近年、一般企業においてDX推進が重要視されていますが、自治体においても同じようにデジタル化の推進が必要になっています。
今後少子高齢化が進み職員の不足が予想されるため、デジタル技術を活用することで少ない職員数で行政サービスを提供しなければならないからです。
そこで総務省は、2021年に自治体DXの推進手順を「自治体DX推進手順書」という文書にまとめ発表しました。
この記事では、総務省による自治体DX推進手順書の概要や推進ステップをまとめて解説します。
そもそも自治体DXとは
そもそも自治体DXとは、自治体がデジタル技術やデータを活用することで、行政サービスや業務フローの変革を行うことです。
一般的にDXとは、企業がデジタル技術を活用することでビジネスモデルを変革させ、企業の競争力を高め利益を増やすことを指します。
つまり、企業が行うDXが会社の利益のために行われるのに対し、自治体DXは住民のために実施される点が異なっています。
「自治体DX推進計画」の趣旨
自治体DX推進計画は、デジタル社会の構築に向けて、自治体が取り組むべき施策を総務省がまとめ発表したものです。
政府は2018年に、様々な行政サービスのデジタル化やデジタルサービスの普及などの方針を示した「デジタル・ガバメント実行計画」を閣議決定しています。
この「デジタル・ガバメント実行計画」の中で、自治体が重点的に取り
組むべき事項・内容を具体化するとともに、総務省及び関係省庁による支援策等をとりまとめたものが「自治体DX推進計画」です。
「自治体DX推進計画」に基づき、全自治体においてデジタル社会構築に向けた取り組みを進めていく計画となっています。
「自治体DX推進手順書」の概要
「自治体DX推進手順書」とは、2021年7月に総務省が作成した文書で、自治体がDXに取り組む際の標準的な手順が示されています。
「全体手順書」「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書」「自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書」「参考事例集」の4つから構成されます。
とくに「全体手順書」では自治体DXの手順が4つのステップにまとめられており、この箇所を理解することで自治体DXの推進手順が分かります。
そこで、ここからはここでは「全体手順書」に記された4つのステップについて詳しく解説していきます。
ステップ0:認識共有・機運醸成
ステップ0では、実際にDX推進の取り組みを行う前段階として、職員全体で問題意識を共有しDXの必要性を認識します。
とくに首長や幹部職員によるリーダーシップの有無やコミットメントの度合いは、DXの成否に直結するため非常に重要になります。
また、一般職員もDXについて理解し、組織全体でデジタル化を推し進める機運を醸成する必要があります。
ステップ1:全体方針の決定
ステップ0でDXについて知識を深め全体の認識を共有したら、全体方針を決定します。
原則的な意義や標準的な取り組み内容を理解した上で、地域の現状も考慮に入れつつ、実際にDXを推進するための具体的な計画を策定することが必要です。
具体的には、まずDX推進によってどのような自治体の姿を実現するのかを検討し、明確な目標を設定します。
そのうえでDX推進のビジョンを示し、デジタル化実現の大まかな計画を示した工程表からなる「全体方針」を決定し自治体全体で広く共有します。
このとき、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の重要性を考慮することが大切になります。
BPRとは既存の業務内容や業務プロセス、組織構造などを根本的に見直し、改革することを指します。
つまり、現在の業務をデジタル化して効率化するだけにとどまらず、利用者の利便性を高めるために根本的に革新できるところが無いかを検討するのです。
たとえば紙での申請をオンラインにするだけではなく、申請そのものを不要にできないかという観点で考え、業務プロセスの見直しを検討することなどが含まれます。
こうした施策も行えないかについても考慮しつつ、全体方針を決定していきます。
ステップ2:推進体制の整備
DX推進を行う全体方針が決まったら、実際にデジタル化を行うための体制を整備します。
まず、DXを行う司令塔としてDX推進担当部門を設置し、各部門と緊密に連携できる体制を構築します。
そのうえで、各部門に最適なデジタル人材が配置できるよう、人事・研修担当部門と連携し人材の確保を図ります。
人材は自治体で研修を行い育成し、そのうえで十分な能力・スキルを持つ人材の配置が難しい場合には外部人材の活用も検討すべきとされています。
ステップ3:DXの取組みの実行
ステップ3では、自治体DX推進計画で制定されているガイドラインなどに基づき、個別のDXの取り組みを計画的に実行します。
ただし、DXは一度実行したらそれで完了というわけではなく、各自治体が進捗管理をしつつPDCAサイクルを回すことで、効果の改善・改良をはかる必要があります。
また、迅速な意思決定が必要となる場合には、「OODA」のフレームワークに活用し柔軟かつ速やかに意思決定を行う必要があります。
OODAとは「Observe(観察、情報収集)」「Orient(状況、方向性判断)」「Decide(意思決定)」「Act(行動、実行)」の頭文字をつないだ言葉で、迅速な意思決定を理論化したものです。
自治体DXにおいては、OODAループを適用することで、より効率的に意思決定を行い、迅速かつ適切な対応を取ることができます。
PDCAやOODAのどちらを使うにしても、これらのフレームワークを活用した、迅速で柔軟な意思決定が自治体におけるDXを成功に導くうえで必要不可欠と言えます。
自治体DXの先進事例
先進自治体ではデジタル化を活用した自治体DXが推進されており、利用者にとってよりよいサービスを提供するための取り組みが行われています。
具体的にどのような事例があるのか、3つ紹介していきます。
窓口業務に関する事例
窓口業務をデジタル化し、職員の負担を軽減している例も存在します。
具体的には以下のような内容が、窓口業務のDX化に該当します。
- 手続きのオンライン化により、来庁せずにスマホからの操作で要件が完了する
- 書類への記入や押印を廃止し、タブレットへのサインに切り替えている
- 案内業務を一部AIが担当し、分かりやすく親切な案内を実現している
先進自治体ではこういった取り組みを通して、職員の負担を軽減するとともに、利用者の利便性の向上しています。
通常業務を効率化すると利用者への対応は不親切になりがちですが、両方をデジタル化すれば、業務効率化と利用者の満足度向上を両立することも可能です。
今後はマイナンバーの有効活用やテレワークの普及により、さらに職員の窓口負担は小さくなっていくでしょう。
電話対応に関する事例
電話対応にAIを導入することで職員の負担を減らす事例です。
多くの自治体では、電話の数が多く対応が大変な上に、誤った部署に入電があることで取次に時間を奪われることも多いのが実情です。
そこでAI電話を採用することで、職員が電話対応に追われることがなくなり、自身の業務に専念できるようになりました。
また、AIの対応のみで要件が完了することも多く、職員が電話対応せずに対応を終えられるケースが多くなり、精神的な負担を軽減できているのもAI導入のメリットと言えます。
住民への情報提供に関する事例
災害時や緊急時に住民に情報を知らせる際に、デジタル技術を活用しているケースもあります。
具体的には以下のような場合が該当します。
- IoTセンサーによる災害状況の把握と住民への周知
- 防災マップ、避難所マップ、雪かき情報などをインターネットを通じて住民に共有
IoTセンサーを活用すれば、人間の見張りがいない時間帯や危険個所であっても情報を入手し住民へ知らせることが可能です。
たとえば、冠水センサーなどのIoTセンサーを街路灯などに取り付けておき、道路が浸水した際に状況を把握し住民に周知することで、事故のリスクを避けられます。
リアルタイムでハザードマップをAIが自動作成し、インターネット上で閲覧できるような仕組みです。
また、自治体によっては災害時にインターネット通信が途切れることの無いよう、企業との協力でダウンタイムの無い通信網を構築している自治体も存在しています。
記事まとめ
自治体DX推進手順書は、総務書が自治体がDXを推進する際の手順をまとめ発表した文書です。
今後少子高齢化が進み職員の数が不足するため、DX推進によって少ない人数での行政サービス提供は必要不可欠となります。
MICHIRU RPAは毎日の業務をRPAに置き換えられる、業務効率化のためのITツールです。
書類作成やデータ入力を完全自動化できるので、自治体DXにおいても導入により職員の負担を減らすことが可能です。
月額5万円〜で導入可能のため、自治体DXを推進する際に何から手を付けていいか分からない場合、まずはMICHIRU RPAを導入するのもいいでしょう。