日本企業におけるDX推進の問題点や課題とは?その対策や解決方法も解説

コストやビジョン、需要の変化など、DX推進にあたって日本企業が抱える問題点について

日本企業におけるDX推進の問題点や課題とは?その対策や解決方法も解説

日本企業にDXに取り組む際、プロジェクト推進途中で壁に当たってしまい悩むことは決して珍しくありません。

そのため、これからDX推進に取り組む場合は、よく発生する問題点や解決策をあらかじめ知っておいたほうがいいでしょう。

そこでこの記事では、DX推進において日本企業が抱える問題点やDX化を成功させるためのポイント、課題を解決しDX化を成し遂げた企業の事例などについて解説していきます。

目次

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは<

DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義は、経済産業省が公表した「デジタルガバナンス・コード」において以下のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
出典:『デジタルガバナンスコード2.0』経済産業省 2022年9⽉13⽇

つまり、DXの定義を簡潔に言い直せば「デジタルの導入によって会社や製品に革命的な変化を起こし、売上アップや競争力強化といった結果を出すこと」となります。

重要なのは単にデジタルを導入するだけではなく、それが会社の在り方の変革、そして売上アップにつながっている必要があるという点です。

システム導入によって事業のプロセスを一部分自動化しただけではDX推進に成功したとは言えないので、この機会にDX推進の定義をよく理解しておくべきでしょう。

DX推進にあたって日本企業が抱える問題点や課題

DX推進にあたって日本企業が抱える問題点や課題

日本は海外と比較してDXが進んでおらず、大きな問題点となっています。

ここからは、日本企業のDX推進が順調に進まない理由を6つ紹介していきます。

経営戦略の具体的なビジョンが示されない

経営層によって具体的な経営戦略のビジョンが示されないのが、DX推進にあたっての問題点の1つです。

明確な経営戦略を示さずにDX推進をスタートしてしまうため最終的に達成すべき目標が見えなくなり、デジタル技術の導入をしただけで満足してしまうケースが後を絶ちません。

この状態では、デジタルの力でビジネスモデルや企業の在り方を変革し、DXを達成することは到底不可能です。

IT予算の効果的な運用ができない

多くの日本企業において、IT予算のほとんどが老朽化したシステムの維持・管理に割かれており、DX推進に予算を回せないのが大きな問題となっています。

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート※」を見ると、日本企業の多くがIT予算の8割を古いシステムの維持管理費に充てていることが分かります。

その結果、新規プロジェクトに使える予算がほとんど残っておらず、DX推進に必要な内容に予算を割けなくなっているのです。

この状態では現状維持が精いっぱいで、日本企業のDX推進が一向に進まない一因となっています。

参照:DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~

顧客のニーズの変化に対応する必要がある

スマホ普及の影響で多様化した顧客ニーズに対応する必要があるということも、DX推進における大きな課題の一つです。

見込み客は昔と比べインターネットで新しい情報を迅速に入手できるようになり、一人一人が違うニーズを持つようになりました。

そのため以前のような大多数の需要を満たす無難な商品でなく、一人ひとりのニーズに合わせた商品やサービスを提供する必要が出てきたのです。

こういったニーズを満たすために、デジタル技術をどのように活用していくのかが大きな課題となっています。

コストがかかる

DX推進にはコストがかかるという点も問題点の一つです。

DX推進ではシステムやITツールの導入に費用がかかるほか、DX推進を遂行できる人材の確保にもコストが発生します。

しかし前述のように、日本企業は老朽化したシステムの維持にIT予算の多くを使っているので、これらのDX推進に必要な費用を捻出できないのが実情です。

そのため迅速なDX推進の必要性に気が付いていながらも、予算の関係でなかなか進まないのが大きな問題点です。

部門間の摩擦が生じ連携できていない

DX推進をするうえで部門間で摩擦が生じ、連携できなくなるのはよくある現象です。

各部門がそれぞれの業務に最適化されたシステムを構築している場合は特に、DX推進の際に摩擦が生じやすくなります。

この場合、新規システム導入による業務負担量に差が生じ、どうしても特定の部署で不満がたまりやすくなるからです。

この点を解決しないと、全社が同じゴールを目指してDXを進めるのが非常に難しくなってしまいます。

ベンダーに依存している

ベンダーとはIT製品をユーザーに販売する企業のことで、日本企業の多くがシステムの開発や運用を外部ベンダーに依頼しています。

この際にベンダーに依存しきってしまい、社内にITのスキルが蓄積されず、ノウハウが身につかないままになってしまうケースが数多くみられます。

また外部ベンダーもあらゆる開発に対応できるわけではなく、「業務改善システムはA社」「WebマーケティングはB社」といった具合に、開発内容によって異なるベンダーに開発を依頼することが多いのも問題です。

こうして完成したシステムはブラックボックス化してしまっており、根本的な刷新が難しくDXを阻害しているケースが多くなっています。

DXを成功させるためのポイントを解説!

DXを成功させるためのポイントを解説!

DX推進を課題を克服し、DXを成功させるためにはどうしたらいいでしょうか?

ここからは、DX推進を成功させるためのポイントを解説していきます。

全社的に取り組む

DX推進に成功するには、経営層がリードし社員が協力する形で全社的に取り組む必要があります。

DX推進を目指す企業にありがちな問題点が、企業全体が同じ方向を向いていないというケースです。

経営層だけでDX推進を目指しても、現場の社員の協力が得られなければ、DX成功という大きな目標を成し遂げることはできません。

反対に、現場社員がDX推進の必要性を理解し行動しようとしても、経営層のモチベーションが低ければ失敗する可能性が高いでしょう。

そのため、DX推進の際には経営層がビジョンやロードマップを制作し会社全体に周知することで、DX推進の雰囲気を醸成することから始める必要があります。

一貫性のあるシステムを構築する

老朽化、複雑化、ブラックボックス化したシステムから脱却し、一貫性のあるシステムを構築する必要があります。

日本企業の多くは、こうした個別のレガシーシステムを複数保有している場合が多く、システム同士の連携ができずにデータ活用を阻害しています。

この状況でDX推進に取り組んでも、ツール選定やデータ活用の効率が悪くなり、成功できる確率は低くなってしまうでしょう。

したがって、レガシーシステムを脱却し全社を通してシームレスにデータを活用できる、一貫性を持った仕組みを構築する必要があると言えます。

DX推進に必要なIT人材を育成する

DX推進に必要なIT人材を育成するのも、プロジェクト成功のためには欠かせません。

DX人材の不足によりDX推進ができない、というのはありがちな問題点なので事前に対策しておきましょう。

ただし、DX人材は日本全体を通して不足しているため、求人を出しても優秀な人材が集まる可能性は低くあまり期待できません。

そこで、社内人材の育成によってDX推進に必要な人材を確保することが重要となります。

DXコンサルティングや支援サービスを活用する

DX推進の際には、コンサルティングや支援サービスを活用するのも成功のためのポイントです。

DX推進には人材やシステムといったリソース不足の問題点が発生することが多いため、外部の力を借りることでスムーズになるからです。

外部の力を有効活用できれば、社内にはないノウハウを活用でき、プロジェクト管理やITシステムの導入などが円滑になるでしょう。

ただし、コンサルティングや支援サービスの利用には高額な費用がかかるという問題点も存在するので、計画的に活用するようにしましょう。

新しい顧客ニーズを作り出す

スマホ普及の影響で顧客のニーズが多様化し予測が難しくなっています。

とはいえ、顧客に新しい価値を提供しなくては企業が売り上げを上げ生き残ることはできません。

そこで市場全体の変化や競合の分析により、潜在的な顧客ニーズを推測しそこにあった商品を提供する必要があります。

難易度は決して低くありませんが、企業の発展のためには価値ある挑戦だと言えるでしょう。

補助金や助成金を活用する

多額の費用が必要となるDX推進においては、補助金や助成金を活用することで資金不足を解消できる場合があります。

国や自治体は「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」といったDX推進に活用できる返済不要の補助金を用意しているので、ぜひ活用して下さい。

ただしこういった補助金の審査は厳しい傾向があり、申請しても通過しない恐れもあります。

したがって、確実に補助金を受け取れる前提で計画を進めると、受け取れなかったときに困る可能性がある点を知っておきましょう。

DX専門部署を立ち上げ協力体制をつくる

DX推進専門の部署を設立し、部署間で協力する体制を作るのも有効な方法と言えます。

各部署へのヒアリングを通してDX推進計画を立て全社に共有することで、部署間の摩擦を抑える効果が期待できます。

部署・部門間の軋轢が原因となり、DX推進が頓挫するのはありがちなパターンなので、そうならないよう対策する必要があります。

ベンダーへの丸投げから脱却する

システム開発をベンダーに丸投げする体質から脱却するのも非常に重要です。

システムの運用や管理をベンダーに依頼するのは決して悪いことではありませんが、「よく分からないから」という理由ですべてを任せるのは考え物です。

ベンダーに依頼する際には、経営者自身が依頼内容を把握しそのうえで外注する必要があります。

さらに、社内にシステムのついての知見を持つ人物を確保し、ベンダーの開発内容を自社で理解できるようにしましょう。

このように企業とベンダーが二人三脚で開発を進める意識を持つことで、ただ丸投げするだけの状態から脱却することができます。

各分野が抱えるDXの問題点

各分野が抱えるDXの問題点

様々な分野でDX推進されていますが、その分野ごとにDX推進を妨げている要因があるためそれらを解説していきます。

企業のDXの問題点

ここまでに企業DXが進まない理由をいくつか説明してきましたが、中でも非常に多い問題点が、経営層たちのDX推進に対する理解不足です。

現場の社員がデジタル化の必要性を強く感じているにもかかわらず、経営層が問題点を理解していないため、DXがなかなか進まないのです。

現場の力だけで会社全体を動かすには限界があるので、経営層がDX推進の重要性を理解しDX推進を主導する必要があります。

自治体のDXの問題点

自治体の場合、そもそもDXが全く進んでいないのが大きな問題と言えます。

デジタルトランスフォーメーション研究所が2021年に公開した「自治体DX調査報告書※」によれば、自治体の8割がDX推進に未着手という調査結果が出ています。

自治体では少子高齢化の影響で人材不足が深刻化しており、デジタルによる業務効率化が進まなければ、近い将来ますます職員の負担が大きくなってしまいます。

このままでは地域の住環境改善に手を回す余裕がなくなり、住民がより住みやすい地域を求めて移住した結果、過疎化が進行する恐れもあります。

自治体の活気を保つためには、迅速な自治体DX推進が急務と言えるでしょう。

建設DXの問題点

建築DXの問題点は、デジタル技術を扱えるDX人材の不足により、アナログの手法を活用した業務から脱却できない点です。

建築業は紙や電話といったアナログな手段でのコミュニケーションを行ってきた過去があり、その文化からの脱却がなかなか進まないのです。

DX実現のためには、IT人材の採用を進め、デジタル技術活用の文化を新しく醸成し小さな業務からデジタル化を進めていく必要があると言えます。

DX推進の課題を解決した事例

DX推進の課題を解決した事例

ここからはDX推進の問題点を克服し、DX化に成功した例を紹介します。

複数業種の事例を紹介しているので、ぜひ自社のDX推進の参考にしていただければと思います。

株式会社メルカリ

メルカリが登場するまでは、個人間で商品を売買するプラットフォームは、ヤフオク!などのネットオークションが中心でした。

こうしたサービスには、以下のような問題点があり手軽さに欠けていました。

  • 入札価格が更新される仕組みなので、価値のあるものではないと出品しにくい
  • サイトのインターフェイスがPC向けだったので、手軽さに欠ける

メルカリはこういった課題の解決に取り組み、まずサービスをオークション形式からフリマ形式に変更しました。

このことにより、それほど需要が高くない商品であっても気軽に出品でき、値下げの交渉にも応じられるようになり手軽さが増しました。

また、スマホからのアクセスを前提としたインターフェイスなので、ネットオークションよりも気軽に利用できるサービスを実現させています。

株式会社三井住友フィナンシャルグループ

株式会社三井住友フィナンシャルグループでは、顧客から届いた意見の管理・分析をすべてを主導で行っていたため、莫大な人的コストや時間が課題となっていました。

そこで、デジタル技術の活用によって、顧客から寄せられる意見を自動で分類する仕組みを導入。業務効率化を成し遂げました。

また、顧客から届いた意見の分類や分析もデジタル技術で行っているので、新たな気付きを得ることにも成功しています。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンクではDX推進前には、警察署から依頼される携帯電話の落とし物についての情報を、コールセンターの担当者が手動で入力していました。

しかし、あまりにも業務量が多かったため、入力に莫大な時間がかかり通常業務に支障が出ていたのです。

この問題点を解決するために、業務プロセスのデジタル化を実施し、情報入力の自動化に成功しました。

その結果、200時間程度の業務時間を削減し、コールセンター職員は通常業務に集中できるようになったとのことです。

株式会社クボタ

株式会社クボタは、事業展開がグローバルに行われるようになったことをきっかけに、海外と比較して自社のITのレベルが遅れていることに気が付き危機感を抱きました。

そこで、競争力の強化のためにDX推進に着手し、基幹システムの刷新に500億円を投じたりDX人材の増加に注力したりするなどして、DXを進めていきました。

その結果、2021年12月期の連結売上高は10年前の2.4倍に急成長し、デジタルによって売り上げを伸ばすことに成功しています。

現在もクボタではDX推進が引き続き行われており、さらなる成長が見込まれます。

【まとめ】DX推進にあたって日本企業が抱える問題点とその解決法

【まとめ】DX推進にあたって日本企業が抱える問題点とその解決法

この記事では、DX推進において日本企業が抱える問題点や、解決方法について扱ってきました。

DX推進は企業の在り方やビジネスモデルそのものを変革する、一大プロジェクトです。

そのため、プロジェクトを推進する過程では、高確率で様々な問題点が発生し頭を悩ませる可能性も高いでしょう。

しかし、そこで立ち止まってしまってはDX推進という大きな目標を達成することは到底不可能です。

たいていの問題点には解決方法が存在するので、決して諦めることなく問題点をクリアしDX推進を成し遂げましょう。

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