企業のDX推進に重要な「KPI」とは?計画や指標の設定方法を解説

DX推進に欠かせない、プロジェクトの推進度合いを測れるKPI設定について

企業のDX推進に重要な「KPI」とは?計画や指標の設定方法を解説

DX推進に欠かせないのが、プロジェクトの進捗状況を測れるKPIの設定です。

DX推進の途中では効果が見えずに悩むこともあるでしょうが、そんなときにKPIがあれば進捗度合いを正確に測ることができます。

この記事ではKPIとは何かや、KPIの設定方法、KPIとして経済産業省の「DX推進指標」を活用すべき理由、などについて解説していきます。

目次

企業のDX推進のために設定すべき「KPI」とは

企業のDX推進のために設定すべき「KPI」とは

KPIとは「Key Performance Indicator」の略語で、日本語では「重要業績評価指標」あるいは「重要達成度指標」と呼ばれています。

目標達成までの各ステップにおいて、達成度合いの計測および評価を正確に行うために存在します。

DX推進においては、達成までの各プロセスの達成度合いを客観的に計測するために、KPIが必要不可欠です。

KPIがしっかりしていないと、計画通りにプロジェクトが進んでいない場合に、気づかずに誤った方向に進んでしまう可能性が高いからです。

その点、KPIをしっかりと設定しておけば、DX推進の各過程での達成度合いを正確に把握し、目標の達成確率を大きく向上させられます。

KPIの設定方法とポイント

KPIの設定方法とポイント

KPIはDX推進の各プロセスでの達成度合いを測るうえで非常に重要ですが、どのように設定すればいいのでしょうか?

ここでは、KPIの設定方法やポイントについて解説します。

KPIの設定方法

まずはKPIの設定方法を3ステップで解説していきます。

KGIの設定

まずはKGIを設定します。KGIとは数字で表すことのできる、プロジェクトの最終目標のことです。

たとえば「2030年までに売上10億円を達成する」などが、分かりやすい目標の例となります。

プロセスに分解する

KGIを設定したら、それを達成するためのプロセスを洗い出します。

ここでいうプロセスの一例ですが、たとえばマーケティングの場合は、新規リード獲得数、WEB広告のクリック数、イベント参加者数などの、目標達成に必要な要素を指します。

KPI設定

プロセスを分解したら、KGI達成に必要なKPIを設定します。

たとえばさきほど分解したプロセスそれぞれに、達成すべき数値付きの目標を決めればそれがKPIになります。

具体的には、「2025年末までに新規リードの獲得数を10,000人にする」「2025年末までに2025年までにWEB広告のクリック数を30%にする」といった具合です。

こういった各プロセスにおける目標をKPIとして数値設定し、それを達成すべく行動していきましょう。

KPI設定のポイント

KPI設定のポイントは「SMART」を意識することです。「SMART」とは5つの英単語の頭文字ですが、ここからはそれらについて詳しく解説していきます。

S:Specific(明確性)

まず、KPIには明確性が必要となります。

曖昧な内容だと社員が何を目指せばいいか分からなくなってしまうので、誰もが理解できる明確な内容を設定するようにしましょう。

M:Measurable(測定可能)

計測可能であることも、KPIを設定する際に非常に重要です。

金額や人数、パーセンテージと言った数字が設定されており、測定可能な目標であれば進捗度合いが分かりやすくなります。

また、PDCAサイクルを回しやすくなり、行き詰まった時の改善を行いやすいのも測定可能な目標を設定すべき理由です。

A:Achievable(達成可能)

達成不可能な目標では社員のモチベーションが下がってしまうので、努力や工夫次第で実現できるKPIを設定しましょう。

全社員が納得でき、企業が一丸となって達成に向かっていけるKPIであれば、何も言うことはありません。

R:Related(関連性)

関連性とは、KPIとKGI(最終的な目標)が関係していることを指します。

KPIは最終的にDX推進を達成するために設定するので、最終目標と関連していなければいけません。

関連性のないKPIを達成し、DX推進から遠ざかってしまわないよう気を付けましょう。

T:Time-bounded(適時性)

適時性とは、KPIに期限を設定することを指します。

期限を設けられていないと、日々の業務に追われるうちにDX推進のプロジェクトが後回しになってしまうのが、ありがちなパターンです。

KPIを設定する際は、期限も忘れずに決めるようにしましょう。

経済産業省「DX推進指標」を活用するのがおすすめ

経済産業省「DX推進指標」を活用するのがおすすめ

企業のDX推進の際に、自社独自のKPIを設定することも可能ですが、それよりもおすすめなのが「DX推進指標」を活用することです。

ここでは「DX推進指標」の概要を簡単に解説します。

DX推進指標とは?概要を解説

「DX推進指標」は経済産業省が2019年に公開した、自社のDX推進状況を診断するためのツールです。

経営者や社内の関係者がDX化における自社の課題を把握・共有し、必要なアクションを実行できるようになることを目標に作られました。

9つのキークエスチョンとサブクエスチョンから構成されており、これらに回答することで現時点での自社のDX推進の成熟度合いを認識できます。

DX推進におけるKPIの運用方法

DX推進におけるKPIの運用方法

DX推進において経済産業省の「DX推進指標」をKPIとして採用する場合、押さえるべきポイントや活用の手順を知っておく必要があります。

ここからは、DX推進指標を活用してKPIを設定するポイントや、DX推進指標を使ってDXを進める方法をお伝えします。

DX推進指標を活用してKPIを設定する際のポイント

まずは、DX推進指標をKPIとして活用する際の2つのポイントを紹介します。

自社のプロジェクトに合わせてアレンジする

DX推進指標は、経済産業省があらゆる業種に対応できるよう作成したものです。

したがって、実際にKPIとして利用する際には、自社のビジネスモデルやプロジェクトに合わせて内容をアレンジする必要があります。

自社に合わせて内容を変更すれば、DX推進指標を活用した評価がしやすくなるでしょう。

全従業員が同意する目標の設定を目指す

DX推進プロジェクトの際には、できるだけ全従業員が同意する目標を設定し、そこに向かって進んでいける体制を作りましょう。

全ての従業員が同意できる目標を設定することで、プロジェクト達成に高いモチベーションで向かっていけるからです。

DX推進はビジネスモデルそのものを変革する大きなプロジェクトなので、社員全体が納得できるような妥当な目標を設置することが重要です。

DX推進指標を活用してDXを進める方法

ここでは、DX推進指標を活用してDXを進める方法を紹介します。

DX推進指標の内容を理解しDX推進の流れを理解する

DX推進の成功のためには、DX推進の流れを押さえたうえで、KPIとして活用するツールである「DX推進指標」を理解する必要があります。

まず、DX推進の流れを知るには経済産業省が公開する「デジタルガバナンスコード2.0」の内容を押さえましょう。

「デジタルガバナンスコード2.0」では、DX推進の基本的な概要や流れが記されており、これさえ熟読することでプロジェクトを進める手順を知ることができます。

そして、「DX推進指標」の使い方を記した、「『DX推進指標』とそのガイダンス」をしっかりと読み込みましょう。

「『DX推進指標』とそのガイダンス」の内容を把握できれば、KPIとして「DX推進指標」を有効活用する手順が分かり、スムーズなDX推進が可能になります。

参照:デジタルガバナンス・コード2.0

自社のDX推進の成熟度を把握する

DX推進指標の使い方を理解したら、実際に活用して自社のDX推進の成熟度を把握しましょう。

DX推進指標の自己フォーマットに記入したら、DX推進ポータルから提出し診断結果が出るのを待ちます。

自社と他社の比較から今後のアクションに活かす

DX推進指標の自己フォーマットを記入すると、IPAからベンチマークレポートが送られてきます。

ベンチマークレポートは診断結果と全体データの比較によって作成されており、自社と他社との差を把握できます。

自社のDXの客観的な成熟度が分かるので、今後取るべきアクションが分かります。

ベンチマークレポートの活用により、自社のDXを次のレベルに進められる可能性が非常に高くなるのでぜひDX推進に役立てましょう。

自社に活かせる他社の成功事例を把握する

他社の成功事例を確認し、プロジェクトをどのように進めどういった結果を出しているのかを確認しましょう。

このときに同じ業種や業界にこだわらずに、他業種の事例にも目を通し参考にすることが重要です。

とくにバックオフィスのDX推進例は、ほかの業界の成功例であっても自社のプロジェクトに取り入れられることが多いです。

様々な事例から参考にできる箇所を積極的にさがしだし、自社のDX推進に役立てるようにしましょう。

DX推進においてKPIを設定する際の注意点

DX推進においてKPIを設定する際の注意点

KPIを設定する際には漠然と目標を決めるのではなく、「SMARTの法則」に基づいて5つの要素を意識するようにしましょう。

ここからは5つの要素についてそれぞれ説明していきます。

Specific:具体的な、明確な

まず具体的な指標を設定することが重要です。曖昧な目標だと達成できたかどうかの基準が分かりにくく、KPIとして機能しにくいからです。

たとえば、「売り上げをアップさせる」とか「業務効率を上げる」といった目標だと、人によって基準が異ってしまいます。

誰が見ても達成できたかどうかを、明確に判断できる目標を設定するようにしましょう。

Measurable:計測可能な

数値で計測できるKPIを設定することも重要です。

回数や件数、パーセンテージなど数字で表せる目標をKPIとして設定し、達成の成否をすべての人がひと目で判断できるようにしてください。

一例として以下のような目標であれば達成度を客観的に判定しやすいでしょう。

  • 残業時間を平均月20時間に抑える
  • 1年間で30店舗増やす
  • 売上を前年比10%増加させる

こういった定量的に計測可能な目標を設定するようにしましょう。

Achievable:達成可能な

工夫や努力によって達成可能な目標を、KPIとして設定することも重要です。

あまりにも現実からかけ離れた到達が難しい目標は、社員のモチベーション低下につながり、達成できずに終わる可能性が高いからです。

目標設定時には前期間の数値から考慮して、現実的な目標を設定するといいでしょう。

Relevant:関連している

達成したい目標と関連したKPIを設定することも大切です。

一例として「売上10%アップ」を目標にした場合、「訪問数を30%増やす」というKPIは目標達成に直結した適切な指標と言えるでしょう。

一方で、「売上10%アップ」の目標に対し「消耗品費を前期比10%削減」というKPIは売上にはほとんど関連がありません。

このように、KPIには適切な内容とそうとは言えないものが存在するので、KPIの達成により目標達成につながる内容を設定しましょう。

Time-bound:期限が明確

達成の期限を決めることも、KPIを設定するうえで重要です。

結果を出す期日を設定することで緊張感が生まれ、行動力が上がることで目標を達成できる確率が高まります。

また期限が定まっていると、仮にKPIを達成できなかった場合にも、PDCAサイクルを回しやすくなるので業務改善しやすくなる効果もあります。

月・四半期・半期などの期限を設け、それまでに一定の水準をクリアすることを目標に業務を進めていきましょう。

DX推進でのKPIの事例

DX推進でのKPIの事例

ここではDX推進に取り組む企業がどのようなKPIを設定しているのか、その事例を紹介します。

味の素

味の素は不足栄養・過剰栄養などの「食と健康」の課解決企業を目指し、DXを推進しています。

そのための施策として以下のようなKPIを設定しています。

機能 KPI
サプライチェーンマネジメント 棚卸回転日数・コストダウン額
事業モデル変革 売上高・事業利益
人材育成 ビジネス人材育成・システム開発者人数・データサイエンティスト人数

こういった各分野においてKPIを設定することで、DX推進を効果的なものにしています。

参照:味の素グループのデジタル変革(DX) | グループ企業情報 | 味の素グループ

旭化成

旭化成では2030年までに、ビジネスモデル変革により価値創造をリードすることを目指し、DXを推進しています。

そのためのKPIとして、2022年度に「DX-Challenge 10-10-100」という指標を策定しました。

「DX-Challenge 10-10-100」は以下のように、選定された3つの重要テーマにおいて達成目標を設定したものです。

デジタルプロフェッショナル人材 10倍(2021年度比)
デジタルデータ活用量 10倍(2021年度比)
重点テーマ増益貢献 100億円(2021年度~2024年度までの累計)

これらを2024年までに達成するのが設定されたKPIとなっており、数値と期間が明確に定められています。

また、これらの目標を達成するためのDX関連投資額についても、約300億円という金額が設定されています。

参照:旭化成レポート2022 デジタルトランスフォーメーション(DX)

トヨタシステムズ

トヨタシステムズは、トヨタグループ各社のグローバルなIT戦略をサポートする企業です。

トヨタグループのDX実現のために、グループ全体のデジタル化をリードする役割を担っています。

具体的には、業務内容やデータ管理、基幹システムのデジタル化を目指しており、ビジネス変革・働き方変革の実現を目標としています。

目標の実現のために、売上・人材の2つに焦点を当てた以下のようなKPIを設定しています。

売上に関する目標

売上に対するデジタル比率 売上に対するデジタル比率の増加を目指す

人材育成に関する目標

デジタル人材数 デジタル人材の増加を目指す。
システム開発生産性 システム開発の生産性向上の活動強化により、圧倒的な生産性の向上を目指す。
システム品質
(重大障害件数)
品質への一層のこだわりを通じて、重大障害件数の削減を目指す。
アジャイル経験者 デジタル化の取り組みに対するアジャイル手法の適用を更に加速させることで、アジャイル経験者数の増加を目指す。

参照:トヨタシステムズ(TS)|デジタルトランスフォーメーション(DX)

三井住友銀行

SMBCグループの金融サービスの利便性や効率性の飛躍的な向上を目指し、DX推進に取り組んでいます。

そのための、KPIとして三井住友銀行では以下の3つをKPIとして定めています。

  1. 個人向けオンラインチャネルを利用する顧客数
  2. 法人向けデジタルソリューションサービス登録・会員となる企業数
  3. RPAなどのデジタル技術を活用したオペレーションの削減コスト

具体的な数値や期間の目標は外部には公開されていないものの、明確な数値目標を策定しプロジェクトに取り組んでいると予想できます。

参照:DXの推進 三井住友銀行

記事まとめ

記事まとめ

DX推進の成功のためには、各プロセスの進捗度合いを測れるKPIの設定が必要不可欠です。

経済産業省が作成したDX推進指標は、DX推進を効率よく達成するために作成されており、DX推進のKPIとして活用できます。

ぜひDX推進指標をDXを加速させるツールとして有効活用し、自社のDXプロジェクトを進めていきましょう。

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