DXとは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、デジタル技術によって業務を改善するだけではなく、ビジネスモデルや組織、新事業まで及ぶ変革まで及ぶ変革を目的とします。
政府は目指すべきデジタル社会のビジョンとして、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」というスローガンを提唱。
国をあげた取り組みということもあり、現在では多くの企業がDX推進に注目しています。
では、実際の日本企業のDX推進状況はどうなっているのでしょうか。
この記事では、日本企業のDX推進状況について確認するとともに、あなたの企業におけるDXの推進への取り組みの状況を確認する方法も紹介していきます。
DX白書2023からわかる、日本企業のDX推進状況
経済産業省が「DXレポート」を発表し、レガシーシステムの刷新を2025年までに実行すること(2025年の壁)を掲げてから4年半経過した2023年2月9日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が「DX白書2023」を発表しました。
このDX白書2023では、日本企業543社と米国企業386社の経営層やIT責任者、DX推進部門の責任者に対して、DXへの取り組み状況をアンケート調査したものです。
調査によると、DXに取り組んでいる日本企業は7割弱という結果になりました。
また「成果が出た」と回答する日本企業は6割弱。以前に比べて、国内企業におけるDX推進は積極化していると言うことができるでしょう。
経済産業省が提示する「デジタルガバナンス・コード2.0」と日本企業の課題
2022年時点では、DX推進によってビジネスモデルを抜本的に変革し、成長を実現する企業が国内に現れつつありました。
しかしその一方、グローバライズしていく競争の最中で、DXによって競合・台頭する新たなビジネスモデルにより既存のビジネスが破壊される事例(デジタルディスラプション)も散見されました。
このような理由から、日本企業がDX推進によって持続的な企業価値の向上を図るため、経済産業省は2022年9⽉13⽇に「デジタルガバナンス・コード2.0」を改訂しました。
DX推進にあたり、企業内の組織構造やレガシーな文化に対する改革や、中長期的な投資は必要不可欠と言えます。
上記のため、DX推進において経営者の関与は必須です。
経営者の関与だけではない、DX推進において重視すべきポイント
加えて、企業の価値を更に向上させるためには以下のようなことが重要であると、デジタルガバナンス・コード2.0には記されています。
- IT システムとビジネスを一体的に捉え、新たな価値創造に向けた戦略を描いていくこと
- デジタルの力を、効率化・省力化を目指したITによる既存ビジネスの改善にとどまらず、新たな収益につながる既存ビジネスの付加価値向上や新規デジタルビジネスの創出に振り向けること
- ビジネスの持続性確保のため、IT システムについて技術的負債となることを防ぎ、計画的なパフォーマンス向上を図っていくこと
- 必要な変革を行うため、IT 部門、DX 部門、事業部門、経営企画部門など組織横断的に取り組むこと
先述した通り、DX白書2023においては「国内企業におけるDX推進は積極化してきている状況」と言えますが、デジタルガバナンス・コード2.0によると、世界規模で見れば日本企業の本格的なDXの取り組みは遅れています。
レガシーシステムから未だ脱却できていない企業や、ビジネスモデル変革の入り口で足踏みしたままになってしまう企業もまだまだ多いという状況です。
また経済産業省は、上場・非上場、大企業・中小企業といった企業規模、法人・個人事業主を問わず、より多くの事業者がDX推進に取り組むべきであるとも述べています。
あなたの企業の「DX推進度レベル」をチェック
経営者や社内の関係者がDX推進に向けた社内の状況や課題に対する認識を共有し、施策実行に繋げたい場合に参考になるのが「DX推進指標」です。
DX推進指標では、DX推進に際して、現在の日本企業が直面している課題やそれを解決するために押さえるべき事項を中心として、以下のように構成されています。
- DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
(「DX推進の枠組み」(定性指標)、「DX推進の取組状況」(定量指標)) - DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標
(「ITシステム構築の枠組み」(定性指標)、「ITシステム構築の取組状況」(定量指標))
定性指標は、指標ごとにクエスチョンが設定されており、以下の2種類で構成されています。
- キークエスチョン: 経営者が自ら回答することが望ましいもの。
- サブクエスチョン: 経営者が経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門等と議論をしながら回答するもの。
また、DX推進の成熟度レベルは、以下の6段階で評価することができます。
成熟度レベル | 特性 | |
---|---|---|
レベル0 | 未着手 | 経営者は無関心か、関心があっても具体的な取組に至っていない |
レベル1 | 一部での散発的実施 | 全社戦略が明確でない中、部門単位での試行・実施にとどまっている(例)PoCの実施において、トップの号令があったとしても、全社的な仕組みがない場合は、ただ単に失敗を繰り返すだけになってしまい、失敗から学ぶことができなくなる。 |
レベル2 | 一部での戦略的実施 | 全社戦略に基づく一部の部門での推進 |
レベル3 | 全社戦略に基づく 部門横断的推進 |
全社戦略に基づく部門横断的推進 全社的な取組となっていることが望ましいが、必ずしも全社で画一的な仕組みとすることを指しているわけではなく、仕組みが明確化され部門横断的に実践されていることを指す。 |
レベル4 | 全社戦略に基づく 持続的実施 |
定量的な指標などによる持続的な実施 持続的な実施には、同じ組織、やり方を定着させていくということ以外に、判断が誤っていた場合に積極的に組織、やり方を変えることで、継続的に改善していくということも含まれる。 |
レベル5 | グローバル市場における デジタル企業 |
デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル レベル4における特性を満たした上で、グローバル市場でも存在感を発揮し、競争上の優位性を確立している。 |
出典:デジタルガバナンス・コード2.0「成熟度レベルの基本的な考え方
DX推進指標が日本企業の国際競争力を高め、デジタル企業への変革を促すことを目的としていることから、「デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル」がレベル5であり、日本企業におけるDX推進の最終的なゴールとされています。
この成熟度を利用することで、自社が現在どのレベルにいて、次にどのレベルを目指すのかを認識することができます。
また、現在のDX推進状況における課題の確認や、次のレベルに向けた具体的な施策の策定に繋いでいくことができるでしょう。
DXによる企業改革に成功した事例
ここでは、国内企業におけるDX推進の成功事例を紹介いたします。
御社のDX推進に対する課題や現在の状況と照らし合わせて、是非参考にしてみてください。
トヨタ自動車株式会社:各社員が課題を見直すことでボトムアップの取り組みを行い、工場IoTを実現
3D CADデータや試作時の特性データなど情報のデジタル化を行い、技術開発・生産準備に成果を上げてきたトヨタ自動車株式会社。
実際の製造・お客様から得たデータの技術開発へのタイムリーなフィードバックに苦戦していました。
また、Industry4.0や非自動車メーカーの台頭等の社会変化を受けて危機意識を持ち、全社的なDX推進を実施。
まずは生産部門と連携し、情報システム部門にて「工場IoT」のプラットフォームをセキュアに準備。
工場横断の共有プラットフォームを2~3年かけて段階的投資しました。
更に製造側ではトヨタ生産方式として、各社員が小規模なテーマを立案し、実行し、効果を出すというボトムアップの取り組みを行い、人材の育成も併せて進めていきました。
まずは生産部門と連携し、情報システム部門にて「工場IoT」のプラットフォームをセキュアに準備。
各事業部・工場にてそれを使った現場プロジェクトを立ち上げ、取り組みを増やしていくことで、企業全体のDX推進を実現した事例です。
ヤマハ発動機株式会社:トップダウンで企業全体のDX推進・ビジネスモデル改革
従来は、課題の改善を地道に行うことで、売上拡大を目指すアプローチを続けており、経営目線の戦略的アプローチが欠けていました。
また工場や支店の海外展開が拡大する状況の中、それぞれの拠点においても独自システムが作られるなど個別最適化されていましたが、これは企業全体としては非効率なやり取りだと言えます。
ヤマハ発動機株式会社はこれらの課題に対し、戦略的アプローチによる売上拡大や予知型経営の実現を目指すため、合宿や1on1ミーティングにより経営陣の意識改革を実施。
トップダウンでグローバル事業所全体に向けて発信しました。
更に「デジタル戦略部」を立ち上げ、その中で以下4つのテーマで年間数十個のPoCによる検証を実施、センサーによる生産データ収集と分析、ナレッジのデータ化等を行いました。
- デジタルマーケティング
- コネクテッド
- スマートファクトリー
- データ分析
この新設組織にてデジタル技術を使ったPoCを年間数十個実施し、不良率低減等の効果を上げることに成功しています。
また、各拠点でばらばらだった基幹システムについては外部パートナーと連携。
どのようなデータをどこでどのように収集・階層化し、どう活用するのかといったデータのライフサイクルマネジメントについての検討も行っています。
宇城市役所:RPAの構築を内製化することで、業務フローを大幅改善
総務省発表の調査によると、2021年度のRPA導入済み団体割合は都道府県で91%、指定都市では95%となっています。
「導入予定および検討中」を含めると6割近くの自治体がRPA導入に前向きな状況であり、自治体におけるRPA導入率はここ数年で軒並み増加傾向にあると言えるでしょう。
そんな中、熊本県宇城市役所では外部委託によるRPAの構築に課題を感じており、職員自らRPAを構築することを考えました。
外部委託では職員と業者の間にギャップが生じ、迅速かつ柔軟にRPAを変更できないこともあったそうです。
そこで、これまで外部委託して構築していたRPAをMICHIRU RPAに移行。
従来はプログラミング言語を使用して複雑な条件分岐を行っていましたが、MICHIRU RPAを導入することで業務フロー自体をシンプルに見直し。
そのため、できるだけ業務フロー自体をシンプルに見直した上でRPAを導入するなどの工夫が必要となりました。
業務本来の目的に向かって既存の組織や制度を抜本的に見直し、業務フロー自体の改善や効率化に繋りました。
【記事まとめ】DX推進状況の実態と課題
この記事のポイントは以下の通りです。
- DX白書2023によると、7割弱の日本企業がDX推進に取り組んでいる
- 世界規模で見れば日本企業の本格的なDX推進は遅れている
- DX推進の成熟度レベルを参考に、自社のDX状況の実態把握や、目標設定をすることが重要
国内の多くの企業がDX推進に取り組んでいますが、グローバルに見れば、日本企業にはDX推進に向けて解決していくべき課題が多く残されていると言えます。
またDX推進を実現し、成果を出すためには、将来におけるディスラプションに対する危機感やDX推進に対するビジョン実現の必要性、また自社におけるデジタル化の実態についてを、社内で共有する必要があるでしょう。
社内のDX推進状況を見直し、目標を設定するためにも「デジタルガバナンス・コード2.0」や「DX推進指標」は役立ちます。
ぜひこれらを参考に、御社のDX推進・ビジネスモデルの変革に取り組んでみてはいかがでしょうか。