ロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)、通称RPAとは、パソコンで行っている定型業務を自動化できるソフトウェアロボット技術のことを指します。
労働人口の減少や、働き方改革の推進を背景として、多くの業界でRPAの導入が進んでいます。
しかし「RPAは意味ない」という声も上がっており、実際にその活用方法やRPAの特性について見直す必要がある企業が出てきていることも事実です。
この記事では、RPAが「意味ない」と言われる理由、その原因となっているRPAのデメリットについて解説していきます。
さらに、RPA導入を検討している方やRPAの運用が頓挫してしまっている企業の方に向けて、RPAを導入・運用する際に確認すべきポイントも紹介していきます。
ぜひ効果的なRPA運用の参考にしてみてください。
RPAが「意味ない」と言われる理由
業務を自動化することができるRPAですが、下記のようなデメリットから「導入しても意味ない」と感じる場合もあるようです。
- 効果が導入コストに見合わない
- 複雑なワークフローに適用させることが難しい
- 人間の判断や柔軟性が必要な作業には適さない
- メンテナンスやアップデートが必要など、手がかかる
これらのデメリットについては、「これからRPAを導入したい」とお考えの方も、現時点で「RPAを導入しているだけで、活用できてないから意味ない」とお悩みの方も知っておくべきこと、対策を考えておく必要があることです。
それぞれ簡単に解説していきます。
効果が導入コストに見合わない
「多額のコストがかかる割に効果が少なかった」という理由から「導入する意味ない」と思われるケースがあるようです。
RPAを導入する場合、以下のコストがかかります。
- 初期費用
- 月額利用料
- サポート・保守運用費用
またRPAには、そのロボットが稼働する場所によって「サーバ型」「デスクトップ型」「クラウド型」の3種類にわかれています。
型による特徴や導入・運用にかかる手間がそれぞれ異なるため、初期費用や月額利用料にも違いがあります。
それぞれの初期費用と月額利用料の相場は下記のとおりです。
RPAの種類 | 初期費用 | 月額利用料 |
---|---|---|
サーバー型RPA | 10万円~ ※数千万円かかる場合もあります | 8万円~ |
デスクトップ型RPA | 0~50万円程度 | 12万円〜 |
クラウド型RPA | 30万~50万円程度 | 3万円〜 |
複雑なワークフローに適用させることが難しい
まず前提として、RPAは特定のルールやパターンに基づいて業務を自動化します。
そのため、複雑なワークフローにRPAを適用させるには、そのワークフローを細かいステップに分解し、明確なシナリオを作成する必要があります。
しかし、多くの例外や条件分岐が存在する業務プロセスの場合、RPAに全てを正確に処理させることが難しい場合もあります。
結果として自動化したい業務にRPAを最適化することができず、導入したものの活用することができないため「意味ない」と感じる方もいるようです。
また、多くのアプリケーションやデータソースをまたぐ業務プロセスについては、これらとRPAとのシステムの統合や横断的なシナリオの作成が課題となります。
さらに、RPAのメンテナンスとアップデートも複雑なワークフローにおいては難しくなるでしょう。
人間の判断や柔軟性が必要な作業には適さない
上記の通り、RPAは特定のルールやパターンに基づいて業務を自動化するため、人間の判断や柔軟性が必要な作業には向いていません。
このような業務には、結局人間が対応する必要があります。
メンテナンスやアップデートが必要など、手がかかる
業務処理で使用するアプリケーションの操作画面や業務プロセス自体に変更があった場合でも、自分で判断をすることができないRPAは、ワークフローを修正することができません。
そのため、人間が予め設定したシナリオに則ってそのまま作業を進めてしまったり、RPA自体がエラーで止まったりしてしまう可能性が高いです。
「業務を自動化したかったのに、結局メンテナンスやアップデートなど手がかかる=意味ない」と考えてしまうケースも少なくないでしょう。
【失敗しないために】導入前や運用が上手く行かない場合に確認すべきポイント
ここまで、RPAが「意味ない」と言われる理由を解説してきました。
では導入後に「導入したけどやっぱり意味なかった」であったり、運用が思ったようにいかず「導入しなければよかった」などと後悔しないために、事前に確認しておくべき事項を紹介していきます。
既にRPAを導入しており、期待していた効果が出ていない場合でも遅すぎることはありません。
自動化する業務を変更したり運用体制を整備したりと、やり方をひとつ変えるだけで、大きな変化が見込めます。
現在の運用が上手く行ってなくても諦めず、自社の組織体制や費用に最適化した、RPAをより効果的に活用する方法を見つけましょう。
自動化したい業務との相性
RPAの導入を検討する際には、RPAの性質と、自動化したい業務をしっかりと照らし合わせ、RPAと自動化したい業務の相性を必ず確認してください。
RPAにも自動化できることとできないことがあり、特に「定型的で反復的な業務」の処理を得意としています。
またRPAは大量のデータを高速かつ正確に処理できるため、大量のデータを扱う業務にも適しています。
例えば、請求書の作成や顧客データの入力など、データ量が多く定型的な業務にRPAを導入することで、効率的な使い方ができるでしょう。
費用対効果
RPAは決して安いものではありません。
初期費用や利用料はもちろん、ベンダーを付ければサポート費用や運用・保守費用も発生します。
まずはこれらの費用を詳細に見積もり、予算内で導入可能かどうかを確認しましょう。
そして、自動化対象となる業務にかかっていたコストも洗い出しましょう。
RPAを導入した場合、どのような効果が期待できるのか、業務の効率化、エラーの削減、作業時間の短縮など、具体的なメリットを明確にすることも必要です。
その上で、導入・運用にかかるコストと効果を見比べ、期待する費用対効果を実現できるかどうかを見極めることが重要です。
業務フローの見直し
RPAの導入を成功させるためには、業務フローの見直しを行うことが非常に重要です。
これからRPAを導入する場合も、導入だけしてRPA運用が頓挫してしまっている場合も、業務フローを見直すことでRPAを効果的に活用する目星がたちます。
下記の手順で業務フローの見直しを実施してみてください。
業務フロー見直しの手順
- 現在の業務フローの分析
まず、現在の業務フローを詳細に分析しましょう。どのアプリケーションがどのように連動しているのか、どの部分が非効率的なのかを特定します。この段階で問題点を明らかにしましょう。 - RPAを適用させるポイントの特定
次に、RPAを適用させるポイントを特定します。定期的に繰り返されている作業や大量のデータ処理など、RPAが効果を発揮するポイントを見つけます。RPAで自動化する価値が高い箇所を優先的に選びましょう。 - 業務フローの最適化
複雑なフローについて、可能であれば簡素化し、シナリオを設計します。これにより、RPAの効果を最大限に引き出すことができます。
導入後の運用体制
RPAを導入した場合、現場の従業員がRPAを運用していくのか、それとも運用チームを新設するのか、導入後の運用体制を予め確認しておきましょう。
またその際には、運用に際して必要なトレーニングやスキルの向上を計画することが重要です。
RPAの使い方やトラブルに対するシューティング能力を向上させます。
定期的なモニタリングとメンテナンスも必要になるため、システムの動作を監視し、問題が発生した場合に迅速に対応できる体制を整えましょう。
データの取り扱いに関する規則とポリシーを明確にし、遵守する体制を築くことも重要です。
これらに対して、社内にリソースを用意することが難しい場合は、RPAの知見を持っているベンダーやITコンサルタントを活用するという方法もあります。
この場合にはコストが発生しますので、費用対効果を見直す必要も出てきます。
RPAが「意味ない」と言われる理由まとめ
この記事では、RPAが「意味ない」と言われる理由やその原因となっているRPAのデメリット、またRPAを導入・運用する際に確認すべきポイントについて解説しました。
RPAは、導入費用が高いことや自動化できる業務に限りがあること、運用・保守に手がかかるといった理由から、思ったほどの効果を感じられず「意味ない」と言われるケースがあります。
しかし、RPAの特性をしっかりと理解し、適切な業務にRPAを導入することで効果を最大限に引き出すことができるでしょう。
この記事で紹介した「導入前や運用が上手く行かない場合に確認すべきポイント」を参考に、RPAの導入、またRPAの活用方法について再度見直してみてはいかがでしょうか。