DX推進の注目度は日々高まっていますが、実際に本格的なデジタル化を実現している日本企業はそれほど多くありません。
国や自治体の呼びかけとは裏腹にDX推進が進まない背景には、人材不足をはじめとするいくつかの課題があります。
この記事では、日本企業のDX推進を阻む課題について解説します。中小企業に特有の課題や成功させるポイントをお伝えするのでぜひ参考にしてください。
DXとは
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、データやデジタル技術を活用し、ビジネスモデルや企業文化などを変革することです。
単なるIT化とは違い、ITツールを導入するだけでなく、商品・サービスや業務フロー、組織づくりなどを改革することが目指されます。
DX推進の目的は、生産性の向上および競争優位性の確保です。ビジネスに新たなデータやデジタル技術を取り入れることで、他社よりも儲かる事業構造を作るためにデジタル施策を実行します。
DX推進で導入するITツールは、例えば、RPAやOCR、ワークフローシステム、CRMなどです。コロナ禍で普及したWeb会議システムやビジネスチャットなども、DX推進に役立ちます。
日本におけるDX推進の取り組み状況
日本におけるDX推進の取り組みは、残念ながらあまり進んでいません。2021年の調査では、約6割の企業が「(DX推進の取り組みを)実施していない、今後も予定なし」と答えました。
企業規模別に見ると、DX推進に取り組んでいない企業の割合は、大企業で約4割、中小企業で約7割。
大企業に比べて中小企業は、DX推進に対する意識が低い、もしくは関心はあるものの実行できていないというのが現状です。
業種別に見ると、DX推進が進んでいないのは「運輸業、郵便業」「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」などです。
一方、情報通信業や商業・流通業(なかでも金融業、保険業)では、盛んにDX推進の取り組みが実施されています。
なお、DX推進が停滞していることは日本政府としては悩ましいことですが、各企業にとってはむしろ好都合ともいえます。
他社がDX推進に乗り出す前にデジタル化を達成すれば、一気に競争優位性を高められる可能性があるからです。
参考:総務省 令和3年 情報通信白書「我が国におけるデジタル化の取組状況」
DX推進をはばむ社会的な課題
日本全体としてDX推進が進まない要因としては、主に以下のような課題が挙げられます。
課題1. DX推進を担うIT人材の不足
日本のIT業界は今、深刻な人材不足に陥っています。社会全体のITニーズが高まる一方で、IT人材の供給が2019年をピークに減少しているからです。
経済産業省の試算では、2030年までに最大約79万人のIT人材が不足するとされています。そのため、DX推進に携わるIT人材をいかに確保するかということは、日本社会および全企業にとっての課題です。
外注のほか、自社での育成や副業・兼業人材の雇用など、経営者は人材不足を解消するための手段を考えなければなりません。
課題2. 老朽システムの技術的負債
日本企業の多くが抱える課題として、老朽化したレガシーシステムがDX推進の足かせになっているという問題もあります。
その場しのぎの改修を続けた既存システムの「技術的負債」が膨れ上がり、保守・運用の莫大なコストがかかるという課題です。
多くの日本企業が技術的負債の返済に資金と人材を浪費し、DX推進の取り組みを進める余裕がありません。事実、8割以上の大企業に老朽したシステムが残存し、DX推進を阻害していると言われています。
各企業の生産性向上、日本全体の経済成長という点において、レガシーシステムからの脱却は、必ず実現されなければなりません。
もしこのまま既存システムが放置されれば、2025年以降、年間最大12億円の経済損失が出るという試算もあるほどです。
参考:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討~ ITシステムに関する課題を中心に ~」, 「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」
課題3. アナログな文化・価値観
DX推進が社会全体で注目されるようになったのはここ数年なので、アナログな文化や価値観のもと経営されている企業もたくさんあります。
経営層や管理職などがデジタルネイティブ以前の40代や50代以降であれば、全社的にデジタルに疎いケースも多いです。
DX推進が遅れることによる将来に対する危機感が共有されず、DX推進が現実的なこととして受け入れられない可能性も考えられます。
課題4. 経営の仕組みの整備
DX推進を実現するには、単にITシステムを導入するだけでなく、業務プロセスや組織構成、企業風土なども変革しなければなりません。
そうした経営の仕組みづくりをいかにうまくできるかも、DX推進の課題です。
実際、DX推進の号令はかかるものの、経営の仕組みを構築するまでに至らず、十分な改革が実現できないケースも多いです。
中小企業のDX化に特有の課題
日系企業の中でも、とりわ中小企業のDX推進は遅れています。
中小企業のデジタル化が進まない背景には、下記で紹介する中小企業に特有の課題があります。
課題1. 資金不足
DX推進に本格的に取り組むには、相当なIT投資をしなければなりません。ツールの導入費用だけでなく、導入にかかる人件費や専門家経費なども場合によっては必要になります。
そのため、大企業に比べて資金力に劣る中小企業には、資金繰りが大きな課題です。中小企業には赤字企業も多いため、デジタル化にお金を使う余裕はないケースも想定されます。
資金繰りへの対応としては、低価格のシステムの導入、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金等の補助金の活用といったことが挙げられます。
銀行からの借入については、返済に窮する可能性もあるため、慎重かつ合理的な経営判断が必要です。
課題2. 時間の不足
人材不足の中で経営していることも多い中小企業では、DX推進にかかる時間をいかに捻出するかも課題になります。
とくに時間外労働や休日出勤も敢行して業務をこなしている企業だと、とてもデジタル施策に工数を割く余裕はないでしょう。
しかし、非効率なレガシーシステムで業務をめいっぱい回せば回すほど、より一層時間がなくなっていくというジレンマもあります。時間不足を根本的に解決する方法として、DX推進による業務効率化が必要なのです。
これについては前項の資金不足についても同じことが言えます。DX推進を実現して生産性を向上させなければ、いつまで経っても赤字は解消されないかもしれません。
そのため、中小企業が苦しい現状から抜け出すには、なんとかお金や時間を捻出し、少しずつでもDXを進めていく意識も重要です。
課題3. 理解の不足
DX推進に対する理解の不足や誤った認識も、中小企業のデジタル化を阻む課題です。
例えば、「DX推進は大企業が取り組むべき課題」と思い込み、デジタル施策に関心を持たない中小企業もあります。
しかし、前述の通り、生産性向上や業務効率化につながるDX推進は、経営が苦しい中小企業にこそ必要です。
ほかには「AIを使って何かできないか」といったツール導入だけの発想にとどまってしまう経営者もたくさんいます。しかし、DX推進にとって肝心なのは、肝心のビジネスモデルや企業文化を変革し、競争優位性を高めることです。
また社員のITリテラシーが低いと、デジタル関連業務への理解が得られない、導入したツールを使いこなせないといった問題も生じます。
そのため、まずは経営者自身がDX推進について正しく理解するとともに、その重要視を社内に周知・教育することも大切です。
中小企業がDX推進を成功させるコツ
上述のような課題を克服し、中小企業がDX推進の取り組みを進めていくには、以下のポイントを意識するのがおすすめです。
経営者が率先してデジタル化に取り組む
中小企業のDX推進は、経営者が主体となって進めていくものです。号令だけだしてIT部門等に任せきりにする経営者もいますが、一部門の権限だけでDXを完遂するのは難しいといえます。
全社的にDX推進に取り組ませ、部署・部門間の連携も図っていくには、やはり全ての決裁権を持った経営者の行動が必要です。
経営計画やIT戦略にDX推進について明記するとともに、企画から実行までの全てを経営者が引っ張っていくのが望ましいでしょう。
身近かつ小規模の取り組みから始める
中小企業のDX推進には、スモールスタートが合理的です。
小規模なら資金や人材に不足があっても無理なく進められます。また身近な事柄を少しだけデジタル化するほうが、社員の理解も得やすいでしょう。
一方、いきなり大規模なDX推進に踏み切るのは危険です。計画通りに効果が出ず、大きな損失をこうむる可能性があります。
そのため、万が一失敗した場合の損失を最小限に抑えるためにも小規模から始めるのが賢明です。
まずは紙の文書の一部を電子化したり、Excelでデータを集計してみたりといった些細なことで良いので、一歩踏み出しましょう。
中長期的な視野で気長に取り組む
DX推進は必ずしも即効性の高い取り組みではありません。導入したツールに慣れるだけでも一定の期間を要します。
またデータの活用については、データの収集にも時間がかかります。分析結果をもとに業務プロセスを改善するのも、トライ&エラーの繰り返しです。
そのため、DX推進には中長期的な視点で気長に取り組むのが良いでしょう。数ヶ月ないし数年のスパンで目標やKPI(重要業績評価指標)を定め、進捗を定量・定性的に把握しながら進めるのもおすすめです。
コスパの良い低価格のITシステムを利用する
DX推進に便利なITシステムやツールの中には、低価格で利用できる月額制のサービスもあります。
一気に数百万〜数千万を投資することは難しくても、月々数万円なら多くの企業は捻出できるでしょう。
自社の財務状況を踏まえて無理のない予算を設定し、その範囲内でコスパの良いツールを探すのがおすすめです。
なお、IT導入補助金等を活用する手もありますが、補助金は後払いであり、審査落ちのリスクもあります。そのため、基本的には内部留保の中で無理なく支払えるツールを選ぶのが無難です。
外部の専門家・デジタル人材の力を借りる
DX推進に関する専門性に自信がない場合は、外部のITベンダーやコーディネーター、コンサルタント等の専門家に相談するのも良いでしょう。
外部の専門家に相談することで認識不足を補うことができ、より良い仕方でデジタル施策を進められます。
実際、経済産業省等が公開するDX推進の成功事例を見ると、専門家との対話を重ねるうちにビジョンが明確になったという経営者も多いです。
DX推進に関するセミナーやツールの活用についてのユーザーフォーラム等に参加するのも有意義でしょう。
月額5万円〜で導入可能な「MICHIRU RPA」
MICHIRU RPAは、日々の業務をロボット(AI)に遂行させ、大幅な業務効率化を実現できるDX推進のツールです。
毎日数時間かかっている業務が、MICHIRU RPAを使えばわずか2秒で完了します。
月額5万円〜という低価格で導入できるので、資金不足が課題の企業にもおすすめです。また画像解析の活用によりソフト間連携なしで使えるため、気軽に導入できます。
さらに請求書の作成やデータ入力、Webリサーチなどの定型業務の自動化という身近な事柄からDX推進を始められるのも利点です。
社員の負担軽減につながるため、社内の理解も得やすく、DX推進の第一歩に適しています。
なお、株式会社MICHIRUでは、MICHIRU RPAに関連するセミナーやユーザーフォーラムも開催しています。DX推進やシステムに関する理解を深めるためにぜひご活用ください。
まとめ:課題も踏まえ少しずつDXを進めよう!
DX推進には人材不足や資金不足、理解不足など、さまざまな課題があります。
こうした課題を克服し、DX推進を成功させるには、小規模から少しずつ取り組みを進めていくことが大切です。
少しずつであれば資金や人材を節約でき、失敗したときのリスクも抑えられます。必要に応じて専門家とも対話しながらDXに関する理解を深め、一歩一歩着実にデジタル化を進めていきましょう。