企業がDX推進を成功させるには押さえるべきポイントがあります。
ポイントを押さえずにやみくもにDX化を進めようとした場合、失敗確率が高くなるので注意する必要があります。
この記事では、DX化のプロセスや、企業のDX化を成功させるポイント、人事のDX化に役立つツールやシステムを紹介します。
まずはDX化のプロセスを確認
DX化成功のポイントについて知る前に、DX推進のプロセスを抑えることが重要です。
正確にはDX推進には決まった順序はありませんが、ここでは効率的な進め方の一例を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
①現状の調査
まずは、どこをどのように改革すればいいのかについて、現状を調査します。
自社の課題や業務効率が低い箇所、刷新すべき老朽化システムなどを洗い出し、現状抱えている問題点をできるだけ洗い出していきましょう。
②DXに関するビジョン・経営計画の策定
現状と課題の整理が完了した後、DXに関するビジョンと経営計画の策定を行いましょう。
明確に「DXを実現して何を達成したいのか」を定めることで、プロジェクトが進行する過程でも方針がブレず、最終目標に向けて着実に進めるようになります。
逆に、ビジョンや中期経営計画においてDXの目標が不明確なまま進めてしまうと、予期せぬ結果を招いたりDX推進が行き詰まったりしがちです。
そうならないよう、まず初めに必ず目標を明確にする必要があります。
③ロードマップの策定
ビジョンや中期経営計画を策定した後は、戦略の内容をより具体的に落とし込みロードマップを制作する必要があります。
「どの部署が何をいつまでに実施し予算はいくら必要か」といった具体的な計画を明確にすることで、DX推進のポイントを明確化します。
このDXロードマップは今後の進行に大きな影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。
また、経営層のみでは判断しきれない要素も存在するため、場合によっては現場社員との連携も重要です。
そのような状況下で計画を進めることで、DX推進のポイントを的確に抑えることができます。
④DX推進組織の構築・変革
ロードマップが完成したら、DX推進のための組織の構築・変革を行います。
組織の体制や人材配置を見直し、DXをスムーズに推進できる環境や制度を整備することがポイントとなります。
ここからは、DX推進の際に必要となるチーム編成のポイントを3つ紹介します。
これらのポイントを押さえることで、DX推進成功のために組織編成が可能になるでしょう。
DX推進チームの編成
DX推進の中心となる専任のチームを編成します。
このチームはDXの戦略策定やプロジェクト管理などを担当し、組織内のDX活動をリードします。
経験豊富なメンバーや異なる部門からの代表者を選出することで、クロスファンクショナルチームとしての役割を果たします。
DXチャンピオンの育成
DXチャンピオンとは、DXの理解度が高く積極的にDX推進できる人材のことです。
組織内でのDXの啓蒙活動や、ベストプラクティスの共有などを担当しDXの浸透を図るのが役割となります。
組織内にDXに対する情熱と専門知識を持った人材を特定し、育成・任命しましょう。
DX推進のガバナンス体制の確立
DX推進の成功のためには戦略的な決定や進捗状況の管理がポイントとなります。
ガバナンス体制を確立し、DX推進の進行状況を監視・評価する仕組みを構築します。
さらに、経営陣や関係部門の代表者からなる委員会や定期的なレビューミーティングを設けることで、DXの推進状況を管理し必要な調整や支援を行います。
⑤実行
ロードマップの制作と組織体制の構築など、DXを推進できる環境が整ったら実行に移りましょう。
ただし、大規模なDXに一気に取り組むと、多くの時間とコストがかかりDX部門がコストセンターになりがちです。
そのため、企業全体でDX推進するよりも先に、デジタル化によって業務効率化や生産性向上を成功させましょう。
DX推進のメリットを社員全体が理解できるようになってから、全社でDX推進の実施していきます。
⑥定期的なPDCAサイクルによりビジネスモデルの変革まで繋げる
DX推進を実行し始めたら定期的なPDCAサイクルによって、ビジネスモデルの変革につなげていきましょう。
DX推進を実際にスタートすると、計画通りにいかないことも多数出てきます。
- 部署間の連携に問題が生じる
- 人材の採用や育成がうまくいかない
- システム改修が想定通りに進まない
こういった課題が出てきたときには、PDCAサイクルによって失敗の原因を追究し、成功する方法を模索する必要があります。
DX推進はビジネスモデルそのものの変革なので、そう簡単には達成できません。
継続的にPDCAサイクルを回し、長期視点でプロジェクトを行うのが成功のポイントとなります。
企業のDX化を成功させるポイント
企業のDX化を成功させるには、押さえておくべきポイントが存在します。
ここでは、企業のDX推進に必要なポイントを5つ紹介していきます。
①役員層だけでなく社内全体を巻き込んだ改革を行う
DS推進の際には役員層だけではなく、社内全体を巻き込んだ改革を行うのが大切なポイントです。
DX推進はビジネスモデルそのものを大きく変える組織改革なので、実現のためにはあらゆる部署や部門の認識をすり合わせ、協力することが成功のポイントとなります。
具体的には以下のような取り組みを行うと、DX推進成功の可能性が高まるでしょう。
- 定期的な会議やワークショップを開催し、DXに関する情報や取り組みの進捗状況を共有する
- 異なる部門からの代表者を集めたチームを編成し、DXプロジェクト推進を行う
- DX推進に関する教育やトレーニングプログラムを導入し、従業員のスキルや意識を向上させる
これらの施策を実施し、社内全体のスキルやアイデアを結集させDX推進に挑むのが成功確率を上げるポイントとなります。
②DXの目的はビジネスの変革であることを正しく理解する
DX推進の目的がビジネスそのものを変革であることを正しく理解することも、大切なポイントとなります。
この点を正確に理解していないと、システムの一部にデジタルを導入し業務を効率化しただけで終わってしまい、DX推進にたどり着かないことも珍しくありません。
そのため、DXの目的がビジネスの変革であることを、正確社員全体で共有し理解する必要があります。
③社内をけん引するIT人材の確保と育成
DXに関する取り組みを行う際は、DX推進の中心となるデジタル人材と呼ばれる人材が必要となります。
デジタルリーダーには以下のスキルが求められます。
- 自社のビジネスを深く理解している
- データやデジタル技術を活用している
- 改革の方向性を定める力がある
リーダーはこれらのスキルを持ち、なおかつ目標の実現に向けて行動できる人材でなければなりません。
こういった特徴を持つ人材がいない場合は、自社内で教育するか外部のリーダーに依頼しましょう。
また、外部リーダーに依頼する場合は、社内外の連携をどのように進めるのかについて、検討しなければなりません。
プロジェクト全体をけん引できる人材が見当たらないのであれば、事前に外部と調整しておく必要があるでしょう。
④複数部署間で連携する
DX推進において複数部署の連携が必要な理由は、ビジネスプロセスにおける一貫性の確保と効率化にあります。
異なる部署間で情報の共有やデータの連携といったプロセスを統合することで、業務プロセスをシームレスにし効率化できるからです。
一例として、販売部門が新しいオンライン販売プラットフォームを導入する場合、IT部門との連携が必要です。
IT部門はシステムの設計と開発を担当し、販売部門は要件を共有しフィードバックを行います。
こういった部署間の連携により、スムーズなプラットフォーム導入と運用が可能になるのです。
このように組織内の異なる部署が連携し情報とリソースを共有することで、ビジネスプロセスの一貫性と効率化が実現され、持続的なイノベーションと顧客体験の向上が可能となります。
⑤パートナーシップを構築する
DX推進成功のためには、他社とのパートナーシップを構築することもポイントとなります。
パートナーシップを築くことで、組織内には存在しない専門知識や技術を持つ企業と連携でき、DXプロジェクトの成功に必要なスキルセットを補完することができるからです。
例えば、セキュリティ企業とのパートナーシップを結ぶことで、自社には存在しないセキュリティ面での専門知識を得られ活用できます。
このように、DX推進においてパートナーシップの構築によって、組織の能力拡張やリソースの補完が可能になります。
適切なパートナーとの連携により、DX推進の成功を支える効果が期待できるでしょう。
経済産業省「DX推進ガイドライン」を確認
「DX推進ガイドライン」とは、2018年に経済産業省が発表したDX推進に関するガイドラインです。
DX推進のための経営陣のあり方や企業の組織体制の構築方法、ITシステムの構築方法などDX推進に必要なポイントがまとまっています。
DX推進ガイドラインは令和4年に、経済産業省によって「デジタルガバナンス・コード」と「DX推進ガイドライン」のポイントをまとめる形で「デジタルガバナンス・コード2.0」として発表されました。
その中では以下のような内容が記載されており、経営者に求められる対応がまとめられています。
ビジョン・ビジネスモデル | DX推進成功に必要となるビジョンの描き方や、ビジネスモデル構築のポイントを示している |
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戦略 | DX推進を成功させる戦略のポイントを「組織づくり・⼈材・企業⽂化に関する⽅策」「IT システム・デジタル技術活⽤環境の整備に関する⽅策」の2つの項目に分け解説している。 |
成果と重要な成果指標 | デジタル技術を活用する戦略の達成度を測るための、成果指標策定のポイントを説明している |
ガバナンスシステム | DX推進成功に向け企業全体を統治する上でのポイントを示している |
このように、企業のDX推進に必要不可欠なポイントがまとまっているので、「デジタルガバナンス・コード2.0」はDX推進を目指す経営者にとって必読の文書と言えます。
DX推進の際にはこの文書に目を通し、DX推進の手順や成功のポイントを押さえた上で、行動に移るといいでしょう。
参照:デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)
DX推進に役立つツールやシステム
DX推進の際に導入すべき、役立つツールやシステムにはどういったものがあるでしょうか?
ここでは、DX推進の際におすすめのツールやシステムを3つ紹介します。
タレントマネジメントシステム
タレントマネジメントシステムとは、組織が人材を効果的に管理するためのソフトウェアツールやプロセスのことを指します。
そもそもタレントマネジメントとは、従業員一人ひとりの能力・スキル・経験といった情報を、採用や育成・配置等に活用し企業の発展につなげる人材マネジメントのことです。
そしてタレントマネジメントの実現のために、人材データを集約・一元管理し、高度な意思決定を可能にするシステムがタレントマネジメントシステムと呼ばれます。
タレントマネジメントシステムの導入には以下のような効果があります。
- 人材不足に対応:限られた人材をどのようにマネジメントすれば、効果を最大化できるかが分かる
- 企業の競争力強化:人材のマネジメントによって生産性が上がり結果として競争力強化につながる
- 人材の多様化 :従業員一人ひとりに最適な人材マネジメントが可能になる
このように、タレントマネジメントシステムの導入によって、今いる人材が最大限の効果を発揮できる環境を作れるようになり、業務効率化や売上アップにつながる可能性があります。
RPAシステム
RPAとはRobotic Process Automationの略で、パソコンで行われる提携業務を自動化し業務量を短縮できるシステムです。
RPAを用いることで、以下の2つの効果が得られます。
- 定型業務の削減:繰り返し行われる定型業務を自動化することが可能。時間のかかる単純なタスクや煩雑な手続きを効率化し、従業員はより戦略的な仕事に集中できるようになる。
- ヒューマンエラーの削減:手作業によるミスや情報の漏れ、重要なデータの誤入力などのリスクを軽減し、正確性と品質を向上させられる。
RPAの導入にはこういったメリットがあるので、社員の時間が定型業務に奪われている場合には、導入によって大きな効果を得られるでしょう。
BIツール
BIツールとはBusiness Intelligenceツールの略です。
蓄積された大量のデータを収集し、分析して迅速な意思決定をサポートするツールです。
人事戦略において、データを活用する際に非常に有益なツールとなります。
- データ活用を最適化できる:データをわかりやすく表示し、リアルタイムで分析結果を提供するため、迅速な意思決定と効率的な業務が可能となる。
- 予測と洞察が向上する:ビッグデータを分析することで、トレンドや顧客行動を把握し、将来の需要予測や市場トレンドを把握できる。
- データ活用による戦略立案が可能になる:リアルタイムデータの分析により、組織の強みや改善点を見つけ、戦略的な意思決定を行い、競争力を高められる。
BIツール導入にはこういったメリットがあり、単体で導入するよりも、先ほど紹介したタレントマネジメントシステムやRPAシステムと組み合わせて活用するのが有効活用のポイントです。
タレントマネジメントシステムを活用しながらRPAを組み合わせ、人事データを蓄積しBIツールで分析することで、データに基づいた人事戦略が可能となるでしょう。
【記事まとめ】企業のDX推進のプロセスとポイント
企業のDX推進のプロセスは、はじめに現状の調査を行いロードマップを策定したうえで、実際の行動に移る必要があります。
DX推進を実行すると一度でうまくいかないことが多数出てくるので、PDCAを回しながら改善し課題をクリアしながらプロジェクトを進めていくのが成功のポイントとなります。
また、DX推進の意味を正しく理解し、経営層と社員が一丸となり企業全体が協力して一つのゴールに向かって進んでいくことも、DX推進で結果を出すポイントと言えるでしょう。