企業のDX推進プロジェクト。効率的な進め方と成功の秘訣を解説

DX推進プロジェクトより、ビジネスモデルを変革しよう

企業のDX推進プロジェクト。効率的な進め方と成功の秘訣を解説

世の中のデジタル化が進み、スマホの所有率が大幅に上がっている現在の状況では、あらゆるビジネスがデジタル化に対応することが求められています。

そうした状況を背景に、様々な企業が注目しているのがDX推進プロジェクトによるビジネスモデルの変革です。

ただ、DX推進プロジェクトにはデジタルの高度な知識が求められる上に、達成に時間がかかり工程も複雑なので成功率は高くないのが現実です。

そこでこの記事では、成功しやすいDX推進プロジェクトの進め方や、ありがちな失敗例とその対策、プロジェクト成功の秘訣などを解説していきます。

目次

現代の企業に必要不可欠!DX化(デジタルトランスフォーメーション)とは?

現代の企業に必要不可欠!DX化(デジタルトランスフォーメーション)とは?

デジタル化が進むにつれてDX化という言葉をよく耳にするようになりましたが、そもそもDX化とは何を指すのかや、デジタル化とは何が違うのかがわからない方も多いでしょう。

そこでここではDX化の意味を解説します。

DX化とは?

そもそもDX化とは企業がデータやデジタルの技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確保することです。

DXとはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略語ですが、デジタルを活用した変革のことを指しています。

DX化を単なる業務のデジタル化と解釈している人が多いのですが、それは実は誤りです。

紙媒体のデータをデジタル化したり、入力作業をAIで自動化したりという具合に、業務の一部分にデジタルを導入しただけではDX化とは言えないのです。

デジタルトランスフォーメーションという単語が意味する通り、デジタルを活用してイノベーションを起こしてはじめて、DX推進に成功したということができます。

企業にとってDX化が必要な理由は?

昨今、日本社会全体でDX化の必要性が叫ばれているものの、昔ながらのやり方で事業を営んでいる場合、その必要性を特に感じない方もいらっしゃるでしょう。

そこでここからは、一体なぜ企業にとってDX化が必要とされているのかを解説していきます。

企業の競争力の向上

DX推進するとデジタル技術を活用したサービスを提供できるようになり、競合他社よりも優位な立場になれるのです。

現代は同じようなサービスや消費があふれているため、競合他社との差別化はなかなか難しい面がありますが、デジタルの技術を使えば独自の強みを作り出すことも可能です。

データ解析をもとにしてユーザーのニーズを理解し、そのうえで独自のサービスを開発し提供するため、今までになかった新しいサービスを作りだせるからです。

たとえば、住まいの水回り製品や建材を開発・提供する株式会社LIXIL社は、オンラインでモデルルームの見学ができる「オンラインショールーム」を開発し独自のサービス提供に成功しています。

このように、デジタルの活用によってほかにはない独自サービスを開発することで、競合優位性を作り出せるのがDX推進すべき理由の一つです。

業務効率化による生産性の強化

DX推進すると業務が効率化でき生産性向上が期待できます。営業やマーケティングといった様々な業務のIT化によって、人間が働く時間を短縮できるからです。

生産性が向上すれば人件費の削減が可能になったり、ヒューマンエラーの削減に繋がったりと様々なメリットがあります。

働き方改革

DX推進は働き方改革にもつながります。

業務のデジタル化が進むことで、離れた場所に住んでいてもオフィスに出勤せずにプロジェクトを進められるようになるからです。

リモートワークの導入には、以下のようなメリットがあります。

  • 柔軟な働き方を希望する優秀な人材を居住地を問わず雇用できる
  • 通勤の交通費を削減でき経費できる
  • オフィスフロアの賃貸料が無くなる

このように、働き方改革には様々なメリットがあり、DX推進によってこれらの利点を享受できるようになります。

【ステップ別】DX推進プロジェクトの進め方

【ステップ別】DX推進プロジェクトの進め方

DX推進のプロジェクトを進める手順を6ステップで解説します。

このステップを明確にすればビジネスを変革し、事業にイノベーションを起こせる確率が上がるでしょう。

①現状の調査

まずはDX推進について、現状の調査からスタートしましょう。

特に以下の内容はしっかりとリサーチする必要があります。

  • 成功または失敗したDX企業の要因
  • 市場(顧客)のニーズやインサイト
  • 技術、人材、システム、データといった自社リソース

また現状調査の際には、以下の基本的なフレームワークを活用しましょう。

  • 3C(市場・競合・自社)の分析
  • PEST(政治・経済・社会・技術)の要素の把握
  • SWOT(強み・弱み・脅威・機会)の分析

DX推進のプロジェクトを円滑に進めるには、この過程が非常に重要となります。

リサーチには手間と時間がかかりますが、手を抜かずに行うようにしましょう。

②DXに関するビジョン・経営計画の策定

続いてDX推進によって成し遂げたいビジョンや経営計画の策定を行います。

DX推進によって達成したい内容を明確にすることで、プロジェクト進行中に軸がぶれることなくゴールに進んでいけるからです。

一方、ビジョンや経営計画を定めずにDX推進の目的が不明瞭なままスタートすると、予想外の結果になったり計画が頓挫してしまいます。

アナログデータをデジタルデータの変更したり、業務の一部にAIを導入したり、といった段階で終わってしまってはDX推進にはなりません。

これでは業務の一部にデジタルを導入するだけで終わっており、ビジネスモデルそのものには何の変化もないため、DX推進に成功したとは言えません。

プロジェクト成功のためには、DX推進成功後の事業を明確に描く必要があります。

③ロードマップの策定

ゴール設定が出来たら、プロジェクトをどのように進めるのかについて、ロードマップを制作していきます。

何にいくらの予算を割くのかや、部署ごとに行う業務内容を決め、具体的な計画を明確にしてください。

ロードマップはDX推進で非常に重要なステップになります。

ロードマップの内容次第で、プロジェクトが成功するかどうかが決まる可能性も高いです。

経営層だけではなく、現場社員も巻き込んでロードマップを策定するのが最善といえます。

④DX推進組織の構築・変革

ロードマップができたら、DX推進のプロジェクトを進める体制を作っていきます。

組織の構成や人材の配置を考え、プロジェクト成功確率が高まる環境を社内に構築していきましょう。

DX推進の際に考えられる体制には以下の3種類が挙げられます。

IT部門拡張型:従来のIT部門を拡張する

既存のIT専門部門が中心となり、DX推進のプロジェクトを進める組織の構築方法です。

組織メンバーのデジタルスキルが高いので、社内システムの刷新などは迅速に進むでしょう。

ただ、企業の事業全体に精通している人は少ないので、DX推進のプロジェクトは意外と進みにくい可能性があります。

このタイプの組織を構築するなら、ビジネススキルの高い他部署のメンバーがプロジェクト推進をサポートする必要があるでしょう。

事業部門拡張型:各部門内にDX推進部門を設立する方法

事業部門が業務の延長としてDX推進を行う方法です。

事業全体について理解しているメンバーがプロジェクトを進めるので、IT部門との連携が十分でないとデジタル技術の活用に苦労する可能性は高いでしょう。

専門組織設置型:DX推進を専門で行う部署を設置する方法

DX推進のプロジェクトの専門組織を構築する方法です。デジタルやビジネスなど、様々なスキルを持つ人材をバランスよく配置できるので、プロジェクトが円滑に進む可能性も高いでしょう。

現在、DX推進に成功している企業の多くは、このタイプの組織を構築しています。

そのため、どの組織タイプがベストかの判断が難しい場合は、DX推進の専門組織を設置するのが、イノベーション成功につながる確率が高いでしょう。

とはいえ、最適なチーム編成は事業内容や規模、状況によって異なります。

自社の状況を分析し、最適な組織編成を選ぶようにして下さい。

⑤実行

DX推進できる組織体制が整ったら、いよいよプロジェクトを実行していきます。

ただ、いきなり大規模な改革を行おうとすると、時間もコストも莫大になりがちなので慎重に進める必要があります。

ほかの部署の理解を得る必要もあるので、DXの前段階であるアナログデータや業務プロセスのIT化を行い、業務の一部をデジタル化することから始めるといいでしょう。

このようにしてデジタルの活用によって、業務効率化や生産性向上が可能であることを企業内の共通認識にしていけば、企業全体でDX推進プロジェクトを進めるマインドを共有できるようになるでしょう。

⑥定期的なPDCAサイクルによりビジネスモデルの変革まで繋げる

DX推進プロジェクトを進める際には定期的にPDCAサイクルを回しながら、ビジネスモデルの変革につなげていく必要があります。

プロジェクトの途中では、事前には予想していなかった課題に直面し計画通りにいかないことがよくあります。

  • 他の部署との連携が円滑に進まず摩擦が発生する
  • 人材の採用や育成に課題が発生する
  • システム改修が予定通りに進まない

高確率でこういったことが起こるので、うまくいかない場合にはPDCAサイクルを回しながら、長期的な視野を持ってDX推進につなげていきましょう。

よくある失敗例とその対策を紹介

よくある失敗例とその対策を紹介

DX推進のプロジェクトは難易度が高く、世界的な大企業でも失敗していているケースが珍しくありません。

ここでは3つのよくある失敗パターンを紹介するので、自社のDX化の際には同じ失敗をしないようにしましょう。

曖昧な目標を設定し行動してしまう(P&G社の例)

アメリカの日用品販売企業のP&G社は、「地球上でもっともデジタルな企業」になるためにDX推進を開始しました。

このプロジェクトでは、あらゆる事業部門にテクノロジーを導入し、サービスを改善するという曖昧な目標が設定されていました。

しかし、目標がはっきりしないままプロジェクトが進められた結果、莫大な金額を投資したにもかかわらず得られた効果はわずかで、同業他社に対する競争力が低下することになってしまいました。

P&G社のDX推進がうまくいかなかったのは、DX化によって何を成し遂げるのかはっきりしないまま莫大な投資をし、プロジェクトを進めたことです。

開発するシステムやプロジェクト達成後の事業の姿を描かずに、漠然と「地球で一番」という目標を設定したため、DX推進に失敗した典型的なパターンと言えます。

この失敗例から、DX推進プロジェクトの達成のためには、最初にゴールを明確にすることが非常に重要であることがよくわかるでしょう。

部署や部門間の連携が取れていない(Ford社の例)

Ford社は2014年に輸送サービス市場への参入を目指し、「パーソナルモビリティ」の開発をイノベーションの軸にしたプロジェクトを発足させDX推進を目指しました。

プロジェクト推進を行う方法として、2016年に子会社(Ford Smart Mobility社)をシリコンバレーに設立し、その中で開発を進める方針を選択しました。

ほかの部門とは連携を取らず、子会社(Ford Smart Mobility社)のみで開発を行いましたが、これがあだとなってしまいました。

プロジェクトの中で他部署の力を借りることができないために、「パーソナルモビリティ」の開発は失敗に終わってしまったのです。

その結果、Ford社は2017年におよそ3億ドルの損失を出してしまったのです。

このFord社のケースから分かるのは、DX推進の際には、組織が一丸となってプロジェクトに取り組む必要があるというです。

Ford社のように子会社のみの力でDX推進という難易度の高いプロジェクトを達成するのは、どうしても無理があります。

DX推進は会社の業務全体に大きな影響を与えるので、プロジェクトを進める際には会社全体の力を終結させる必要があります。

長期的な視点を持っていない(GE社の例)

米国の大手複合機メーカーGEは、2011年に産業用ソフトウェア及びデータ活用事業において、世界をリードするデジタル企業へ変革を目指しDX推進のプロジェクトをスタートしました。

しかし、なかなか成果を上げられない状況が続き、長期間株価が低下した結果、短期的な業績アップに注力せざるを得ない状況に追い込まれてしまいます。

その結果、DX推進のプロジェクトは計画の途中で頓挫してしまい、2017年にはCEOのJeff Immelt氏が退任に追い込まれました。

GE社のプロジェクトが成功しなかったのは、長期的な視点が足りなかったためだと言われています。

同社はDX推進のプロジェクトの中で短期的な結果を出す施策ばかり優先し、達成に時間のかかる大きな変革については手つかずの状態でした。

その結果、業務全体に変革を起こすことはできず、DX推進プロジェクトの達成に失敗してしまったのです。

プロジェクト成功のためには、長期的な視点を持ち、PDCAサイクルを回しながら粘り強くプロジェクト成功のために行動し続ける持続力が必要不可欠です。

DX推進プロジェクト成功の秘訣とポイントを紹介

DX推進プロジェクト成功の秘訣とポイントを紹介

DX推進プロジェクトに成功し、業務やサービスにイノベーションを起こすには、他社のケースをそのまま真似るだけでは不十分な場合がほとんどです。

自社にあうDXの形を模索し、DX推進プロジェクトによって業務効率化や売上アップを達成するにはポイントを押さえてプロジェクトを進めていく必要があります。

ここではDX推進プロジェクトの成功に必要なポイントを3つ紹介していきます。

現場責任者の意識を醸成する

現場責任者の意識が十分にDX推進に向いている必要があるので、そのための意識を醸成する必要があります。

社員がDX推進のために行動しようとしても、現場責任者が過去の業務のやり方に固執してしまい、思うように進まないケースがあるからです。

そこでDX推進プロジェクトをスムーズに進めるには、現場責任者への教育が必要になります。

現場責任者に集中的にDX教育をし、さらにDXへの理解を持つ人材を現場責任者の付近に配置するなどして、現場責任者のDX推進スキルを向上させるといいでしょう。

スムーズな情報共有を行う

プロジェクトが滞りなく進むよう、社内での情報共有をスムーズに行う必要があります。

まず、部門・部署間で連携して情報を共有できる環境が必要となります。

基本的に企業のシステムは部門や部署別に組まれており、DX化によって社内でシステムを共有しようとすると、混乱が生じる恐れがあるためです。

また、現場と経営陣の間で意識を共有するのも必要不可欠です。

DX推進の必要性を現場が考えていても、経営陣の理想とズレていると必要性が認められないケースがあります。

そうなるとプロジェクト推進に必要なデジタル機器やシステムの導入が認められず、DX推進が進まなく恐れがあるのです。

お互いの認識をすり合わせるには、現場と経営陣がスムーズに意思疎通できる必要があります。

このように、DX推進プロジェクト成功のためには、部署・部門間の横の連携と、現場と経営陣の間の縦の連携の両方が求められます。

DX評価指標で現状を把握する

プロジェクトを行う上で、現在どの程度DX推進が進んでいるか分からなくなったら、経済産業省のサイトで6段階に分けて企業のDX度を診断しましょう。

また、独立行政法人「情報処理推進機構」の「DX推進指標自己診断フォーマット」を活用すると、自社のDX推進のレベル等をすることができます。

これらの分析結果を把握することで、現状を把握した上でアクションプランを作成し、プロジェクトを進めていくと成功率が上がるでしょう。

記事まとめ

記事まとめ

企業のDX推進を成功させるには、プロジェクトを進める適切な順番を知ったうえで、社内全体で協力する必要があります。

DX推進は事業の在り方を大きく変える巨大プロジェクトなので、長い時間や労力、費用がかかります。

そのため達成難易度は非常に高くなっており、プロジェクト成功のためには社内全体の意識を高く持ち、必ず成し遂げるという意識を醸成することが必要不可欠です。

また、動き出すまえに計画を立ててからプロジェクトを始めることも重要なので、事前に青写真を描き達成時の事業の姿を明確にしてからスタートするといいでしょう。

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