共有、データを活用できる体制を作れれば、大きな効果が見込めます。
協力体制には、全ての事業部門がDX推進の全社的なイメージを理解すること、各部門の権限や決裁者を明確にすることなどが必要です。
優秀な人材はリーダーとして育成
モチベーションが高い人材、能力に秀でた人材などは、DX推進のリーダーとして育成するのがおすすめです。
現在、日本全体でデジタル人材が不足しており、外部から優秀な専門家を登用できる保証はありません。
そのため、システムの開発や再構築をはじめ、専門的な業務に携わるデジタル人材も、自社で育成・調達するのが望ましいといえます。
自社の組織体制内で育てた人材のほうが、自社の現状を正しく理解して業務にあたるため、より精度の高い変革が可能になります。
また内製化することで、改修やトラブル対応に柔軟かつすみやかに対応できるようになることも魅力です。
組織体制を進化させていく
DX推進の組織体制は、一度構築したら終わりではなく、段階を踏んで進化させていくイメージを持つのが良いでしょう。
例えば、トップダウン型のDX推進体制では、まず経営者直下のDX推進部門がリサーチやデジタル戦略の立案を主導します。
次に各事業部門にもDX推進のチームを作り、それぞれでデジタル施策にあたってもらいます。
やがてはDX推進部門に権限を集中させ、各事業部門のチームへトップダウンで指示や助言を送れる体制を構築。
こうした過程で社内のDX人材を増やしていけば、全社的により良いDX推進に取り組める体制が整います。
DX推進体制の進化(一例)
- 経営者直下にDX推進部門を作る
- 各事業部門にもDX推進チームを作る
- トップのDX推進部門と各事業部門のチームをつなぐ
外部のサービスも活用する
DX推進の取り組みにかかわる全てを、無理に内製化する必要はありません。
自社で完全な組織体制を構築するのが難しい場合は、外部の力も積極的に取り入れるのが良いでしょう。
例えば、DX戦略の立案においては、ITコンサルタントの力を借りても構いません。またシステムの運用保守等、技術的な業務は外注することで負担が下がります。
外部サービスを探す際は、当社の「MICHIRU RPA」もぜひ候補の一つとして活用をご検討ください。
DXの組織づくりに関わる成功事例
以下では、DX推進に向けた組織体制の整備に関する先進的な事例をいくつか紹介します。
事例1. 中外製薬株式会社
中外製薬株式会社は、DX推進について進歩的な上場企業を表彰する「DX銘柄2022」でグランプリに選ばれました。ユニークな組織体制を整備し、デジタル技術の活用で医薬品事業を変革しようとしています。
中外製薬が取り組むDX推進の目玉となるのが「Digital Innovation Lab(DIL)」という組織体制。
DX推進に関する社員のアイデアを吸い上げ、具現化する仕組みです。過去に400以上のアイデアから10以上の本格開発が行われました。
もう一つ、注目すべきなのが「Chugai Digital Academy」。DX推進に携わる専門的なデジタル人材を自社で育成する体制です。
すでにデータサイエンティストをはじめとする10名以上を育成しており、十分な成果を上げています。
事例2. 株式会社フジワラテクノアート
株式会社フジワラテクノアートは、中小企業の優れたDX施策を表彰する「DXセレクション2023」のグランプリ企業。
醤油や味噌、日本酒といった醸造食品の製造機械を手掛ける事業にデータとデジタル技術を活用し、経営を変革しました。
体制整備の面では、部門横断のDX推進委員会を発足させ、自社主導でのデジタル化に挑戦。意欲的な社員が、必要に応じてスキルや資格も得ながら、システムの構築や運用を内製化することに成功しました。
創業90年を超える老舗企業であるため、当時のITリテラシーは低め。
しかし、経営者が全社的にDX推進のビジョンを熱く説き、全ての社員が「自分ごと」としてデジタル化に取り組める組織体制を構築しました。
ベテラン社員に対しては、DX推進委員会が何度も繰り返し、DXの意義や取り組み内容を説明したといいます。
事例3. 愛媛県
2021年3月、愛媛県では知事と全市町の首長が日本で初めて「県・市町DX協働宣言」が行われました。
その後、県・市町DX推進会議が発足し、県と県内市町が「チーム愛媛」としてタッグを組み、DX推進に取り組んでいます。
愛媛県のDX推進は、県が中心となり、トップダウンでデジタル化を進めるモデルケースです。
研修やワークショップ、セミナー、事例の共有などを通じて、各市町が円滑にDXを進められるよう、細かい支援を実施しています。
また今後は、より現場のニーズにあったDXを実現できるよう、ボトムアップやプロジェクトベースなど、現場主導の組織体制も整備されます。
事例4. 福島県
福島県も県がリーダーシップを発揮し、県全体のDX推進体制を整備しています。
具体的には「ICTアドバイザー市町村派遣事業」に取り組んでいます。アンケートなどで各市町村の課題やニーズを把握した上で、それぞれの組織にICTの専門家を派遣する事業です。
また9割の市町村が研修会を要望した現状を踏まえ、「市町村DX推進トップセミナー事業」も実施しています。
研修や勉強会を開催することで、DX推進の取り組みや組織づくりに関する各市町村の意識を高めています。
まとめ DXがしやすい組織づくりを!
DX推進で失敗しないためには、デジタル施策を安定的かつ継続的に進められるような体制づくりが必要です。
組織全体でデジタル化できるような体制を作ることで、より大きな成果が見込めます。
これを機会にぜひ、DX推進にふさわしい人材の配置や部門の編成などについて深く考えてみてください。